有機栽培の強い味方! 温室効果ガス排出0のぶどう園向け除草ロボで環境に優しい栽培を
2021/06/14
有機栽培されたぶどうから醸造したオーガニックワインが今、若い世代に人気だ。化学肥料や農薬、除草剤を使用せず、環境にやさしい農法で栽培するには? 今回は、世界初のぶどう園向け除草ロボットを紹介しよう。
2017年に誕生した
「ぶどう園向け除草ロボット」
フランス南西部トゥールーズを拠点とするスタートアップ企業のナイオテクノロジーズは、2017年秋、世界初のぶどう園向け除草ロボット「テッド」を実用化した。
©Naïo Technologies
3000ヘクタール以上のぶどう園を所有するレ・グラン・シェ・ド・フランス(GFC)や南西部ボルドーの著名な生産者ベルナール・マグレ、南部ルーシヨンでビオディナミ農法(生体力学農法)を実践するドメーヌ・カズら、フランス内外のぶどう農家から広く注目を集め、2020年1月までの2年あまりで250ヘクタール以上のぶどう園に計20台以上の「テッド」が導入されている。
また2020年秋には、耐久性を高め、エンジンパワーを向上させた新型の「テッド」がリリースされた。GPSを用いて最高時速6キロで圃場を自律走行しながら、1日最大5ヘクタールを自動で除草。さらに昼夜を問わず、バッテリーで最長10時間稼働する。長さ4メートルの大きさに対して重さは1.8トンと比較的軽量なので土壌が圧縮されづらく、また電動式のため、温室効果ガスを排出せず騒音が生じることもない。
ナイオテクノロジーの特徴は、有力なぶどう農家と提携し、定期的にフィードバックを得ながら、「テッド」の開発を進めていること。2020年6月には、正式なリリースに先立ち、南部プロヴァンスにあるレ・グラン・シェ・ド・フランス傘下のぶどう園で、新型の「テッド」が試験的に導入された。人手をかけず、より効率的に除草できたという。
化学肥料・農薬・除草剤ゼロ!
環境に配慮したオーガニックワイン
有機栽培されたぶどうから醸造したオーガニックワインは、近年、環境への意識が高く、サステナビリティ(持続可能性)に配慮した商品を求める若い世代を中心に、人気を集めている。市場調査会社のリサーチアンドマーケットによると、その市場規模は2024年までに52億3000万ドル(約5648億円:1ドル=108円で換算)に達すると予測されている。
このような消費者の嗜好の変化に伴って、化学肥料や農薬、除草剤を使用せず、環境にやさしい農法でぶどうを栽培する生産者が増えつつある。また、フランスのぶどう農家では、人手不足も慢性的な課題だ。「テッド」は、除草剤に代わり、人手をかけずに除草できる新たなソリューションとして、今後、さらにニーズが高まると見込まれる。
文:松岡由希子
AGRI JOURNAL vol.19(2021年春号)より転載