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生産者の取組み

「生産活動そのもの」を価値として販売するには? コメ農家の未来を切り開く、生産者の奮闘

農業生産者とは、農作物を作って売ることを生業とする者である。ところがそれに留まらず、環境に負荷を掛けない方法で美味しい米を作ることで、生産活動そのものを販売しようとしている生産者がいる。

有機米生産者の未来を切り開く
会津の農業生産者の挑戦

福島県の農業と言えば果物の知名度が高い。桃の収穫量は全国2位であり、梨は5位、りんごは5位。福島県は日本有数のフルーツ王国である。

一方で、福島県のほぼ中央、内陸部にある会津盆地で獲れる米は食味の良さで知られている。盆地であることから寒暖の差が激しく、周りを囲む山々からは豊富な水が流れ込む。会津の米は食味検定で特Aの評価を得ており、市場取引価格(令和3年産米)は1万4033円と全国平均を上回っている。


無の会がある会津盆地の米は食味の良さで知られている。盆地であることから寒暖の差が激しく、周りを囲む山々からはミネラル豊富な水が流れ込む。

そんな会津盆地の外れの中山間地に、逆風に晒されつづける米農家の未来を切り開こうと奮闘している有機米生産者がいる。農業法人自然農法無の会(以下、無の会)である。無の会の設立は2005年。高校の英語教師だった児島徳夫さんが、環境を破壊しない農業=有機農業を実践すべく立ち上げた。

その経緯から想像できるように、当初の無の会は、いわゆるプロの農業生産者ではなかった。それが今では、約15haの農地で、米を中心として、野菜、なたね、エゴマ、会津みしらず柿、イチゴ、大豆、そばなどを、農薬・化学肥料を一切使用せずに栽培しており、特に米に関しては県内最大規模の有機米生産者へと成長を遂げている。いかにして無の会は成長していったのだろうか? 無の会でプロデューサーを務める宇野宏泰さんが教えてくれた。


取材させていただいた圃場ではもち米が実っていた。「今年は粒が大きい! 堆肥は使い続けるほど効果が高まるのです」と宇野さん。

「創業者である児島先生と、31歳にして有機栽培歴9年の岡ちゃんの頑張りにつきますね。岡ちゃんは数年前まで、ほぼ1人で田植をして管理していましたから……」。

岡ちゃんこと岡本照正さんは、無の会の大黒柱だ。たった1人で紙マルチ田植機を操り、1ヶ月かけて10haの田植えをやり遂げてしまう鉄人だ。また無の会には宇野さんのほか、町会議員をしながら野菜とイチゴの無農薬栽培に取り組む渡辺葉月さん、大学を休学して無の会に加わった寺島美羽さんなど、働きながら有機農業を学ぶ若者が集っている。

無の会が使用している紙マルチ田植機とは、田植えと同時に田面に専用の再生紙を敷き詰めることで田面への日光の通過を遮断して雑草の生長を抑制する、無農薬栽培に貢献するために開発された三菱農業機械独自の田植機である。国が推進する「みどりの食料システム戦略」において、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進に貢献する機械として、投資促進税制の対象に選ばれている。

「収穫した無農薬栽培米はすべて直販しています。会津の米価は全国平均よりは高いですが、JAに出していては経営が成り立ちません。お米そのものの味と、私たちの栽培方法の価値を認めてくださる全国の方々に販売しているんですが、児島先生が主体だった頃は完全なアナログ販売だったんですよ(苦笑)。口コミで広がっていったお客様に、電話とファックスを駆使して受注販売していました。当時は今より小規模だったとは言え、数百件をアナログで頑張っていた先生は尊敬に値します。ただ、もう時代が違いますから……今は私たちがウェブサイトやオンラインショップを立ち上げて、効率的に販売できる体制にしています。大変ありがたいことに、供給が追い付いていないのが現状です。ですから今後も、紙マルチ田植機の使用面積を増やしていく予定です」。


無の会独自の有機・循環農法で育てられたお米は、自社運営のネットショップを通じて販売されている。「売れ行きは上々です!」と宇野さんは語る。

 

 

みどりの食料システム戦略
投資促進税制の対象機械

紙マルチ田植機

発売開始から25周年を迎えた、三菱農業機械の『紙マルチ田植機』。田植えと同時に田面に専用の再生紙を敷き詰めることで雑草を抑制する。農薬を極力使わない=安心安全な米作りをサポートする田植機である。国が推進する「みどりの食料システム戦略」において、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進に貢献する機械として、投資促進税制の対象に選ばれている。

 

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