成功した”こせがれ”から学ぶ! 農業の事業承継のあり方とは
2017/01/10
多くのこせがれは勘違いしている?農家のこせがれネットワーク代表理事の宮治勇輔のコラム「こせがれで変わるニッポンの農業」。第2回となる今回は、こせがれの経営資源と強みの再認識について語ってもらう。
事業承継のタイミングで
強みの再確認を
農家のこせがれは幸運にも就農した時点で経営資源(人・もの・お金・情報・顧客)をもっている。後を継ぐ以上、これらの経営資源を活かして事業拡大を目指すのは当然のことである。しかし、実際はそう上手くいかない。売上を上げるための方法を履き違えているからだ。
こせがれの多くは、売上を伸ばすために新しいことに挑戦することが大切だと考えている。先代が作っている農産物を加工して、粉末にしたりジャムにしたりと、すぐ何か新しい商品をつくろうとする。
だが、重要なのは経営資源を見つめなおすこと。「先代の良いところを理解し、変えてはならない点は変えず、変えるべき点は変えること」なのだ。
千葉県の養鶏農家、北川貴た か基きさんの話をしたい。彼は就農後、都内で営業を開始する。品質は良いが割高の卵は行く先々で断られた。だが、ケーキ屋だけが取引に応じてくれた。疑問に思い、仲の良い取引先に理由を尋ねたところ、予想もしない答えが返ってきた。「こしの強い卵だからスポンジが1台多くつくれる」。
以来、ケーキ屋に狙いを定め、その特徴をアピールすることで売上は拡大していった。彼はすぐさまプリンにして売ろうとはしていない。営業での疑問を機に、卵の良いところを理解し、売りものを変えずに売り先を変えたのだ。
僕は全国のこせがれを見てきたが、こうした成功例は彼だけではない。自分たちならではの強みは必ずあるはず。ないものをつくるのではなく、あるものをどう活かすかが重要である。
みやじゆうすけ
神奈川県藤沢市在住。農家のこせがれネットワーク代表理事。実家の養豚業を継ぎ、2006年に株式会社みやじ豚を設立し代表取締役に就任。一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にするべく活動中。