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高温障害・乾燥から作物を守るには? 土壌の保水力・保肥力を向上する完全生分解性保水剤に注目

近年の異常気象により農作物に高温障害や乾燥による被害が発生。収量の減少や品質の低下などの被害が増えている。そこで今回は、この夏に取り組みたい高温対策・乾燥対策と、それに使える資材を紹介しよう。

<目次>
1.年々上昇する平均気温「高温障害・乾燥」で品質・収量が低下
2.土壌の団粒構造が重要 高温障害が発生しやすい土壌条件
3.現場で実践される高温・乾燥対策
4.自然由来の「EFポリマー」で土壌の保水力・保肥力アップ!
5.収量向上や根腐れ軽減 乾燥状態時に効果絶大!
6.土壌の三要素を整え、夏の高温・乾燥に備える

 

年々上昇する平均気温
「高温障害・乾燥」で品質・収量が低下

気象庁によると、2024年は1898年に平均気温の統計を開始して以来、最も高くなった。これは言うまでもなく、気候変動・地球温暖化の影響だ。温暖化で話題になるのは+1~2℃だが、これは「年平均気温」である。私達が体感している通り、毎日の変動はこんな温度変化ではない。実際、「真夏日」と言われる気温30℃を越える日は、統計を見ても近年格段に増えている。

また、温暖化とともに、雨の降り方も変わりつつある。降水量は平年と変わらないのに、ゲリラ豪雨や猛烈な台風が次々に襲来する。逆に言えば、雨が降らない日が増えているのだ。この「温暖化」と「雨の降らない日の増加」が、農業においては、乾燥の原因である。高温化で水不足に陥れば、自ずと収量と品質が低下してしまう。

これらによって引き起こされるのが高温障害である。高温が原因となり作物が何らかの障害を受けた結果、品質や収量が低下する現象のことであり、作物が耐えることができる温度を一時的にでも超えると生じる生理障害だ。

高温障害の症状は、作物により異なる。葉の焼けや枯れ、といった症状のほか、葉菜類では生育不良や結球異常、小玉化、芯ぐされなどが、果樹では果実の割れや着色不良などが起こる。今話題の米不足の発端となったのは、高温障害による米の白濁化だ。

これらは、品質・収量の低下を招き、最終的には減益の要因となる。高温障害は農業生産者の収益を悪化させる危険性がある。

干ばつと熱ストレスの影響を受けたキュウリ

土壌の団粒構造が重要
高温障害が発生しやすい土壌条件

作物が健康に育つためには、土壌の三要素(物理性・化学性・生物性)が整っていること、が大切だ。特に土壌の物理性(保水性・透水性・通気性など)は重要であるが、それに密接に関係するのが、土壌の団粒構造。小さな土壌の粒子が集まることで団子状になった構造が団粒構造であり、この団子と団子の隙間に水や空気を適度に含むことで、保水性・透水性・通気性などを保つ。

逆に言えば、団粒構造が不足した土壌は、高温障害・乾燥の被害を受けやすい。堆肥を適量投入したり、緑肥を利用する、保水材(土壌改良剤など)を利用して、土壌の団粒構造を増やす必要がある

現場で実践される高温・乾燥対策

根本原因が気候変動である高温障害を防ぐのは、容易ではないが、「高温耐性品種」の活用や、作期変更が効果的であり、品種変更よりも実施しやすく検討しやすいだろう。

また、それ以外にも高温障害・乾燥に対抗する手段は様々ある。

遮光ネット・マルチ
直射日光から作物を守ることができるのが遮光ネットとマルチ。様々な素材・遮光率を有する製品が市販されているから、ニーズに応じて利用すると良いだろう。日射を遮ることで地温の上昇を防ぎつつ、土壌水分を保持するのにも役立つ。
遮光ネットやマルチは適切に利用すれば効果的に遮光できるが、張る・撤去する、といった作業が必要となる。また、適切に利用できないと対策として不十分であったり、生育不良に陥る可能性もある。特にマルチは、多くの場合、一度使ったら廃棄することになり、ここの作業もまた重労働である。

灌漑システム
特に乾燥から作物を守る目的では、灌漑システムの利用が解決策となる。土壌の三要素が整っているのが大前提だが、灌漑システムを導入することで適宜給水できるから、乾燥による品質・収量の低下を防ぐことができる。
灌漑システムは一度導入してしまえば長く利用できるのがメリットだが、その代わり、導入にはコストがかかるため、事前に費用対効果を考えて、導入を検討すべきだ。

バイオスティミュラント
近年は、バイオスティミュラントと呼ばれる資材も高温障害・乾燥対策での利用が広がっている。一部のバイオスティミュラント製品は、作物に直接作用することで作物そのものが有する機能を発現して、高温障害・乾燥に耐性を持たせることができる。
バイオスティミュラント製品は、正しい製品を、正しい時期に、正しい方法で利用すれば、十分な効果が見込める。ところが残念なことに、日本の各地域で栽培されている様々な作物に対して、どのように施用すれば良いのか、その具体的な方法が確立されていない。

保水剤(土壌改良材など)
高温が原因となる乾燥への対策として、様々な保水剤が土壌改良材などとして市販されている。土壌の物理性、特に保水性を高める効果があるものを選べば、乾燥対策として機能する。多孔質性を有する製品では、土壌の物理性を改善できるだけでなく、同時に保肥力を高め、生物性を高める機能を有するものもある。
保水剤を利用するにあたって大きなデメリットは見当たらないが、保水剤単体で施用せねばならない場合は、施用作業が必要となる。また、保水剤は一定期間土壌に残存することから、絶対的に信頼できる製品を選びたい。

 

自然由来の「EFポリマー」で
土壌の保水力・保肥力アップ!

