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日本の農業が危ない!? 「マネー資本主義」に潜む危険性

マネー資本主義が
行き過ぎるとどうなる?

世界の農業は、より多くのお金を稼ぐことを至上の目標に置く「マネー資本主義」に丸ごと取り込まれ、投資手段の一つに化してしまったようだ。

だがそこにも新たな落とし穴がある。大量生産品を食する側の、人間の健康だ。自然には存在しなかった遺伝子組み換え食品や、肥料や飼料の多用で無理やりに大きくされた(つまりそれ自体が不健康な)農産物は、人の腸内細菌の生態系に悪影響を与え、アレルギーなどの慢性疾患を増やしている可能性が高いと言われる。

残留農薬も、脳の発達障害など、昔は目立たなかった問題の原因だと指摘されている。成人したころから花粉症になり、中年になってからアトピーに悩まされるようになった筆者にも、多々思い当たる節がある。

健康な作物を育てることが
社会全体の健康につながる

冒頭に紹介した研究者が、「健康な生き物を育てる」ことにこだわるのはなぜか。農産品の健康は、それを食べる側の人間の健康にとっても重要だからだ。人間には本来、健康にいいものほど「おいしい」と感じる本能があるため、健康な生き物であればあるほど、食べておいしい食材にもなる。

さらには健康な生き物ほど、農薬や医薬品の投与なくともすくすくと育ち、害虫に対する抵抗力も強い。そうした基本要素を無視し、見かけを整え量を増やし価格を下げた農産物を供給していればよしとする態度を、彼は「ハリボテ農業」と呼んで批判していたのだ。

マネー資本主義に取り込まれた農業。その帰結は、農業生産の持続可能性の低下であり、不健康な人間の増加である。次回以降では、その罠から逃れる「里山資本主義的農業」の原理と実践について見て行こう。

〜続く〜

プロフィール

地域エコノミスト

藻谷浩介さん


株式会社日本総合研究所主席研究員。地域の特性を多面的に把握し、地域振興について全国で講演や面談を実施。主な著書に、『観光立国の正体』(新潮新書)、『日本の大問題』(中央公論社)『里山資本主義』(KADOKAWA)など多数。


AGRI JOURNAL vol.08(2018年夏号)より転載

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