大規模稲作農家は要注目の新会社が発足!
2017/10/10
農業機械の国内大手ヤンマーと、センシングと画像処理技術に強みを持つコニカミノルタが新会社を設立した。大規模稲作農家注目の新サービスを提供するという。
日本農業が抱える固有の問題を
2社の共同により解決する
日本農業固有の問題として、農業就業人口の減少が叫ばれて久しい。さらに悪いことに、農業従事者の高齢化も着々と進行している。それに対して農地の集約化と経験の少ない農業従事者は増える傾向にある。これまでベテラン農業従事者が経験を基に耕作することで一定収量を確保していた農地を経験の浅い農業従事者が耕作する、という状態が頻発している。経験知やノウハウの継承が大きな課題になっているのだ。
一方、ヤンマーとコニカミノルタは2014年より、平成26年度農林水産省「農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」に採択されたプロジェクト「ISSA山形」に参画。稲作における「大幅な農作業の省力化・効率化」「勘と経験の科学的アプローチによる継承」の課題解決のために、共同研究を実施していた。3年間の実証実験で、一反あたりの平均収益が普及米で14.5%増、高品質米で33%増という優れた結果を得ており、その過程で両社がお互いの強みを認識しあっていた。
そうした経緯を経て、ヤンマーとコニカミノルタが農業リモートセンシングのサービス事業会社”ファームアイ”を設立した。新会社ファームアイは、ヤンマーの強みである「農業機械と豊富な営農支援メニュー」と、コニカミノルタの強みである「センシングと画像処理技術」を生かして、圃場のセンシングと画像解析サービス、農作物の生育状況の診断および処方改善提案を行う農業コンサルティング事業を展開する。
ドローンで生育状況を撮影・データ化して
肥料管理や土壌改善を提案する
当初は日本の稲作農業向けから開始されるという新サービスは、ドローンを活用して農作物の生育状況を撮影・分析・データ化することにより、農業現場での作業効率化と省力化に寄与する。
コニカミノルタは、世界中で広く使われいる同社の葉緑素計SPADを通じて磨いてきたセンシング技術に、新たに特殊カメラでの撮影画像処理技術を組み合わせた。それにより圃場全体の葉色測定に加えて、これまで把握できなかった「地力」と「植物の窒素吸収量(稲の育ち具合)」を算出が可能となった。その数値を基に、ヤンマーの技術を活かして、地力のばらつきに応じた基肥量設計や稲の育成のばらつきに応じた追肥量設計を実施する。
実証実験では、データに基づいて肥料の量を自動制御する無人ヘリによる空中からの可変施肥を世界で初めて実現した。その他にも、堆肥散布や土壌医による土質改善など、農家のニーズにあった農業コンサルティング、ソリューションを提供することが可能になる。
気になる料金であるが、現在のところ、生育状況のセンシングからデータ化・分析までが1haあたり1万2,000円を予定している。そこから先、基肥料設計や追肥量設計、土質改善などのアドバイスを含めたコンサルティングは別料金であるという。
当初は稲作農家向けサービスとして事業を開始するというが、農地・人員の急拡大による経験知不足やノウハウ不足に頭を悩ませている大規模稲作農家にとっては、ありがたいサービスになりそうだ。同社によると、将来的には他作物やアジア地域を中心とした海外へと事業範囲を拡大する予定であり、2023年度には100億円規模の売上を目指すという。注目の新サービス・新会社の登場である。