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生産者の取組み

成功する農業後継「農作物のブランド化を目指す」

農作物のブランド化を目指し
1本5000円のレンコン生産へ

レンコン『あじよし』を栽培する國雄さんの農業を手伝いながら、大学で研究を続けていた憲一さんに、一つのきっかけが訪れる。

それは、今から6年前、現代民俗学会の研究会の懇親会に出た折、当時の九州女子大学教授であった牛島史彦先生に「野口君、中国に1本1万円でレンコンを売ってきなさい」と激励されたことであった。

当時、レンコンは農協の規格での取引が主流。そんなときに掛けられた「1本1万円で売ってみたら」という言葉に、憲一さんは着想を得た。

もともと農作物のブランド化が必要である、と父の仕事を手伝いながら考えていた憲一さんは、自社レンコンのブランド化にチャレンジしてみることにした。流石に1本1万円のレンコン販売は厳しいと考え、1本5000円でレンコンを販売することに決めた。

まずは、商品パッケージ、チラシなどを刷新。様々な経費が掛かるので、母から数百万円投資をしてもらい、1つ1つ具体的な企画を練っていった。「野口農園自体を、なんとかブランド化したい」。その想いが、憲一さんの背中を押し続けた。

新たな企画商品の値付けでは、これまでの1.5~2倍の価格とした。そして特にこだわったのが、キャッチコピーである。いくら『あじよし』が美味しいからといって、食べたことがない人に、品種だけで魅力を伝えることは難しい。

そこで、実家の歴史である「大正15年からレンコン栽培」という伝統を前面に出し、販売を開始した。このとき展開した商品が、1本5000円の化粧箱に入れたギフト用最高級レンコンと、贈答用にも堪え得るデザイン箱での業務用レンコン4種(2/4kg、夏・冬用)である。

地道な展示会での拡販が
顧客の獲得へ

大学での勤務や研究の傍ら、商品企画を実施し、展示会に参加して来場者にアピールするも、最初の3年間、1本5000円のレンコンは中々売れなかった。

しかし4年目、東京のアグリフードEXPOに出展していたとき、兵庫県のあるスーパーの担当者が取引を依頼してきた。その内容は「普段お付き合いしている産地が不作で、年末にスーパーの店頭にレンコンが足りないかもしれない。青果担当としては大変なことになる。何とかレンコンを売ってほしい」というものだった。

憲一さんは、これこそチャンスだと考え、出荷を進めようとしたが、父・國雄さんは、これまでの取引先とはまったく違う販売先に出荷する不安から、反対していた。

國雄さんは「初めての取引先なので、希少品種のレンコンではなく、普通のレンコンを売ればよい」という意見だったが、憲一さんの考えは違っていた。「せっかく新しいスーパーと直接の取引ができるのだから、野口農園のレンコンの品質をアピールし、一番良い品質の物を届けるべきだ」。

父と息子で散々議論した後、憲一さんが押し切る形で、兵庫県のスーパーに最高品質のレンコンを出荷することになった。そしてこの取引は、食品スーパーへの直接取引だけではなく、大手総合食品商社との取引口座を開くきっかけになったのである。

一般農家が一軒で、大手総合食品商社と口座を開くことは至難の業であり、取引を開始することは非常に難しい。このときは、兵庫のスーパーの担当者の必死の想いが、流通大手の担当者を動かし、野口農園と大手総合食品商社との口座開設へと繋がった。 そして、このことが、野口農園が将来花開く契機となっていく……。

野口農園にて夏に収穫されるレンコン

 

※後編は次回配信をお待ち下さい。

話を聞いた人

野口農園MD&採用担当取締役 茨城県かすみがうら市生まれ 36歳
野口憲一(のぐちけんいち)さん

野口農園代表者 茨城県かすみがうら市生まれ 67歳
野口國雄(のぐちくにお)さん

取材

「親子農業」研究員 ㈱ビジネス・ブレークスルー所属

乾祐哉

監修

親子農業指導教官 ㈱みやじ豚代表取締役

宮治勇輔

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