電源不要の潅水装置や高温対策資材まで新製品が勢揃い! AGRI EXPO新潟で見つけた注目製品5選

2026年2月25日から27日の3日間、新潟県新潟市の朱鷺メッセで「AGRI EXPO新潟2026」が開催された。電源不要の潅水装置や夏場の高温障害に対応するバイオスティミュラントなど、生産現場の課題解決に直結する注目の製品・サービスを紹介する。

<目次>
1.重力で均等かん水を実現する「かん水ドリップキット」
2.地域の廃棄物を資源化循環型堆肥「アサギリMIX」
3.電源不要のアイデア商品軽トラ専用コンテナボックス「箱明アグリ」
4.窒素不足の課題に立ち向かうBS資材の「N-Catch(エヌキャッチ)」
5.初期投資ゼロ円で農業設備を導入「ネクシーズZERO」

 

重力で均等かん水を実現する
「かん水ドリップキット」


サンホープ「重力・落差かん水ドリップキット(仮名)」

夏場の猛暑や水不足が年々深刻化するなか、サンホープは電源もポンプも不要で均等にかん水できる製品をこの春に発売する。「重力・落差かん水ドリップキット(仮名)」は、地上約1.5mに置いたタンクの水を、重力だけでドリップチューブに送る仕組みだ。水源や電源がない中山間地などの圃場でも、タンクに水を運びさえすれば均等にかん水できる。


水圧水流を調整する「エミッター」

高い性能を支えるのが、チューブ内部の「エミッター」だ。ラビリンスと呼ばれるギザギザ構造が水圧水流を調整し、フィルター機能もある。これにより、チューブ手前から奥まで均等に水を出すことができる。水と同時に肥料も供給できるため、節水・節肥の効果も高いという。


「重力・落差かん水ドリップキット(仮名)」のかん水イメージ図

「重力・落差かん水ドリップキット(仮名)」は、ドリップチューブ30㎡キットとチューブ&ペグ60鉢キットの2種類で、パイプやフィルター、バルブなど必要なものがすべて同梱されている。タンクさえ用意すれば、すぐに使い始められる。

対象作物は野菜から果樹まで幅広い。果樹では、ミカンの糖度を高めるマルドリ方式のようにドリップチューブで水分を制御する手法も広がっており、このキットの活用が期待される。夏場の渇水時の備えとしても、手元に一つ置いておきたい製品だ。


講演するサンホープ代表取締役 益満ひろみ氏

AGRI EXPO新潟の初日には、サンホープ代表取締役の益満ひろみ氏が「最新ドリップファーティゲーションのひみつ」というテーマで講演した。水量の計算方法や圃場の土壌特性による違い、水質管理の注意点など、かん水システム導入に必要な知識を深く掘り下げて解説した。参加した農業者からは「かん水の重要なポイントを理解することができた」「土壌特性による違いなどについて、たいへん勉強になった」などの声が聞かれた。

DATA

株式会社サンホープ

地域の廃棄物を資源化
循環型堆肥「アサギリMIX」


アサギリの「アサギリMIX」

静岡県富士宮市・朝霧高原を拠点とするアサギリは、地域の廃棄物を肥料に転換する循環型ビジネスを20年以上続けてきた。主力製品「アサギリMIX」は、牛ふん50%に下水汚泥・食品残渣などを配合した堆肥だ。

アサギリ生産管理課課長の岩田宏樹氏は「地域の酪農家から牛ふんを受け入れ、県内外の下水汚泥や食品残渣も引き受けて肥料化しています。食品工場と取り引きがある農業者に、その工場から出た食品残渣を肥料化して届ける循環型農業のお手伝いをしています」と胸を張る。


アサギリ生産管理課課長 岩田宏樹氏

この取り組みの背景には、地域の課題がある。2013年に富士山が世界文化遺産に登録された際に、牛ふんの野積みによる地下水汚染が問題となった。さらに新型コロナ禍のキャンプブームで観光客が急増するなか、景観や悪臭への懸念も広がった。そうしたなか、地域の廃棄物を適正に処理しながら資源化するアサギリの役割は、社会的にも大きい。

アサギリの肥料は、野菜・果樹・草花を問わずあらゆる作物に使える汎用性が強みで、土づくりをベースとした使い方を推奨している。長年使い続けた農業者からは「安定した収量を確保できた」という声も届く。「ゴミを資源に変える」。シンプルながら力強いこの言葉は、同社の長年の実践に裏付けられている。

DATA

株式会社アサギリ

電源不要のアイデア商品
軽トラ専用コンテナボックス「箱明アグリ」


箱明の軽トラ専用コンテナボックス「箱明アグリ(HACOAS AGRI)」

収穫直後の農作物は、輸送中の温度上昇で劣化する。幌付き軽トラックの荷台内部は真夏に70〜80度に達することもあるが、冷蔵車は導入コストが高い。そこに電気を使わない新たな選択肢として登場したのが、軽トラ専用コンテナボックス「箱明アグリ(HACOAS AGRI)」だ。

驚くのは、開発者が農業機械メーカーではなく、創業100年を目前に控える国内の鋳物メーカーだという点だ。群馬県高崎市の東京鋳造所代表取締役 小澤淳氏は、カブを栽培する弟の悩みを聞いて、製品開発を思いついたという。軽トラ専用コンテナボックス「箱明アグリ(HACOAS AGRI)」は、静岡県清水町の木村鋳造所と共同で開発した。

