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GoogleのAppSheetでオリジナルアプリを作ろう!【応用編】必要なデータをグラフで表示する #7

ベンチャー企業出身農家のコラム『マシュー農LABO』。圃場管理や収穫記録を一括管理できる「AppSheet」で実際にアプリを構築しよう! 今回は応用編。実際のデータをグラフでわかりやすく表示する方法を解説。

<目次>
1.AppSheet構築の基本をふまえてアプリをもっと使いやすく見やすくしよう!
2.農業経営に必要なデータの優先順位は? 蓄積したデータを“使える”データに
3.再度確認! アプリとデータベースの関係を理解しておこう
4.GeminiとExcel関数を使いこなしてスプレッドシートのデータを加工しよう
5.データの準備ができたらAppSheetでデータを見やすく表示する

 

AppSheet構築の基本をふまえて
アプリをもっと使いやすく見やすくしよう!

こんにちは!GOOD PEOPLESのマシューです。

前回は、GoogleのAppSheetについて、エクセルやスプレッドシートからアプリを構築する方法を解説させていただきました。

自作のアプリ?!忙しいしそんなの無理だよという方にこそぜひ読んでいただきたいです。

思っている以上に簡単にみなさまの農作業のデータ入力と確認を効率化することができますよ。

前回記事▷GoogleのAppSheetでオリジナルアプリを作ろう!【導入編】スプレッドシートで土台を作る

今回は前回のAppSheet構築の基本を踏まえて、もう少しアプリを使いやすく、見やすくするための応用編になっています。

僕の好きなデザイナーさんの言葉に「極めれば自由になれる」という言葉があります。

農業もどんな職業も同じだと思いますが、極めるまでに大変な時間と努力が必要ですが、極めれば自由になれます。

そのためには日々の積み重ねしかありません。一緒に一歩前進していきましょう!

それでは、さっそく今回も一歩を進めていきましょう!!

農業経営に必要なデータの優先順位は?
蓄積したデータを“使える”データに

今回の応用編のために前回記事で作成したアプリにデータを入力しました。

データの入力がしやすくなり、スプレッドシートに入力したデータが蓄積されていく形ができました。

入力はしやすくなりましたが、このデータを活用するにはもう一歩工夫が必要になります。

アプリやテクノロジー、デザインには蓄積したデータを”使える”データに変換してくれる力があります。

今のままではパット見て収穫量がわからない状態です。

どの圃場でどれだけ収穫があるのかを確認するためには、入力したそれぞれのデータの詳細画面に飛んでから確認するか、データベースのスプレッドシートに戻って確認する必要があります。

これでは、アプリより紙で記録したほうがいいじゃんと言われそうですし、使えるデータとはまだ言えない状態です。

ここで、一度立ち戻って確認してみてください。

あなたが、本当に必要としているデータはなにか? 農業経営に必要なデータの優先順位はなにか?

この本質を見失わないようにしながら、アプリの構築を進めていきましょう!

大切なのはなんでもかんでもグラフ化したり、見る画面を増やさないということです。
アプリの構築を進めていくと、

お?!こんなこともできる!あれもこれも入れておこう!

など、どんどん要素が膨らんでいって結局なんのためのアプリなのかがぶれてしまい、使いにくくなってしまうことが多々あります。

使える機能や必要な画面以外は作らないということを肝に命じてください。

今回作成したアプリの目的は
①圃場ごとの収穫量の確認
②圃場別の反収の確認

の2点になります。

この2つの目的を達成するために、アプリを使いやすくしていきたいと思います。

再度確認!
アプリとデータベースの関係を理解しておこう

次に進む前に、前回の記事を踏まえて改めて確認しておきましょう。

アプリはデータを簡単に入力して、見やすくするためのツールです。

入力したデータはデータベースであるスプレッドシートに蓄積されており、どのようなデータを見たいかによってデータベースで蓄積されたデータを編集する必要があります。僕はこれをデータを加工すると呼ぶことにしています。

少し難しい言い方になってしまいましたが、具体的に説明します。

今回の目的である、
①圃場ごとの収穫量の確認
②圃場別の反収の確認
この2つを実現するためには、そのデータを表示するために、スプレッドシート内で入力したデータを加工する必要があるということです。

蓄積したデータを材料とするとそれを調理して食べれる料理にするといった感じです。

今、入力したデータを考えてみましょう!

