注目キーワード

道工具・資材

暗渠排水材「ドレインベルト」の実力が判明。排水性の高さと目詰まりのしにくさを実感!

前号にて、鹿児島県の喜界島で、島で共通する課題「土壌の排水性」を改善すべく、新しい暗渠排水材「ドレインベルト」を導入した2人の生産者を紹介した。今回は、その続編。導入から半年余りを経て感じた効果をお伝えしよう。

▷ 関連記事:喜界町で実践する新しい排水対策。目詰まりしにくい暗渠排水材「ドレインベルト」に迫る

<目次>
1.ドレインベルトとは
2.適期の定植が可能になり今後の生育と増収に期待!
3.長期間安定して機能するから次の世代で確実にペイする
4.導入後3ヶ月、ここが変わった!

 

ドレインベルトとは
幅20cm、厚さ2mmの軟質ポリ塩化ビニル製の板状のシート。これを塩ビ製の主管の両側に這わせ主管に接続して使う新しい暗渠排水資材。

(左)土壌中の水分は表面張力により、ベルトの切れ込みに入り込んでいく。
(右)水は毛細血管現象によりベルトの切り込み奥に到達し、切り込みに沿って、主管に流れる。不純物は重力により土壌へと返っていく。

ベルトから主管には、サイフォン現象が利用される。だから目的地点(主管)まで、途中で出発地点より高い地点があっても水を導くことができる。

 

適期の定植が可能になり
今後の生育と増収に期待!

お話を聞いた人

園田裕一郎さん

ミカン(島固有種)を1ha、パッションフルーツ・メロンを27aのハウスで栽培。自社で加工品も生産して販売する他、島外の物産展に出品するなど、次々と新しいことに挑戦している。喜界町4Hクラブ会長。

最初にご紹介するのは、かんきつ類の栽培の傍ら、ハウスでパッションフルーツとメロンを中心に栽培している園田裕一郎さん。27aのハウスのうち、特に排水性が悪い5aでドレインベルトを施工した。導入から約半年が過ぎた今、その効果を聞いた。

「うちのハウスは盆地にあるため、雨が降ると排水管から水が出始めるのですが、雨が止んで時間が経ってもしばらく出続けます。どうやら周囲の水が集まっているようです。あとは、潅水した時も水がでてますね。余分な水があれば確実に排水してくれます」(園田さん)。

「今年はパッションフルーツを終えたら、すぐに機械を入れて耕運できました。適期に定植できるから、収量も増えると期待しています」(園田さん)

園田さんはパッションフルーツの収穫を終えるとメロンを定植するのだが、一部圃場の排水性が悪いため、雨が降ると機械を入れることができず耕運が遅れ、定植が遅れ、生育が遅れる、という悪循環に陥っていた。

「今年はトラクターでスピーディに耕運できました。定植はこれからですが、適期に実施できますから、収量増に期待しています」(園田さん)。

ご覧の通りドレインベルトの排水には土砂が混ざらない。有孔管資材と比較して遥かに長持ちする。

園田さんは「出てくる水が透明だった」とも語った。排水に土砂が混ざらないのは、ドレインベルトならではの特徴だ。「サイフォン現象って本当なんですね! 主管の周囲の土が減らないから、安心して土づくりを継続できます」と、自然の原理を利用した排水効果に太鼓判を押す。

気になるコストパフォーマンスについては「うちは比較的高単価な作物なので、作業の効率化や収量増を勘案すれば、5年でペイする」と話す。

「ただ、私と開さんは町から助成金をいただきました。その分、島外を含めて多くの農家に情報提供して、恩返ししたいです」(園田さん)。

長期間安定して機能するから
次の世代で確実にペイする

お話を聞いた人

開孝行さん

サトウキビを24ha・約140枚の圃場で栽培している開孝行さん。奄美群島糖業振興会主催の「第1回キビ1グランプリ」で最優秀賞を受賞。作業の機械化やデータに基づく計画的な土づくりなどに積極的に取り組む。

喜界島でドレインベルトを導入したもう1人は、24haの圃場でサトウキビを生産している開孝行さん。排水性が極めて悪い一部の圃場(60m×5m)で施工した。そこは根腐れが起こり、草丈は伸びず、収量もサッパリ。ハーベスターが入るのも難しかった場所だ。

「収穫して株が残っている状態で施工して、土砂を戻してキャタで踏みました。ここだけは湿気に強い品種を植えているのですが、もう背丈より高く育っています。排水性が改善されたので、次からは従来品種を植える予定です」(開さん)。

従来品種は湿気には弱いものの収穫の後作業の効率と単収が良いから、従来品種を植えられるメリットは大きいのだという。

費用対効果については「ドレインベルトは50mで約20万円。施工は主管のみ傾斜をつけて設置する必要がありますが、ベルトの設置には精度を求められません。時間と重機さえあればDIYも可能だと感じます。DIYで施工すれば5年、外注しても10年で元がとれますね。私は息子の代で元がとれればと考えて自費で施工する積もりでしたが、幸いなことに町が助成金を出してくれました。感謝していますし、しっかり結果で応えていきます!」(開さん)。

ドレインベルト+パイプの模型で奄美大島の仲間に仕組みを説明する開さん。

園田さんと開さんは、4Hクラブの会員である。喜界町農業振興課の森卓人さんは「排水性を改善したいというニーズは、喜界島の外にもあります。そこで奄美大島の4Hクラブに声を掛けて、大島地区農業青年クラブが主催し、古河産業が協力し勉強会を開催しました」と話す。

奄美大島の飯田圭太郎さんも、勉強会で製品に興味を持った一人。飯田さんの露地ライチの圃場は元々は水田だったため、特に水捌けが悪くて悩んでいるという。開さんが背中を押すように、ドレインベルトの効果をまとめてくれた。

「排水性に悩んでいるなら、入れるべきです。もちろん土づくりは大切ですが、限界があります。ドレインベルトを導入すれば、適期管理や機械導入による効率化が実現します。最終的には必ず元がとれるはずですよ」(開さん)。

 

鹿児島県の4Hクラブを通してドレインベルト導入検討が広がってます!
大島地区青年クラブの皆さんと、園田さん(前列右端)、全国4Hクラブ会長 前田さん(前列中央)、開さん(中列右から2番目)、喜界町の森さん(後列右端)、奄美大島の飯田さん(後列左から2番目)。

導入後3ヶ月、ここが変わった!

期待以上の排水効果を実感!
「雨が降った時や潅水時に、しっかり排水してくれているのを実感しています」と園田さん。
これまで排水性が悪く、雨が降ると機械を入れることができず耕運が遅れていたが、今年はミニトラクターでスピーディに耕運できた。

パイプの目詰りが起きる不安がない!
表面張力・毛細管現象・サイフォン現象という自然の原理を利用して排水する施工方法のため、目詰まりがしにくい。「主管の周囲の土が減らないから、安心して土づくりを継続できます」(園田さん)。

高いコストパフォーマンスが期待できる!
喜界島では助成金を活用して導入をしたが、「ドレインベルトは50mで約20万円。時間と重機さえあればDIYも可能だと感じます。DIYで施工すれば5 年、外注しても10 年で元がとれますね」と開さん。

問い合わせ

古河産業株式会社
担当:関根
TEL:090-5370-3153


文:川島礼二郎
撮影:株式会社LaTo

AGRI JOURNAL vol.37(2025年秋号)より転載

Sponsored by 古河産業株式会社

アクセスランキング

農業機械&ソリューションLIST

アクセスランキング

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.37|¥0
2025/10/01発行

お詫びと訂正