信頼できる保水剤として、近年普及しつつあるのが「EFポリマー」だ。「EFポリマー」はオレンジの皮などの果物の不可食部分をアップサイクルして作られた、自然由来の超吸収性ポリマー=土づくりに使える資材だ。

本資材が乾燥対策として機能する理由は、農業に最適な自重の約50倍を吸水し、保水剤としての効果を発揮するからだ。また、本資材が土壌中で分解する過程で微生物を活性化させ、ポリマーが吸水や放出を繰り返すことで、土壌に隙間ができ、団粒構造の発達を促進する。さらに保水力の向上とともに、水分に溶け出した肥料を保肥することもできる。

さらに、「EFポリマー」は作物残渣が原料であり、100%有機かつ完全生分解性だから、化学合成された石油由来の高分子ポリマーと比較して、地球環境と農業生産者にとって大切な土壌に優しい。環境に負荷を掛けることなく生産コストを下げながら収量増が期待でき、有機JAS資材リストや欧州・米国のECOCEPTにも登録されている。

本資材は使用目的や使用方法、土壌の性質などにより、粉末タイプと粒状タイプから選ぶことができる。大面積の露地栽培での使用に適しているのは粒状タイプ。粒径は3~4mm。ペレットや肥料等と混和して施用できるから便利だ。育苗等での利用には粉末タイプを選ぼう。

粉末タイプ(左)、粒状タイプ(右)

また、本資材は土壌に混ぜ込んで利用する。土壌表面に施用しても土中に浸透しないため効果を得ることができない。さらに施用する際、土が乾いていることを確認する。土が湿っていると「EFポリマー」が土と均等に混ざりにくい。

畝で実際に使用している様子

ここまでに説明したように、「EFポリマー」は土壌の保水力を高めつつ、同時に保肥力を向上させ、高温障害・乾燥対策に有効的だ。

土壌の保水力を高めてくれるため、高温・晴天が続いても、土壌水分量を一定程度維持でき、植物はその水を吸い続けることができる。これにより品質と収量を維持できることで、結果として収益の低下を防ぐことができる。

土中での動き

また、近年の肥料費が高止まりしている状況を鑑みると、保肥量を高める機能も見逃せない。肥料が有効活用されるから、過剰施肥による無駄を省くことでコスト削減にも期待できる。

収量向上や根腐れの軽減
乾燥状態時に効果絶大!

2022年6月~10月、茨城県のキャベツ生産者が、キャベツ育苗時の乾燥耐性について「EFポリマー」の効果を知るべく、実証を行った。

培土にEFポリマーを、混ぜない(0%)、1%混合(EFP1%)、2%混合(EFP2%)、の3パターン用意して、この3つの培土に植えた苗を、通常潅水区と潅水低減区(約50%潅水を制限)で育てて、秋の収量を比較した。

「通常灌水区であっても、EFP1%混合した培土で育てた苗は、収穫時の平均重量が22%増加していました。さらに灌水低減区では、収穫時の平均重量が32%増加していました。」

特に水ストレス=乾燥状態になると、EFポリマーの施用効果が大きく出てくることが分かる。

キャベツの苗比較(右:施用後)

また2024年3月~7月には、沖縄県本部町のゴールドバレル(パイナップル)」生産者が「EFポリマー」を導入した。

「初期生育に大きな差が出ましたね。例年、梅雨時期には根腐れに悩まされるのですが、その発生が半分以下に減少しました」

と語ってくれた。いずれも「EFポリマー」が土壌の物理性を改善した結果であり、その効果が収量増に直結していることが分かる。


土壌の三要素を整え
夏の高温・乾燥に備える

先進機器を活用したスマート農業が注目を集める昨今だが、「良い土」が良い結果を生む、という農業生産の基本を忘れてはならない。土壌の三要素が整った圃場で生産すれば、作物は高温や乾燥にも耐え、しっかりと収穫できるのだ。

今回ご紹介した「EFポリマー」は、土壌の三要素のうちの物理性と生物性を整える役割を果たしてくれる。土壌の保肥力が高まるから、肥料費削減にも有効。

さらに、肥料と混和して施用できるから、施用にあたる手間が増えることがない。また、有機JAS(資材リスト)認定を取得している100%有機かつ生分解性だから、安心して施用できる。

高温障害・乾燥が心配、という方は是非この夏、EFポリマーを試して欲しい。きっとその効果を体感できるはずだ。

問い合わせ

EF Polymer株式会社


文/川島礼二郎

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