日時、圃場、収穫量

この3つのデータが入力されています。

その上で確認したいのは圃場毎の収穫量圃場別の反収になります。

まず、圃場毎の収穫量に関してはバラバラの日時で入力されたデータを圃場毎にまとめて、合計の収穫量を出すという加工が必要になります。

圃場別の反収に関しては、圃場毎の収穫量で加工したデータを圃場の面積で割ることで反収を割り出すことが可能になります。

この加工をスプレッドシートで行って、アプリで見た目を調整する。ということです!

必要なデータを整理する

スプレッドシートでデータを加工する

Appsheetで見た目を調整する

この流れを理解することがAppsSheetを利用するうえで大切になりますのでぜひ頭に入れておいてください。

GeminiとExcel関数を使いこなして
スプレッドシートのデータを加工しよう

まずは、スプレッドシートに入力されたデータをもとに、データの加工を行います。

どうやってスプレッドシートに移動するか迷子になってしまった場合、googleドライブの検索画面でアプリ名で検索するか、Appsheetからもデータベースを確認することができます。

左のメニューDataからシート1と記載されている箇所を押下してください。

上記の画面の赤枠部分 View sourceのボタンをクリックすることで、データベースのスプレッドシートを確認することができます。

スプレッドシートの確認ができ、入力したデータが入っています。

次に、データ加工用のシートを作成してください。

スプレッドシートの使い方の解説は省略しますが、エクセルなどを使い慣れている方であればすぐ理解できると思います。

詳しく知りたい方はこちらを参照ください。

新しく作成したシートの名前は、後でわかりやすいように設定することをおすすめします。

今回は圃場別収穫量としました。

そして、先頭行(一番上の行)にはデータのタイトルを記載します。わかりやすければ何でも構いませんが、会社やチームで利用する場合は皆に伝わる共通言語を意識して設定してください。

A列にはアプリに設定した圃場名を記述します。ここには皆さまの圃場名が入力される場所になります。

次にB列ですが、シート1(こちらのシート名も元データや全データなど適宜ご変更ください)から圃場名毎に合計を計算する関数を入力する必要があります。

関数がわかる方はスムーズに進めると思いますが、農家で関数がわかる方は少数だと思います。

ですが、全く心配ありません。今はAI時代です。

こういうことしたいんだけど、わからない。そんな時こそAIの力をどんどん借りましょう!

googleには無料で利用できるAIのGeminiがあります。

以下のように質問を作成しました。

シート1に日時、圃場、収穫量を記載しています。
圃場別収穫量という別シートに圃場毎に収穫量をまとめて表示したい関数を作成してください

その回答がこちらです。

はい、承知しました。
シート1のデータを圃場別に集計して、別のシートに表示する関数についてご案内します。

この場合、Excelの**SUMIF**関数を使うと便利です。SUMIF関数は、指定した条件に一致するセルの合計を計算する関数です。

1. 圃場別収穫量シートの準備
まず、集計結果を表示する「圃場別収穫量」シートを以下のように作成します。
A列: 圃場名(例:A圃場、B圃場、C圃場)を入力します。
B列: 各圃場の収穫量合計を表示するセルとします。

2. SUMIF関数の入力
「圃場別収穫量」シートのB列のセル(例:B2)に、以下の関数を入力します。
=SUMIF(Sheet1!B:B,A2,Sheet1!C:C)

この関数の意味は以下の通りです。

「Sheet1!B:B:」 これは、集計する条件(圃場名)が入力されている「シート1」のB列全体を指定しています。Sheet1!と付けることで、別のシートを参照していることを示します。

