遮熱ネットへの利用で光を通しながらハウスの暑さを軽減! 新素材テクノロジー「SOLAMENT®」
2025/10/02

光合成に必要な太陽の光は通したい、でもハウスの温度上昇は抑えたい――。そんな難題をクリアした遮熱ネットが施設栽培の常識を変えようとしている。鍵となるのは、近赤外線を遮りながら可視光線を通す革新的な素材だ。
1.暑さを軽減し、光合成も◎ 夢のような素材が農業を変える
2.SOLAMENT®とは?
3.SOLAMENT®の仕組み
ー改革1 覆っても光合成を妨げない
ー改革2 高温障害を防ぐ遮熱テクノロジー
ー改革3 導入が簡単!
暑さを軽減し、光合成も◎
夢のような素材が農業を変える
ビニールハウスでの施設栽培を行う農家には夏場の高温は切実な問題だ。作物に葉焼けや裂果、高温障害を引き起こし、また40度を超える環境は作業する人間にとっても過酷極まりない。
このようなハウスの暑さへの対策として従来から遮熱ネットが用いられている。が、遮熱をすればするほど作物の成長に必要な光合成のための光も減ってしまうことに課題があった。
そんな中、石川県の株式会社能任七が2021年に開発したのが、高機能遮熱ネット「青天張(あおてんじょう)」。ハウス内の温度を下げながら、可視光線を極力妨げないことに成功した。
これを可能にしたのが、住友金属鉱山が独自に発明、国内外で特許を取得した素材テクノロジー「SOLAMENT®」。
同社でこの素材を用いた事業を率いる石橋佳祐さんはこう語る。
「太陽光の波長のうち、約800〜2000nmの『近赤外線』と呼ばれる光が暑さをもたらします。SOLAMENT®を使った青天張はその波長の光を遮りながら、約400〜700nmの可視光線を通す性質を持ち、暑さを抑えながら光合成への影響も少ないという、ハウスにベストな環境を作るサポートをしてくれます」。
青天張はイチゴやトマト、軟弱野菜などのハウス栽培に導入されており、珍しい例ではカカオも。一般的なネットは黒い色をしているが、こちらは透き通った青色。従来の遮熱ネットのイメージを覆す見た目だが、その効能は折り紙つきだ。実証実験でも、実際に導入した農家からも、高い効果を発揮したデータが寄せられている。
SOLAMENT®は遮熱にとどまらず、太陽光に対する様々なアプローチを可能にするという。住友金属鉱山は今年3月よりSOLAMENT®を活用して農業を再び豊かなものにするための方法を探るプロジェクト「ReFarm by SOLAMENT®」を始動し、共創パートナーを募っている。
「SOLAMENT®は世の中の常識を変え、社会を変えることができる可能性を秘めています。農業分野では、農家やメーカー、研究機関と手を携え、労働環境の改善やビジネス面のメリットを創出していきたいと考えています」(石橋さん)。
SOLAMENT®とは?
SOLAMENT®
住友金属鉱山が2004年に発明し、国内外に特許を持つ近赤外線吸収ナノ微粒子を使ったレアメタル由来の素材テクノロジー。自動車や建築物の窓ガラスなどに活用されてきたが、気候変動などの社会課題に生かすために2023年にリブランディング。繊維分野での活用を進め、2024年に発表した羽毛を使わないダウンジャケット「DOWN-LESS DOWN JACKET」が大きな話題を呼んだ。その知見は農業分野にも生かされている。
ポロシャツ
タープ
晴雨兼用傘
SOLAMENT®の仕組み
太陽光の波長のうち、熱をもたらす近赤外線を受け止めて遮断、その一方で可視光線は通す素材がSOLAMENT®︎。この性質を農業用ネットに応用したのが「青天張」だ。
改革1
覆っても光合成を妨げない
宮崎県のいちご栽培でも活躍中!
熱線遮断効果のあるSOLAMENT®を練り込んだ特殊な糸を用いて織物化したのが青天張。光合成に必要な可視光線を通すので従来の遮熱ネットよりも作物が育ちやすいのが大きな特徴だ。
上図のとおり、可視光線と熱をもたらす近赤外線との透過/遮断の効果の違いは明らか。各地で行っている実証実験では体感温度の差はもちろん、地中温度では8度もの差となった。
透過率と遮熱率が異なる5タイプのネットを展開し、トマト、ピーマン、ほうれん草、イチゴなど、多彩な作物の環境に合わせて使い分けられる。
改革2
高温障害を防ぐ遮熱テクノロジー
トマトの温度の違いに驚きました
北海道余市町でトマトを栽培する中野ファームの中野勝さん。北海道でもこの10年でどんどん日差しが強くなってきた実感があり、従来のセオリーが通用しなくなっている。そんな中、目に止まったのが青天張。
ジリジリとした暑さが軽減!
「北海道でも夏場はハウスにネットをかけなければ、トマトが焼けたり、適切な温度管理ができなかったりと、様々な障害が発生しますが、その解決に役立てています」(勝さん)。また、作業中の暑さが抑えられていることも実感している。
改革3
導入が簡単!
ハウスに被せる or 内張するだけ!
設置は通常の遮熱ネット同様に、ハウスの上からかける、または内側から張るだけでOK。特別な工事が不要で、寒い時期は外しておける。また、ロール状の仕組みを構築すれば時間帯による光のコントロールも可能になる。SOLAMENT®の効能は長期間持続するので、ネット自体の寿命が来るまで交換する必要もない。塗料タイプの遮熱資材のように都度落とす必要もなく、メンテナンスも他の遮熱ネットと同様なので、違和感なく導入できる点もメリット。
教えてくれた人
住友金属鉱山株式会社
機能性材料事業本部 イノベーション戦略統括部
石橋佳祐さん
1590年に創業、銅製錬の事業から始まった住友金属鉱山にて新規事業開発を担当。チームリーダーとしてSOLAMENT®のブランドプロジェクトを推進する。
問い合わせ
文:本多祐介
AGRI JOURNAL vol.37(2025年秋号)より転載
Sponsored by 住友金属鉱山株式会社