田んぼの水位をスマホで確認! 見回り時間を大幅削減するツールとは?
2019/05/13
シンプルで扱いやすく、リーズナブル。水位センサー『farmo』は、三拍子がそろったクラウド型水位確認システムだ。farmoを活用し業務の大幅な効率化を実現した、米農家・五月女文哉さんに話を聞いた。
初期設定も操作もサクサク。
農家に寄り添うIT機器
関東平野の最北端に位置し、栃木県屈指の米どころとして知られる大田原市。
市内で米農家を営む五月女文哉さんは、コシヒカリやミルキークイーンなど、人気品種の生産、販売を手がけている。また、およそ10年前より、地元の酒蔵から依頼を受け、酒米である「吟のさと」の生産も開始した。
五月女さんが作った「吟のさと」を原料とする日本酒「大那」は、「全国新酒鑑評会」にて、3年連続で金賞を受賞。3度目の金賞を受賞した一昨年の5月以降、複数の酒蔵から酒米生産の依頼が舞い込んだという。
さらには、一般的に難しいとされるミルキークイーンの栽培にも成功しており、近年、発注数が増加しているそう。
日本酒「大那」は、発売後およそ1ヶ月間で完売したことも。
このように、確かな技術をもつ五月女さんは、各所から引っ張りだこの売れっ子農家だ。
春先から夏にかけては、圃場での作業と同時進行で取り引きの連絡や事務作業を行なっており、目が回るほど忙しい。とくに日々の田んぼの見回りは、五月女さんにとって大きな負担となっていた。
「うちで管理している圃場は、全部で約30ヘクタール。圃場間の距離が離れているため、朝と夕方の2回、2時間半くらいずつかけて見回りをしていました。特に水位などに問題が生じておらず、結果的に“無駄足”になってしまう場合も多くありました」。
そんな五月女さんが導入したのが、栃木県のITベンチャー企業「株式会社ぶらんこ」が開発・販売する水位センサー『farmo』だ。
圃場に『farmo』本体と通信機を設置し、スマートフォンに専用アプリをダウンロードするだけで、圃場の水位が画面上に表示される。
電源とインターネット設備を用意する必要もなく、『farmo』とスマートフォンさえあれば、場所と時間を問わず、水位を確認できるというわけだ。
『farmo』とは?
圃場に水位センサー「farmo」の通信機と本体を設置し、アプリをダウンロードするだけの簡単な水位監視システム。田んぼ1枚につき1台設置することで、遠く離れた圃場の水回りに関する時間や労力の節約になる。
初期登録料:1万5000円
製品価格:1万8000円/台
利用料金:500円/月(利用した月のみ)
地図上で水田の水位を確認すれば、その日の見回りのルートを決めやすい。また、水田ごとの水位をグラフで確認すれば、水はけのよさなどの特性が視覚的に把握できる。
『farmo』のおかげで、足を運ぶ必要がある圃場とそうでない圃場の判別ができるようになり、無駄足を踏むことがなくなったという。
五月女さんは、合計15個のセンサーを設置している。各圃場の水位の変化を、グラフで確認できる。
また、品質安定化にも『farmo』が活用できる。
「酒米の『吟のさと』は九州地方の気候に適した品種のため、関東地方で栽培する場合、より細やかな世話が必要です。特に夏場の水管理に失敗すると、実った米が『胴割れ』してしまい、商品価値が大きく下がってしまいます。圃場から離れた場所にいても、いつでも水位が分かる『farmo』は、重宝しますね」。
『farmo』のもう一つの特徴が、簡単にサービスを導入できること。
本体と通信機は、軽量で造りがシンプルなため、女性やお年寄りも、難なく圃場に設置できる。
専用アプリの設定も簡単操作で完了するため、スマートフォンやアプリに馴染みがない人も、スムーズにこなせるはずだ。
また、注目すべきは、そのユニークな支払い方法。栃木県および東北地方でサービスを利用する農家は、その年に収穫した米1俵を「株式会社ぶらんこ」に譲渡することで、水位センサー1本(通常1万8千円)を利用できる(※)。
農家の負担を最大限に減らすことを目的に、考案された支払い方法だ。
※レンタル料となる米は、「株式会社ぶらんこ」が運営するアプリ「一俵」で販売。消費者から注文があった際、農家から消費者に直接発送する。なお、栃木県と東北地方でのみ適用されるサービスとなる。
圃場に設置された水位センサー『farmo』
どこまでも農家に寄り添う姿勢を感じさせる、水位センサー『farmo』。県内の農家だけでなく、全国各地の農家から注目される可能性が高いIT機器だ。
「株式会社ぶらんこ」では、水量を自動調節できる「給水ゲート」を開発中!
PROFILE
五月女文哉さん
家業である米農家を引き継ぎ、現在はコシヒカリをはじめとする、計5品種の米の生産、販売を手がける。また、地域の農家が加盟する農業法人「那須山麗土の会」の2代目代表でもある。先進の機器や技術への関心が高く、これまでに複数の企業の製品開発に協力している。
問い合わせ
株式会社ぶらんこ
TEL:028-600-4501
photo&text: Yoshiko Ogata
AGRI JOURNAL vol.11(2019年春号)より転載
Sponsored by 株式会社ぶらんこ