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動画配信が現状を変える糸口に! 和歌山県4Hクラブ会長が語る地域活性化への挑戦

今回スポットを当てる「和歌山県4Hクラブ」の会長・山本秀平さんは、動画で農業や地域の魅力を発信している。また昨年8月には、弟の将志郎さんとともに梅の加工・販売を手がける企業を立ち上げた。クラブの活動内容に加え、ご自身の活動について紹介していただいた。

メイン画像:「みなべ梅郷クラブ」、「和歌山県4Hクラブ」の会長・山本秀平さん

無気力状態から一転、
精力的に活動を展開

和歌山県日高郡みなべ町。梅栽培に適した赤土に恵まれており、“高級梅干し”として知られる「紀州南高梅」がいたるところで作られている。山本さんが農場主をつとめる「紀州馬吉農園」は、みなべ町で130年以上続く老舗の梅農家で、現在はおもに「紀州南高梅」の栽培を手がけている。
 
石川県内にある大学を卒業後、「組織に所属するよりも、自分の力で稼いでみたい」という思いから、祖父が営む梅農家(現:「紀州馬吉農園」)で就農した山本さん。さっそく祖父の指導のもと梅栽培をはじめたが、3年ほど経過する頃には、農業へのやる気をすっかり失ってしまったと話す。
 
「消費者と接する機会がまったくなかったのが、やる気を失う大きな原因だったと思います。自分が作った梅が、誰がどんなふうに食べているか分からないと、だんだんとモチベーションが下がってくるんですよね。また、現在は甘い梅干しが好まれますが、甘い味つけをすると、高品質な梅も平均的な味になりがちです。“結局、頑張っても結果は同じじゃないか”と思ってしまったんですよね」。

知り合いの町会議員と友人とともに、圃場で飼育している合鴨のお世話

 
そんな時に助けとなったのが、弟の将志郎さんの存在だ。意気消沈している山本さんの姿をみかねた将志郎さんが、甘味料に頼らない無添加の梅干しづくりを秀平さんに提案したという。その後、2人でこだわりの梅干しを作り上げ、マルシェなどでの販売を開始。やがて、梅干しへの感想が直接届くようになったと話す。
 
「純粋にうれしくて、これを境に農業に向き合う姿勢が変わりました」と、山本さん。
 
また、将志郎さんがクラウドファンディングで、梅干し販売をとおし生産者と消費者を結ぶプロジェクトを成功させたのをきっかけに、山本さんは仲間と動画作成をスタート。現在、「梅ボーイズ」というユニット名で、プロジェクト活動の様子、地域と農業の魅力などを発信している。
 
さらには2019年8月、弟の将志郎さんとともに梅の加工・販売を手がける企業「うめひかり」を立ち上げた。無添加の梅干しをはじめとする各種商品は、じわじわとファンを獲得しているという。

収穫した大量の梅をリフトで運ぶ山本さん



動画配信を
現状を変えるきっかけに

就農後およそ3年が経った頃、地元の友人に誘われ、「みなべ梅郷クラブ」と「和歌山県4Hクラブ」に入会したという山本さん。入会後、メンバーと交流するにつれ、自身の農法が時代遅れなことに気がついたと話す。
 
「例えば、木の剪定方法ひとつとっても、クラブ内で共有されている方法と全く違っていましたね。毎年5月頃、あえて枝が伸びないように剪定することで、より良い梅がたくさん実ると知りました。祖父に教わった方法だけを実践していたら、梅の品質を上げられなかったかもしれません」。
 
また、メンバーに情報源を聞いたところ、みなべ町にある果樹試験場「うめ研究所」から得た実験結果だったことがわかったという。個人では得がたい情報が共有される点も、4Hクラブに所属するメリットなのだ。
 
しかし、クラブのメンバー、地域の若手農業者ともに、人員が減り続けているのが現状だ。こうした現状を前に、山本さんは密かに夢を抱いている。
 
「今やYouTubeも、効果的なアピール手段のひとつです。すでに地域の人からは、『いつも梅ボーイズのYouTube見てるよ』と声をかけられるなど、注目されています。全国の人にも地域や農業の魅力が伝わるよう、動画配信により力を入れていきたいですね」。

PROFILE

山本秀平さん

1991年和歌山県生まれ。石川県内の大学を卒業後、2013年に新規就農。2016年より「みなべ梅郷クラブ」と「和歌山県4Hクラブ」に所属。「紀州馬吉農園」の5代目農場主で、「うめひかり」の取締役。

DATA

4Hクラブ(農業青年クラブ)


Text:Yoshiko Ogata



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