注目キーワード

生産者の取組み

最強の次世代水稲栽培へ! ドローン×バイオスティミュラント×水稲栽培の夢コラボが実現!

新しい農業資材であるバイオスティミュラント(BS)には、どれ程の効果があるのだろうか? 水稲に対するBS製品の効果を知るのに最適な、夢のようなプロジェクトをレポートしよう。

最強の次世代水稲栽培へ

今、脚光を浴びている『バイオスティミュラント(BS)』は、農薬でも肥料でもない、新しい農業資材だ。植物に対する非生物的ストレスを制御することで、気候や土壌のコンディションに起因するダメージを軽減し、植物を健全に育てるための新しい技術である。
 
BS製品は既に市販されているが、その認知度はあまり高くない。「本当に効果があるの?」と疑問視する人も少なくない。そんな方に知っていただきたい、BS製品が主役のプロジェクトが千葉県東金市で進められていた。それが農業生産法人土屋ライスファームの圃場にて3種ものBS製品を散布してNDVI(正規化植生指標)計測・比較を行うおそらく世界初の実証実験である。30歳の若さで土屋ライスファームの農場長を務める南雲さんが説明してくれた。
 
「当社は農業生産法人として、それなりの規模を管理しているのですが、年々、前年並みに作ることが難しくなっています。これは、気候が変わってきている影響だと推測しています。例えば2018年は記録的な猛暑が続きましたよね? 夜になっても気温が下がらず、8月上旬からお盆にかけても30℃を越える日が続きました。そのため乳白粒に悩まされました。2019年は長期にわたって曇天が続き、ゲリラ豪雨や台風に見舞われました。こうした激しい気候変動の結果、元から成績が悪かった圃場での生産が極めて難しくなっていました。
 
対策として元肥を入れるなど試行錯誤していたのですが、ちょうどその頃、地元の岩渕種苗店さんがBS製品メーカー各社とのプロジェクトをまとめてくださったので喜んで協力した、というのがプロジェクト開始の背景です。BS製品の良いところは、何と言っても『後出し』が可能な点にあります。その年の天候は事前には分かりませんが、即効性のあるBS製品なら『危ない』と思ってから散布して対策できる。その結果、異常気象の中にもかかわらず、散布した圃場は他と比べてくず米の割合が減り、収量が増えました」。
 
実証実験は2016年に開始され、2018年には光合成測定器を導入。そして2019年からはドローン販売代理店のKMTが新たに参画したことで、ドローン空撮によるNDVI画像で生育状況を判断できるようになった。「水稲の生育ステージごとに散布後NDVI計測することで、どのBS製品がどのステージで効果があるのか、が分かってきています。こうしたノウハウを積み上げることで、どんな気象状況であっても、しっかりと収量と品質を確保できるようにしたいですね」(南雲さん)。
 
実証の結果は上々なことに加え、ドローンを使うことで高濃度のBS製品を散布できる手軽さから、試験範囲を広げる検討中だという。BS製品メーカーとドローン販売代理店のコラボレーションにより実現した次世代水稲栽培。そのノウハウは今後、各社の製品にだけでなく生産者に提供される情報にも活かされるはずだ。
 

PROJECT MEMBER

FARMER

土屋ライスファーム


水稲を中心に畑作も行っている土屋ライスファームは約80haを管理する農業生産法人。農場長を務める南雲智博さんは東京農業大学を卒業後同社に就職。3名の社員と共に、近隣にある千葉県立農業大学校の学生さんが季節に応じてアルバイトとして働く。「入社当初は農業を営む実家を継ぐことも考えていたましたが、今はこの会社で頑張ることで東金の農業を盛り上げたいです」とはにかみながら語ってくれた。彼女募集中である。
 