「A2:」 これは、検索条件となるセルです。「圃場別収穫量」シートのA2セルにある圃場名(例:「A圃場」)と一致するものを探します。

「Sheet1!C:C:」 これは、合計する値(収穫量)が入力されている「シート1」のC列全体を指定しています。

どうですか?難しいと思っていた関数も、こういうことをしたいということを言葉にできさえすれば、AIが補完してくれますのでぜひ挑戦してみてください。

上記のアドバイスを参考に、関数を設定すると以下のように圃場毎に収穫量を計算したシートができます。

作成した関数を記載しておきますので参考にしてください。

=SUMIF(‘シート1′!B:B,A2,’シート1’!C:C)

このように、収穫量を圃場毎に計算してくれるシートが完成しました。

合わせて、②の反収を計算するシートも作成しちゃいましょう!
このシートをコピーして利用しましょう!

アプリを作成する際には、どれだけ楽できるかが大切です。自動化できることは可能な限り自動化する、大切なことだけを人間ができるようにしましょう。
特に計算などは人間は間違えることがあるので、自動化したほうがいいです。

コピーしたシートには圃場別反収と名前をつけました。
あとは、面積を入力する列を挿入して、その横に反収を計算する列を作成します。

畑の合計の収穫量を面積で割ることで、1反あたりの収穫量を割り出すことができます。

上記の例で言うと、A圃場の1反あたりの収穫量は2500kg(想定値)ということになりますね。

ここまでで、データの加工が完了して、アプリで表示する準備が整いました。

データの準備ができたら
Appsheetでデータを見やすく表示する

データの準備ができましたら、AppSheetに戻って表示の設定をはじめましょう!

ステップ1.シートをDataに登録する

左側メニューのDataを押下してください。すると新規で作成したシートの〈圃場別収穫量〉と〈圃場別反収〉が表示されているかと思います。
※表示されていない方はページをリロードしてみてください。

新しく追加したシートをAppSheetに登録する必要があり、どちらのボタンも押下してシートを登録してください。

上記のように新規で作成したシートが登録されればOKです。

ステップ2.UXで見た目(View)を作成する

データの登録が完了したら、いよいよデータの見た目を作成します。

メニューの①UXから②New Viewを押下すると、ポップアップ画面が出てきますので③のCreate a new viewを押下してください。

見た目の設定をしていきます。赤枠の部分を設定していきましょう。

「For this data」 表示するデータを設定します。ステップ1で設定したDataメニューで登録が完了していれば、新規で作成したシートが表示されます。

「View type」 こちらが見た目を設定する部分になります。グラフだけではなく、たくさんの見た目が設定できるようになっていますので見やすいものを設定してみてください。今回はチャートを設定しました。

「Chart type」 チャートの種類を設定することができます。今回は棒グラフを設定しました。

ここまで設定して、右のアプリ画面を確認してみてください!

いかがでしょうか?見づらかったデータが、グラフで表示されひと目で圃場別の収穫量がわかるようになりました。

同じように、反収もNew Viewから設定をしてみてください。

上記のように、スプレッドシートで加工したデータが見やすく表示されるようになりました。

感動です。。これがAppSheetのパワー、テクノロジーのパワーです!ぜひ活用していただけると幸いです。

最初からうまくいかなくても大丈夫です。アプリを制作するうえで、トライ&エラーの精神を忘れないでください。

農業も同じかと思いますが、アプリは農業と違って何回でも失敗ができます。

うまくいかなくても、前述したGeminiに聞いたり、ネットで調べたり諦めなければ必ず思い通りのアプリを構築することができます。

そして、身についた考え方やスキルはこれからの農業経営を豊かにしてあなたの人生も豊かにしてくれることは間違いありません。

ぜひAppSheetで日々のデータを価値あるデータにしていきましょう。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。今日もGOODな一日を!

次回予告:GoogleのAppsheetでオリジナルアプリ制作!【最終回】作成したアプリをスマホから使えるようにする

 

プロフィール

藤井マシュー武雄

宮崎県新富町にて、7年前に就農。現在はさつまいもを6ha、大根や人参などの露地野菜を1ha栽培しながら、さつまいも観光農園「GOOD TIME FARM」を運営。収穫する喜びを多くの人に体験してもらおうと、日々活動しています。GOOD PEOPLES代表。
HP:https://gdps.jp/

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