ミントの香りが農業害虫の天敵を誘了! 無農薬・減農薬での有機農法が可能に!?
2020/03/23
ミントをコンパニオンプランツ(共生植物)として用いる手法が、有機農法を実現させるかもしれない。ミントの特有な香りが、農業害虫を捕食する天敵を惹きつけることを、東京理科大学の有村源一郎教授の研究グループが発見した。
ミントの香りが農業害虫を捕食
“タバコカスミカメ”を誘引
東京理科大学の有村源一郎教授の研究グループは、ミント特有の香りが農業害虫を捕食する“タバコカスミカメ”を強く誘引することを発見した。ミントをコンパニオンプランツ(共栄作物)とすることで、タバコカスミカメを効率的に害虫防除に活用することができる。
コンパニオンプランツとは、作物の近くに混栽することで、お互いに良い影響を及ぼしあう植物のこと。害虫予防や、病気予防、成長促進などの効果が見込まれ、無農薬・減農薬での有機農法が可能になると期待されている。
有村教授らのグループはこれまでにも、ミントをコンパニオンプランツとして用いた有機栽培技術の開発に取り組んでいた。
「ミントをマメや葉物野菜などの作物の横で混栽することで、作物はミントの香りを受容し、防御能力を高めることができる(Sukegawa et al., Plant Journal, 2018)」や、「ミントの香りは果樹・茶・野菜・花卉などの植物を吸汁加害するハダニの捕食性天敵”チリカブリダニ”を誘引することができる(Togashi et al., Scientific Reports, 2019)」などの生物間相互作用を明らかにしている。
異なる香気成分を放つ
3つのミントで実験
地域にもともといる天敵を土着天敵という。本研究では、ヨトウガ、アザミウマ、コナジラミ、ハダニなどの農業害虫の土着天敵である“タバコカスミカメ”に着目し、ミントの香りに対するタバコカスミカメの行動について評価した。ミントの種類は、異なる香気成分を放つキャンディミント、スペアミント、アップルミントだ。
キャンディミントの香りが
タバコカスミカメを誘引
結果は、周辺にキャンディミントがある場合に、タバコカスミカメが捕食したヨトウガ幼虫の数が一番多かった。キャンディミントの香りは、ヨトウガ幼虫に食害されたナス葉から放出される匂いと同程度に、タバコカスミカメを誘引する活性があることが見出された。
さらに、キャンディミントの香りをあらかじめ経験したタバコカスミカメは、食害されたナス葉から放出される匂いよりも、強い嗜好性をキャンディミントの香りに示した。キャンディミントの香りは、タバコカスミカメの誘引のみならず、食欲増進の効果も持ちあわせていた。
また、ミントは異なる天敵種である“タイリクヒメハナカメムシ”には誘引効果がないことから、ミントは特定の天敵種を惹きつけるコンパニオンプランツであることが示唆された。
ミントをコンパニオンプランツとする利用法は、農薬依存型の近代農業における課題を解決し、天敵を用いた害虫防除ができることを示唆する。農薬を使わない有機農法を実現させる足がかりになりそうだ。
DATA
TEXT:竹中唯