問い合わせ/〒283-0805 千葉県東金市松之郷1824 TEL:0120-810-561


BS

愛知製鋼「鉄力あくあ® F10」



植物に吸収されやすい二価鉄を豊富に含んでおり、光合成を活発にしてくれるのが『鉄力あくあ』。低温期・高温期・日照不足時の樹勢維持、成り疲れの改善に効果がある。
<肥料成分>鉄:1.5%、マグネシウム:0.3%、カルシウム:0.3%
 
問い合わせ/TEL:0120-603-937


BS

誠和アグリカルチャ「ペンタキープ Hyper5000」



植物の光合成を高める“5-アミノレブリン酸(5-ALA)”を世界で初めて配合。適量与えることで葉緑素が増えて光合成能力が高まり、植物自身が持つ力を引き出すように作用する。
<肥料成分>窒素:8.0%、水溶性りん酸:6.0%、水溶性カリウム:4.0%、水溶性マグネシウム:4.0%、水溶性マンガン:0.11%、水溶性ほう素:0.170%
 
問い合わせ/TEL:0285-50-2030


BS

サカタのタネ「サカタ液肥GB」


 

 
植物細胞内に留まり浸透圧を上げ、根から水分や養分の吸収を促進させることで、各種ストレス耐性を向上させる。生育初期の施用で根量を増加させ根の活着を良くする働きも。
<肥料成分> 窒素:1.5%、カリウム:3.5%
 
問い合わせ/TEL:045-949-8145


DRONE

KMT「Parrot BLUEGRASS FIELDS」



高性能マルチスペクトルカメラを本体に内蔵したコンパクトサイズのドローンと、撮影した画像を解析する専用ソフトがセットになったParrot BLUEGRASS FIELDSを販売する。リースのプランも提案可能。
 
問い合わせ/TEL:03-6257-1197
 

精密農業用PCソフト「Pix4Dfields」の解析データで判明
BS製品の驚異的な効果が明らかに!


2019年の実証実験では、機能性液肥2剤(ペンタキープHyper5000、サカタ液肥GB)と代謝向上剤(鉄力あくあ F10)を通常よりも高濃度で組み合わせて、生育ステージ(田植え後、生育期、幼穂分化期)の3回ドローンにて散布後、KMTのNDVIカメラ搭載ドローンで撮影・解析を行った。
 
対照区(散布なし)と、BS製品散布区を比較すると、全体的に緑が濃く、効果が出ていることが一目で分かる。さらに、生育ステージごとにNDVI画像で効果を確認することで、BS製品の効果をより詳しく知ることができる。今後は、試験を繰り返して標準を作っていく予定だ。
 

問い合わせ

愛知製鋼
TEL:0120-603-937


photo: Natsuki Matsuo(Ohkawa Naoto Photography inc.) 
text: Reijiro Kawashima

AGRI JOURNAL vol.14(2020年冬号)より転載

Sponsored by 愛知製鋼

関連記事

農業機械&ソリューションLIST

アクセスランキング

  1. トマトの試験で収穫数、収益がアップ! 海藻由来のバイオスティミュラントの効果は?...
  2. 名物お漬物が消える日 改正食品衛生法の経過措置が5月末で終了
  3. 軽トラカスタムの新潮流!親しみやすさが人気の『レトロカスタム』
  4. ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは? メリットを専門家が解説
  5. 今買えるEV軽トラから特定小型まで! 農業で活躍するモビリティを一挙公開!...
  6. 1分で分かる!JAを揺るがす独占禁止法の問題点
  7. 【植物工場ビジネスの最新動向と課題】現状は赤字が約半数。エネルギー削減の取り組み進む...
  8. 耕作放棄地を有効活用! エネルギー作物「エリアンサス」を核に脱炭素化に挑む...
  9. 低コストで高耐久! 屋根の上で発電もできる「鉄骨ポリカハウス」
  10. JAが「農業協同組合」であり続けるために 経営危機を乗り越えるためにすべきことは?...

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.33|¥0
2024/10/09発行

お詫びと訂正