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成功する農業! 有機肥料と化成肥料の基本とやり方を徹底解説

有機肥料の必要性

化成肥料と有機肥料の大きな違いは、「土壌改良効果」の有無である。施用された有機肥料は微生物によって分解され、その際に出す分泌物の効果で土壌中に団粒構造が形成される。結果、保水性や透水性が良くなる。つまり、ふかふかで良い土になるのだ。

実際に栽培を行っていると、有機肥料をあまり施用していない畑では根が弱ったり、病気になる割合が多い。そのため、有機肥料による土壌改良は、栽培を行う上で欠かせないものである。



有機肥料の分類

有機肥料には様々な種類があるが、どのように選べばいいのだろうか? 有機肥料の性質は炭素率(C/N比)を調べることで見当をつけられる。炭素率とは有機物中に窒素(N)の何倍の炭素(C)が含まれているかを表す数値で、低ければ(10以下)肥料としての効果は高いが土壌改良効果は低く、高ければ肥効は期待できないが土壌改良効果は高い。ちなみに、油かすや乾燥鶏糞は6~8で、牛糞堆肥は15~20である。
 

有機肥料と微生物

有機肥料を施用する際は注意すべき現象が2つある。「窒素飢餓」と「ガス障害」だ。窒素飢餓とは炭素率の高い(20以上)有機肥料を施用した場合に起き、微生物が有機物を分解する際に土壌中の窒素を体内に取り込んでしまい、作物が窒素を吸収できず育たなくなってしまう現象である。一方ガス障害は炭素率の低い有機肥料でも生じる問題で、分解されやすい有機物が急激に微生物によって分解されることで、二酸化炭素やアンモニアガスが生じ、生育を阻害してしまう現象だ。



一見厄介な問題に思われるかもしれないが、解決策は簡単である。ただ「待つ」だけだ。どのくらい待てばよいかというと、有機肥料の施用量にもよるが長くても1ヶ月程である。1ヶ月は長すぎると感じるならば完熟堆肥を使う手もある。完熟堆肥とは、分解されやすい有機物がほとんど微生物によってすでに分解された堆肥である。この堆肥は分解されにくい有機物だけが残っており、土壌中で急激に分解されることがないため問題が生じにくい。その代わり、堆肥化の過程で窒素がアンモニアガスとして排出されているため、窒素の供給源としては期待できない。
 

有機肥料と化成肥料の使い分け

化成肥料の利点も簡単に説明する。それは「即効性」と「高い肥料成分の割合」だ。肥料を与えたいときに与えられ、有機肥料に比べ少量の施用で済む。さらに肥効が長期間持続するタイプもありとても利便性が高い。

次は費用面に関してだが、有機肥料と化成肥料で等量の肥料成分を施用したとすると、有機肥料の中でも家畜糞堆肥であれば化成肥料より安い。しかし、家畜糞堆肥は窒素の割合がリン酸、カリに比べ低いため、単独では使いづらい。

これまでの有機肥料と化成肥料の特徴を加味すると、有機肥料(家畜糞堆肥)をリン酸とカリの供給源と土壌改良材として、化成肥料を窒素の供給源として使用することが妥当だろう。また、有機肥料は元肥と相性が良く、化成肥料は追肥に適している。



注意点として、有機肥料はゆっくりと分解しながら効くため、連用する場合は土壌診断をして成分のバランスを考えた施用を行うことだ。特に家畜糞堆肥の場合、リン酸、カリが過剰になる可能性が高い。また、有機肥料は微生物の活動により肥効が左右されるため、低温時は肥料効果も低くなることも考慮する必要がある。

最後に、個性が強い有機肥料であるが、うまく利用できれば病気の抑制や土壌物理性改善に効果的で利点も多い。有機肥料、化成肥料の長所を上手に発揮させ、収量増加を目指そう。


 

PROFILE

豊田 潤

青森県出身。2010年、弘前大学農学生命科学部応用生命工学科卒業。建設コンサルティング業、養豚業などの経験を経て、循環型社会の取り組みに関心を持ちアルファイノベーション(株)へ入社。約5反の農地で一から栽培を始め、現在は青ネギ生産リーダーとして栽培管理や現場スタッフの育成を行いながら全体の採算管理および企業の新規農業参入コンサルティングを行っている。
 

DATA

アルファイノベーション(株)

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