青果物流通のロス削減を研究 農研機構の渡邊高志氏に学術研究奨励賞
2025/07/04

秋田県横手市の一般財団法人山下太郎顕彰育英会は6月15日、今年度の授与式を行い、青果物流通のロス削減に取り組む農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)研究員の渡邊高志氏(34歳)が学術研究奨励賞を受賞した。
メイン画像:学術研究奨励賞を受賞した渡邊高志氏(写真提供 山下太郎顕彰育英会)
山下太郎顕彰育英会
2個人・2団体を表彰
山下太郎顕彰育英会は、秋田県横手市大森町出身の実業家で海外油田開発の先駆者、山下太郎氏(1889~1967)の遺志を継いだ妻の文子さん(故人)が提供した10億円をもとに、1989年に設立された。
学術研究奨励賞は、秋田県出身または秋田県内の研究機関に所属する若手研究者を対象として、独創的で優れた研究業績を上げ、今後の活躍が期待される方に贈られている。地域文化奨励賞は地域に密着した研究や活動を継続的に行い、地域文化向上に貢献された個人や団体に贈られる。今年度は、2個人が学術研究奨励賞を、2団体が地域文化奨励賞を受賞した。
適切な温度や包装条件を設定
国内輸送や輸出時のロスを削減
受賞後に登壇した渡邊高志氏(写真提供 山下太郎顕彰育英会)
学術研究奨励賞を受賞した農研機構研究員の渡邊氏は、秋田県由利本荘市出身。食品物理学や生体電気化学など複数の分野の知識や技能を生かして、青果物が流通する際の適切な温度や包装条件を設定し、国内輸送や輸出時のロス削減に取り組んでいる。渡邊氏は、青果物が流通過程で商品価値を失い、廃棄される割合が無視できないというフードロス問題に対して、学術分野横断型研究を行い、青果物の品質評価技術を確立するとともに、高品質に保つ長期流通技術の開発・実証を試み、多くの成果を得ている。
渡邊氏は2022年度に選考委員特別賞を受賞したが、今回はさらに進展した研究業績が認められた。とくに近年得た、青果物に関わる低温障害発生メカニズムに関する食品物理学的知見が高く評価された。これまでの成果をもとに、今後、流通技術の進展を通して、国内はじめアジア地域を含めた国際的連携によって、実際の青果物ロス削減に寄与することが期待されている。
山下太郎顕彰育英会の山下和男理事長は授与式で、「学術研究奨励賞の2人には若手研究者のリーダーとなることを期待しています。地域文化奨励賞の2団体には今後も地域に密着した社会貢献に取り組んでくれることを期待します」と受賞者を称えた。
DATA
取材・文/高橋健一
7月24日(木)に開催する「第3回次世代農業セミナー」では、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構研究員の渡邊高志氏が「国内輸送や輸出時のロス削減に向けての青果物流通の課題解決」について講演します。
いま、日本の農業は資材高騰や相次ぐ異常気象、高齢化と人手不足など、多くの課題を抱えています。本セミナーでは、各界の有識者や専門家にご登壇いただき、日本の農業のあるべき姿を考えます。