「農商工連携」って何? 地域農業を活性化させるポイントとは
2018/10/29
「農業者」(農林水産省)と「商工業者」(経済産業省)が一緒になって地域活性化に取り組もうという目的で2007 年11 月に始まった「農商工連携」。10 年以上たち、考え方も、規模も、スケールも、大きくなっている。そこで、農商工連携スタートアップの際に役立つ5つのポイントを紹介。
①特産品を手にとってもらうには
中身以上にデザインが重要
地域の特産品づくりの多くは、「もったいないものを何とかしたい」「自社の技術を活用したい」というところから始まりがち。でも、「地産地消だから」「新鮮な材料だから」というだけではダメ。「食べたらわかる」というものではダメで、「食べたくなる」仕掛けが重要。食べ物が「美味しい」のはもはや差別化にはなりません。得てして「美味しさ」のことばかり考えがちですが、「見たら欲しくなる」デザインやネーミングが重要。
②IT技術を活用して
新しい生産・流通システムに
徳島県上勝町の株式会社いろどりは「葉っぱ」ビジネスで有名なベンチャー企業ですが、高齢者が働き方やモチベーションがあがるパソコンの利活用をしたという点でも注目されました。そして、お年寄りが生き生きと仕事をする町ということが知れ渡ることによって、若い人たちがどんどん町にやってくるようになったそうです。「人手不足」とか「過疎」というところでも、ITを組み込んで魅力あるビジネス連携ができれば、人は集まります。AIやドローンなどを使ったスマート農業やブロックチェーンなども注目ポイント。
③成功事例を学ぶだけでなく、
失敗の理由を考えてみよう
「農商工連携ベストプラクティス」のような事例はインターネットでもたくさん見ることができます。確に、成功事例は参考になりますが、自分たちにどう当てはめられるかと考えると、案外、同じことをマネするのはやさしくありません。それよりも、各自が抱えている問題や課題を出しあって、「なんでうまくいかないのか」「失敗の理由はなにか」を考えてみましょう。それを解消する方法を見つけていくことが連携の目的になっていくはずです。
④ダイバーシティなメンバー構成
女性の視点はいつも鋭い
荒くれ漁師軍団をまとめて大改革をした坪内知佳さん、町工場を再生させた諏訪貴子さん、パートからJR東日本グループの株式会社日本レストランエンタプライズ(NRE、旧・日本食堂)弁当営業部・大宮営業所長になり就任1年目に燃焼10億達成した三浦 由紀江さん。震災復興からできた高額ニット「気仙沼ニッティング」村上祐子さんなど、女性のリーダーシップによる力強い地域づくりの事例が増えています。農商工連携に医療や福祉を加えた「医福農商工連携」や女性の働き方改革なども取り入れたい視点です。
⑤「完成」がゴールではない。
常に「発信」することが重要
開発した商品やサービスが「たったひとつ」しかなかったとしても、発信すべき物語はたくさんなくてはいけません。そして、既存のマスコミやソーシャルメディアを通じて発信する力が求められます。全体の構成と費用を考えるプロデューサー、営業戦略を考えるマネジャーと並んで、広報戦略を考えましょう。農商工連携のプロジェクトが、毎月、どこかの媒体で、だれかが話題にしてくれるような情報発信や、イベントを企画するのもよいでしょう。ファンになってもらうために、いろいろなラブコールがあってしかるべきです。
解説
伊藤淳子氏
農と食女性協会代表/(公)日本フードスペシャリスト協会理事/FACO(食農連携コーディネーター)/6次産業化サポーター。女性誌の創刊編集者を経て、地域ブランドづくり、農商工連携におけるブランディング、女性の起業支援、マルシェサポート、講演やセミナーなどの活動をしている。著書:「農業女子」(洋泉社)「マイブランドのお取り寄せ」(小学館)など。
AGRI JOURNAL vol.09(2018年秋号)より転載