ドローン直播と基幹防除を実現! コメ生産現場の”ドローン活用事例”
2019/03/15
山形県庄内地方でコメの生産を行っている株式会社まいすたぁは、複数の生産法人と企業によって設立され、最先端技術を使った農業に取り組んでいる。同社は、どのように農業用ドローンを活用しているのだろうか。
次世代農業の実現に向けて
ドローン直播にチャレンジ
“まいすたぁ”では、新しい農業の形・儲かる農業の実現に向けて、農業用ドローンを積極的に活用している。活用を開始したのは2017年のこと。エンルート社のドローン「AC940D」により、30aのべんモリ直播※の実証試験を行った。直播は、圃場の均平が収量に大きく影響するため、一般の耕うんから荒起こし、砕土作業、均平作業の後、ドローンでの直播を実施。
代表取締役の齋藤一志さんは「直播栽培は、苗作りや苗を持ち運ぶ作業が求められる一般的な移植栽培に比べて、大幅に労力が軽減される栽培方法です。ドローンを活用することで、さらに楽に作業を行うことができました」と語る。
翌年には機体を購入、
オペレーター資格も取得し
本格的なドローン活用へ
実証実験でドローン活用に手応えを感じた同社は、翌年にはマゼックス社の「飛助DX」を購入した。同機は、低価格で自動航行ができるのが特徴。狭小地で機動性を発揮する機体だ。
同機を活用するために、社員の伊藤大喜さんがオペレーターの資格を取得し、初めて20haの基幹防除作業を実施した。以前には無人ヘリコプターによる8haのべんモリ直播を実施していたが、いよいよ自社ドローン直播へも挑戦したのである。機体を手に入れ、ドローン資格者を育成したことで、いよいよ本格的にドローンを活用する段階に入ったと言える。
「2018年に実施したドローンによる直播の結果には、大変満足していますよ。今後は直播だけでなく、別のドローン活用法も考えています。1キロ粒剤除草剤の散布と、尿素の追肥にも利用する予定です」(齋藤さん)。
また同じく2018年から、乾田直播のテストに向けて30aの圃場を7枚畦抜きして2.1haの圃場に大区画化。新しい農法へのチャレンジも開始した。農研機構とアグリテクノ矢崎が開発した新型の高速高精度汎用播種機のデモ機を借りて、GPS自動操舵システム付きトラクターで高速播種。除草剤や追肥、センシングは全てドローンを利用する計画だ。
実証試験を繰り返しながら、次々と先進的な農業に挑戦する“まいすたぁ”。同社の事例からもわかるように、ドローンは農業の中であらゆる役割を担うことができる。これから、それぞれのスタイルに合わせたドローンの活用は、より多様化しながら広まっていくことだろう。
※べんモリ直播…農研機構が開発した技術で、水田に直接播種する湛水直播の1つ。モリブデン化合物を酸化鉄「べんがら」とともに水稲種子に被覆して、安価で簡単に湛水直播を行うことができる。
text: Reggy Kawashima
AGRI JOURNAL vol.10(2019年冬号)より転載