北朝鮮は農業のポテンシャルが高い! 将来は外国人労働者の中心に?
2018/09/05
北朝鮮の土地柄や気候・国民性は、農業に非常に向いているという。日本においては農作業を外国人労働者に頼る傾向が強まっているが、いずれは北朝鮮の人々がその役割を担ってくれる日が来るかもしれない。
農業のポテンシャルが
大きい北朝鮮
中国人の某有力者の仲介で、私は北朝鮮を旅行したことがある。中国遼寧省の丹東から鴨緑江を越えて北朝鮮の新義州に渡り、韓国との国境である板門店まで、一週間かけて北朝鮮の西海岸を往復した。監視員が常時同伴だったが、比較的自由に行動できた。
いまは農業生産が不振で食料不足に悩む北朝鮮だが、その農業のポテンシャルは大きい。
冷涼な気候は野菜作りに好適だし、農地が農薬に汚染されていない。軍事訓練などを通じて心身が鍛えられているので農業者が野良仕事に強いし、自然とどう向き合うかを体得している。家畜などの扱いに慣れているから堆肥を作っての有機農業にも適う。
いまの北朝鮮は、統制経済のため、よいものをたくさん作って儲けるという動機が農業者に働かない。
また、コメ生産に固執しすぎだ。韓国・中国・日本の富裕な消費者に向けて良質な野菜を作り、穀物は国際市場から安価で購入すれば、農業生産も食料事情も、一気に改善するだろう。
北朝鮮の人々が
日本の農業を支える日が来る?
北朝鮮が日本への農業労働者の供給源になる日が来るかもしれない。日本では農作業を外国人労働者に頼る傾向が強まっている。これまで、技能実習の名目でアジアの隣国から農業労働者を雇い入れてきた。
もともとは中国や韓国からの農業者が多かったが、両国の賃金水準が向上しており、わざわざ日本に働きに来なくなった。
いまのところはベトナムやフィリピンからの農業労働者を増やすことで対処しているが、これらの国々も着実に経済成長を遂げ、国内賃金もじりじりと上がっている。
いずれ、もっと低所得の国へと、農業労働者の調達先を変えざるをえなくなる。そのときに、極端に経済成長が遅れてきた北朝鮮が有望になる。
かつて、ミャンマーも軍事独裁で厳しい統制経済をしいていて、北朝鮮と似ていた。ここ10年でミャンマーの民主化と経済開放が進み、日本からの投資が活性化し、技能実習生として来日するミャンマー人も増えている。北朝鮮で似たような展開があっても不思議でない。
DATA
明治学院大学
経済学部経済学科教授
神門善久さん
1962年島根県松江市生まれ。滋賀県立短期大学助手などを経て2006年より明治学院大学教授。著書に『日本農業への正しい絶望法』(新潮社、2012年)など。
AGRI JOURNAL vol.08(2018年夏号)より転載