独自開発のポリウレアロールを使い、高い断熱性と耐久性を兼ね備えているのが特長だ。発泡スチロールを成型して幾つかの素材を組み合わせることで、真夏の炎天下でも庫内温度を長時間安定させることができるという。2000年以降販売された標準サイズの軽トラックであれば搭載でき、車両の買い替え時も使い回せる。ガルウイング式の両扉で搬入しやすく、プラスチックケースを最大40個まで積載可能。上位機種には太陽光を利用した庫内管理機器も装備するなど、現場の使いやすさを徹底的に追求した設計だ。


東京鋳造所代表取締役・兼 箱明代表取締役 小澤淳氏

「箱明アグリ(HACOAS AGRI)」は、設計から製造まで外部のチカラにほとんど頼らず、約20回の試作を重ねて完成した。「農作物の価値を上げて、高い値段で販売する。そのために鮮度を守る仕事を、できるだけラクにしたかったんです」と小澤氏は製品開発に込めた思いを語る。

製品カラーは本体・扉それぞれ自由に選べて、色の組み合わせは25通りもある。農作業用の車両らしくないパステルカラーの配色は、「若い農業者にオシャレだと思ってもらいたい」という小澤さんの思いを表している。「箱明アグリ(HACOAS AGRI)」は4月以降の販売を予定しており、月額サブスクリプションでの提供も検討中だ。

DATA

株式会社箱明

窒素不足の課題に立ち向かう
BS資材の「N-Catch(エヌキャッチ)」


ファイトクローム「N-Catch(エヌキャッチ)」

夏場の高温や乾燥の影響により、水稲の登熟期以降に窒素不足が起きて白未熟粒や乳白米が発生するケースが増えている。こうした課題に有効なバイオスティミュラント資材として注目されているのが、ファイトクロームの「N-Catch(エヌキャッチ)」だ。

N-Catchに含まれる窒素固定菌Gd(グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス)は、植物の葉の細胞内に入り込み、大気中の窒素を植物が利用できる形に変換する。田植え前の育苗箱に処理するだけで、菌は植物の細胞分裂とともに増殖し続け、収穫まで効果が持続する。前半の生育期には肥料が潤沢なため菌の働きは穏やかであるが、窒素が不足する登熟期以降に活発に活動するという。植物の状態に応じて自律的に働く、精巧な仕組みだ。


ファイトクローム マーケティング部長 須藤修氏

「N-Catch」は2025年2月に発売された。2025年の全国規模の水稲への活用事例では、10aあたり平均約60kgの増収効果が確認されている。使用している菌は、サトウキビ由来の酢酸菌の一種で、米以外にもほとんどの野菜や果樹に利用可能だという。

ファイトクロームマーケティング部長の須藤修氏は、「育苗箱の処理で完結するので、ドローンや大型機械は不要です。散布コストも労力も削減できます」と製品のメリットを強調する。

DATA

株式会社ファイトクローム

初期投資ゼロ円で
農業設備を導入「ネクシーズZERO」


NEXYZ.東日本副社長執行役員COO 町田昭文氏

農業をするには、ハウスの新設・更新や冷暖房機の導入などの設備投資が避けて通れない。昨今は資材価格の高騰で、初期費用が増大している。しかし、国や自治体などの補助金だけで、設備費用をすべて賄うことは難しい。そこに新たな選択肢を提供するのが、NEXYZ.の「ネクシーズZERO」だ。

同社がサプライヤーから設備を調達し、農業者に提供する仕組みで、利用する側は月額サービス料を5年または7年間支払うだけ。初期投資はゼロ円で、契約期間満了後は設備が農業者の所有物になる。NEXYZ.東日本副社長執行役員COOの町田昭文氏は「リースとローンのいいとこ取りです」と表現する。審査は同社が自前で行うため、金融機関の融資枠に影響しない点も大きなメリットだという。


NEXYZ.の「ネクシーズZERO」

取り扱いをしている製品・ソリューションは3万点を超える。ハウス本体・環境制御・保冷庫・植物育成LEDに加え、今後は草刈り機やドローンも順次対応していく予定だ。月額料金は案件規模によって異なるが、契約期間中は固定にしている。新規就農者から大規模農業法人まで幅広く利用されている。「初期投資を抑えて経営の手元資金を確保しておきたい農業者のみなさんに、ぜひご検討いただきたい」と町田氏は話している。

DATA

株式会社NEXYZ.


取材・文:佐藤美紀

PICK UP
注目記事

RANKING

  1. 1
    バイオスティミュラントの最新研究と国際的な動向を学べる!協議会がセミナー開催
    バイオスティミュラントの最新研究と国際的な動向を学べる!協議会がセミナー開催
  2. 2
    青果市況情報「YAOYASAN」に 新機能「市況分析」が登場! 過去から現在のデータを市場・産地別に分析
    青果市況情報「YAOYASAN」に 新機能「市況分析」が登場! 過去から現在のデータを市場・産地別に分析
  3. 3
    畑ごとの施肥量計算もラクにできる!肥料の無駄削減につながるスマホアプリ「肥料のミカタ」
    畑ごとの施肥量計算もラクにできる!肥料の無駄削減につながるスマホアプリ「肥料のミカタ」
  4. 4
    玉ねぎ栽培におすすめな肥料とは?育て方に最適な追肥の時期や方法を紹介!
    玉ねぎ栽培におすすめな肥料とは?育て方に最適な追肥の時期や方法を紹介!
  5. 5
    農業に役立つアイテムを抽選でプレゼント! 応募受付は2026/3/29まで!
    農業に役立つアイテムを抽選でプレゼント! 応募受付は2026/3/29まで!

MAGAZINE

vol.38|¥0
2026/01/20発行

PRESS

EVENT
イベント・セミナー情報