熱気に包まれた「全国青年農業者会議」の2日間。全国の若手農家が集結
2019/03/15
4Hクラブが主催する「第58回全国青年農業者会議」が開催された。全国予選を勝ち上がった若手農業者たちの意見発表や取り組み発表が行われ、各部門の受賞者が決定。2日間の模様をレポートする。
団体の力を生かして
課題を解決する
2月26日(火)~27日(水)、東京都・代々木にある国立オリンピック記念青少年総合センターにて、「第58回全国青年農業者会議」が開催された。本会議の主催者は、20~30代の若い農業者が中心となって活動する「全国農業青年クラブ連絡協議会(以下、4Hクラブ)」。
本会議は、日本農業の担い手として農業や農村環境の改善などに取り組む若手農家たちが、互いの成果を発表し合い、問題の解決方法や新しい農業を見出すことを目的としている。26日に、全国予選を勝ち抜いた4Hクラブ員による取り組み成果・意見発表が行われ、27日には、先進農業技術のプレゼンテーション大会「先進技術アワード農業2.0」が行われた。
26日の13時、「第58回全国青年農業者会議」が開会。挨拶を述べたのは、4Hクラブの会長をつとめる竹本彰吾さんだ。
「僕は石川県で米を作っている農家です。高校3年生の時、就農を決心しましたが、そのきっかけは父のプレゼンテーションでした。ある日父は、机の上に札束をズドンと置き、『農家はちゃんと儲かるんだぞ』と言いました。その後の父の言葉の中で、僕の心に残っている言葉があります。『寄せられた期待にこたえなさい』という言葉です。それが、今の僕の人生観に繋がっています。
今回の『第58回全国青年農業者会議』のテーマは、『相乗作用』です。皆さんが抱えている使命や寄せられた期待に対し、団体の力を生かして働きかけをしたい、という思いから『相乗効果』をテーマに選びました。ちなみに、僕の使命は、農業を“なりたい職業ナンバーワン”にすること。その使命を4Hクラブのみんなの力を借りつつ、達成したいと考えています。『第58回全国青年農業者会議』をとおして新しい繋がりを作り、それをもとに大きなウェーブを作っていきたいと思います」。
全国の優秀クラブが
集結し、意見を交換
「優秀農業青年クラブ最終選考発表会」で発表を行ったのは、書類審査と発表審査を経て選出された「高根沢町青少年クラブ協議会(栃木県)」「小松能美地区農業青年グループ(石川県)」「宿毛地区農村青少年クラブ連絡協議会(高知県)」の3クラブ。発表翌日の27日には、それぞれの受賞が発表された。
<農林水産大臣賞>小松能美地区農業青年グループ
雪害復旧支援にクラウドファンディングを活用
「小松能美地区農業青年グループ」の発表者は、会長の宮本健一さん。宮本さんは、近年の「小松能美地区農業青年グループ」の成果として、雪害復旧支援活動や食育を通じた地域社会との交流活動などを挙げた。
平成30年2月、石川県は記録的な大雪に見舞われ、小松能美地区でも農業用ビニールハウスが約700棟倒壊した。これをきっかけに、耕作放棄地が増えることなどを懸念し、クラウドファンディングを活用して復旧支援の資金を募ったという。後日、見事に目標金額が達成され、倒壊したハウスの撤去に必要な電動ノコギリを購入した。
大会の講評者の一人である明治大学農学部兼任講師・今井伸治さんは、小松能美地区農業青年グループについて「決して人数が多くないクラブだが、多彩かつ重要な課題に取り組んだクラブ」と評し、「近年注目されているクラウドファンディングを活用し、地域の施設の復旧にあたったこと、そしてただ単に資金を分配するのではなく、電動ノコギリを購入した点も高評価されたポイント」だとコメントした。
<農林水産省経営局長賞>高根沢町青少年クラブ協議会
地域の日本酒を復活
「高根沢町青少年クラブ協議会」の発表者は、永井秀和さん。永井さんは、高根沢町の環境などを説明したのち、クラブ員の人数増加や「酒米プロジェクト」を成果として発表した。
高根沢町は、優秀な米どころであるものの、およそ100年前に地酒が途絶えていたという。地元企業が、新たな特産品産出のため立ち上げた「高根沢の日本酒プロジェクト」を良い契機ととらえ、日本酒作りに携わることを決めたという。酒造りが盛んな新潟県上越市での研修などを経て、酒米としての山田錦の栽培に成功。山田錦を使った日本酒「縁も高根沢」は、2月9日より販売されている。
表彰に際した講評では、地域の日本酒を復活させたことへの評価に加え、新潟県上越市のクラブの協力を得て栽培に取り組んだ点に着目し、「クラブの活動が全国的に活性化するきっかけとなるはず」とコメントが寄せられた。
<全国農業青年クラブ連絡協議会会長賞>宿毛築農村青少年クラブ連絡協議会
地域での交流活動が評価
「宿毛地区農村青少年クラブ連絡協議会」は、食農教育や消費者との交流などを近年の活動内容として発表。地域の保育園で畑作りや栽培の指導を行ったり、小学校で出前授業を開いたりしたという。こうした食農教育に力を入れた理由として、近年多発した産地偽装を問題視し、農業に対するイメージを好転させたいと考えたことがあったと話した。
また、地域の農業のPRや消費者との交流を目的に、食育イベント「すくも青空フェスタ」を企画・主催。開催後は、参加者より「これからは地元野菜を積極的に食べたい」という声が多く聞かれたという。
同クラブの活動は、「食育を通じ、消費者との接点を形成した点」「産地偽装を問題視し、食の信頼性回復につとめた点」「料理教室の開催などを通じ、生産者と消費者のリアルな情報交換をサポートした点」などが高く評価された。
「優秀農業青年クラブ最終選考発表会」の後、青年農業者の代表による意見発表会が開かれ、農業への抱負や熱い思いなどが語られた。