バイヤーから見た! 売れる6次化商品のポイント
2017/10/25
「6次化に挑戦したものの売れなくて困っている……」という悩みを抱える農家は少なくない。現在最高位となる"食プロ段位レベル5"を持つカリスマ6次化プランナーが語る「売れる6次化商品にするためのノウハウ」をご紹介しよう!
売れる、売れないにはワケがある
明暗を分けるポイントを伝授!
売れる商品にする前に、まずは自身が製造する商品を見つめ直してみよう。6次産業化プランナー・鈴木栄治さんは「売れないのには理由があります。まずは以下の6つのポイントに合致してしまっていないか、確認しましょう」と語る。その6つのポイントとは……
1.値段。消費者が求める価格(適正価格)とのズレ
2.品質(技術・知識・設備の不足)
3.分かりにくい、使いにくい、食べづらい(情報不足)
4.デザイン・商品形状が悪い
5.類似商品や競合商品が多い(独自性の不足)
6.販売チャンネルが不明瞭・条件が合わない(販売手法)
である。いかがだろうか?
これら売れない6つの理由は、売れる6次化商品にするためには最低限クリアしておかねばならないポイントである。
続いて、売れている6次化商品を見てみよう。鈴木さんによると、売れている6次化商品には、以下のような共通点があるという。
1.ターゲット・利用シーンと商品コンセプトが一致している
2.消費者の共感を呼ぶようなコダワリやストーリー性がある
3.その土地・地域(資源)の特性を活かした商品である
4.最適な販売先や販売場所、売り方が出来ている
5.製造加工に必要な原材料や資金が確保できている
6.競合商品に対する新規性・優秀性・市場性が見込める
7.事業を継続するだけの経済性・採算性が見込める
8.無理な設備投資をしていない
売れている6次化商品が持つ8つの共通点には、売れない理由6つとはまったく異なるポイントが挙げられている。売れている6次化商品は、価格や品質、デザインといった基本スペックが適切であるだけでなく、販売チャンネルの確保から事業継続に関わる経営面に至るまで、多様な共通項がある。
また、鈴木さんが強調するのは3番目の「その土地・地域の特性を活かした商品である」である。「6次化商品とは、地域資源の有効活用に他なりません。それぞれの地域が有する自然、景観、歴史、文化は、その地域固有のもの。だから地域住民には当たり前のことでも、他者にとっては新鮮・斬新である場合が少なくありません。そうした地域の隠れた名品を商品化してストーリーを盛り込むことで、地域の農林水産物・地場産品・伝統技術を6次化商品として活用できます。多くの成功している6次化商品は、魅力的なストーリー性を有しているんですよ」という。
そして最終的には、6番目にあげた「新規性・優秀性・市場性」が成否を分ける。それについては言うまでもないことだろう。ただし面白いのは、6次化商品の新規性や市場性は、商品そのものではなく、売り方によっても作り出すことができるのである。以下の例をご覧いただこう。
モノ売りからコト売りに。
発想を転換して
成功を収めた『茶柱縁起茶』
<写真:緑起茶本舗「茶柱縁起茶』」HPより>
『茶柱縁起茶』をご存知だろうか? 「一本の小さな茶柱から大きな驚きと感動が味わえる縁起の良いお茶」それが『茶柱縁起茶』である。商品開発のきっかけは、実は緑茶ギフトの販売低迷であったという。
お茶業界そのものが不振に喘いでおり、15年間で34%も販売店舗が減少している。そうした背景にあって、既存商品との差別化を目指して企画したのが『茶柱縁起茶』。そのカギとなっているのは、日本の言い伝えである「茶柱が立てば縁起が良い」。緑茶商品から縁起物商品へと発想を転換することで、密かなる人気商品へと成長した。縁起物らしく、選挙や受験など、特定の需要をガッチリ確保した。それに対応するパッケージ、個包装化からウェブデザインに至るまで、抜け目がない。そのユニークな発想が受け、メディアにも多数取り上げられた。販売チャンネルも拡大して、現在では大手デパートの取扱商品となり、現在に至っている。
最後に、6次化にチャレンジしている方に向けて、有用な情報を提供しておこう。ここに記載した各要件は、もちろん自身でも評価できる。だが、第三者(専門家)のアドバイスを受けることで、自分では気付かなかったポイントを改善できる可能性がある。そんな頼れるアドバイザーが、鈴木さんが研修コーディネーターを務めている「食の6次産業化プロデューサー」だ。6次化でお悩みの方は、是非、相談してみて欲しい。
食の6次産業化プロデューサー/6次産業化プランナー
鈴木 栄治 氏
(株)システムプランニング 代表取締役
(一社)地方創生サポート協会・栄え塾 代表理事・塾長
大手流通業でバイヤー、商品開発部長などを歴任し、故郷銘品、無印良品など多くのPB商品の開発に関わり、現状では最高位の「食プロ段位レベル5」に認定される。[売][買]両面に精通する実践専門家として、27都道府県の公的支援機関の認定を受け活躍中。専門分野は、マーケッティング、商品開発、販路開拓、農商工連携、6次産業化、まちづくり支援、経営革新、事業戦略、人材育成など多岐にわたり、年80回程度の講演・研修も行う。農水省管轄の6次産業化プランナー、中小企業庁ミラサポ支援専門家、FACO食農連携コーディネータなども務める。
text:Reggy Kawashima