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ソーラーシェアリング 農業×太陽光のすすめ

農業と太陽光発電を組み合わせた「ソーラーシェアリング」という、新たな太陽光発電事業が静かな広がりを見せている。太陽の恵みが日本の食とエネルギーを同時に作り、持続可能な農業につながる。

日射量を抑える意味と
作物に与える好影響

私が提唱した「ソーラーシェアリング」が、営農型発電+日照の良いあらゆる土地の立体的な利用方法として、農家の間や庭などで広がりつつあります。その背景には、農業収入だけでは営農の継続が難しいという現状があります。ではなぜ、そうなったのでしょうか。

江戸時代、農家は農作物だけでなく菜種や薪などのエネルギー原料も扱っていました。それが戦後、農地法により農家は農作物だけに限定され鉄工業重視の社会になりました。

そういう時代背景から、農家の収入は徐々に減っていき、後継者不足の問題も深刻化してきました。「ソーラーシェアリング」を導入すれば、月々売電収入が加わるため、こうした問題の解決につながりやすくなります。

パネルの影ができるため
農作物がきちんと育つのか

パネルの影で農作物がきちんと育つのか心配だという農家の方も多いと思います。私は、2010年から、千葉県市原市でソーラーシェアリングの実証実験をしてきました。藤棚のように太陽光パネルを設置し、影が作物の生育に及ぼす影響を調べました。

その結果、約2万ルクス程度(曇り時屋外の明るさ)の照度ならほとんどの作物は十分に成育し、光飽和点がないとされるトウモロコシでも、光を100%受ける場所より1/3程度遮光される場所の方が生育状況は良いという結果も出ました。

多くの食物には一定の強さ以上の太陽光を与えても、光合成量の増大にはほとんど貢献しない「光飽和点」という特性があります。太陽光というのは、強すぎると「生物を殺す光」にさえなります。

植物が行う光合成は、水を水素と酸素に分ける明反応といわれる第1段階と、暗反応というわれる得られた水素と空中の二酸化炭素からデンプンを生成する第2の段階があります。葉の温度が上がりすぎると生体を維持するために水分をすべて自身の冷却に使ってしまうため、デンプン作成材料の水素ができず、成果としてのデンプン量が減ることにつながり成長を阻害します。

新たな形態を開発
現行制度の改革で普及へ

2014年春、「スマートターン」と名づけた新たなソーラーシェアリングの形態を発案し、2014年の秋から設計を始めて市民エネルギーちば合同会社や福島のKTSE合同会社の開発協力を得て、今年4月にいすみ市藤江農園でスマートターンの最初の実用実験が開始されました。

太陽光パネルは南向き設置が常識でしたが、このシステムは太陽の方向に約30分先行して1時間待機した後、再び先行待機するよう間欠的にパネルの向きを回転させます。この間欠駆動を8時半から15時半まで行うことで発電量と発電効率のアップが目指せます。また、強風や雪などの対策にもすぐれており、作物ごとに日照時間を調整できるため、天候不順時の作柄の維持と装置の天災に対する持久力の向上が図れます。

ソーラーシェアリングを進めていけば、農業収入と売電収入で農業を持続可能なものにできます。しかし、現行の制度では、農業と発電を容易に両立できない入口の狭さがあります。「ソーラーシェアリング」を普及させて農業後継者問題の解決と、より早く再生エネルギーの普及を促進するためには、さらなる制度改革がなされることを期待しています。

 


文/大根田康介

※『SOLAR JOURNAL』vol.15 より転載

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