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2025年「今年の花」決定!フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA 2025

全国、及び輸入品を含む7万点以上の候補から、その年のトレンドが選ばれる「フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA」。第21回を迎えるこのたびは、"調和"が新たに基準となって、ナチュラルでふんわりとしたデザインの4点が選出された。

<目次>
1.トレンドに新たな基準 2025年「今年の花」決定!
2.【最優秀賞】枝物「七立栗(ななたてぐり)」
3.【優秀賞】切花コチョウラン「サーフソング」 
4.【特別賞】ルドベキア(キク科)「ヘンリーアイラーズ」
5.【新商品奨励賞】キンギョソウ「サクラホイップ」

 

トレンドに新たな基準
2025年「今年の花」決定!

その年に流通した花きの中から高く評価された品種に与えられる「フラワー・オブ・ザ・イヤー OTA」。今年も全国、および輸入品を含む7万点以上の候補から4点の受賞花きが選出された。

今年の受賞花には、「ナチュラルでほかの花と親和性の高い素材感」と、「地域ブランドの創出」の点で評価される素材がそろった。強いトレンド性よりも、”使われ続ける理由”を持つ柔らかな花材が評価された年だったといえる。
 

ポイント1:調和と自然観を重んじる素材トレンド

派手さよりもやわらかく上品なトーンや、野趣味あるナチュラルな雰囲気が現在のトレンドにマッチ。ニュアンスカラーや自然体のフォルムを備えた素材が引き続き注目され、量感や枝の動きと言ったテクスチャーも自然志向の価値観と親和性が高く、多用された。コチョウラン”サーフソング”のような小輪・オレンジピンク~ベージュ系やキンギョソウ”サクラホイップ”、ルドベキア”ヘンリーアイラーズ”もデザインに溶け込みやすく、優しさを感じ、主張しすぎない存在感が魅力だ。

ポイント2:地域資源の再定義とデザイン的価値を両立

地域資源をデザイン価値に転換し、地域ブランドとトレンドをつなぐストーリー性が求められている、ポイントは“物語を持つ素材”。見た目だけではなく、産地の個性がデザイン価値に直結する時代。七立栗のようなオリジナル素材は、地域ブランドが「流行の文脈」に接続し、ローカル×トレンドという成功モデルになっている。
 

~フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA~とは

年間の取引データに基づく統計分析、及び大手バイヤーによる投票で、トレンドを的確に捉えた品種が入賞される。品質のみならず、流通量や価格などの買いやすさ、色・形などのトレンドを含め、流通の観点から多角的、且つ総合的に評価された結果が反映されているのが特徴。

 

【最優秀賞】
枝物 「七立栗(ななたてぐり)」

JA高知県七立栗生産組合 さん(高知県)

枝物”七立栗(ななたてぐり)”

高知県幡多郡黒潮町(はたぐん・くろしおちょう)の山中にのみに自生する非常に珍しい種類の栗。小ぶりのイガが一枝に20個ほど連なって実り、独特の愛らしい姿をしている。通常の栗と異なり、一年に七回収穫できることから「七立栗(ななたてぐり)」と名付けられた

「1200年ほど前、道に迷った弘法大師を心深き夫婦がもてなし、その後、裏山にたくさん実をつける栗の木がたくさん生えた」という伝承から、地元では「大師栗」とも呼ばれ親しまれてきた。花き市場では、枝物需要の高まりを背景に地域発のブランド花材として注目を集め、仲卸や小売店からも高い評価を得た。地域ブランドと市場トレンドの双方を捉えた成功例といえる。

出荷期は8月下旬から10月。なお、本賞において高知県から受賞するのは今回が初めてだそうだ。

 

【優秀賞】
切花コチョウラン「サーフソング」

加藤洋ラン園 加藤英世 さん(千葉県)

コチョウラン”サーフソング”

切花コチョウランは輸入品の大輪白系が市場の主流を占める中、加藤洋ラン園は、色付きのミディタイプ約30種類を軸に国内生産をリードするトップブランドとして知られる。生花小売店や生花デザイナーから需要の高いニュアンスカラーを積極的に導入し、花束を華やかに仕立てる”マストアイテム”として高い支持を得ている。

「作りやすさ」よりも「市場が求める花」を追求してきた同園は、色幅や出荷時期に徹底的にこだわってきた姿勢がこの度の受賞につながった。また、ギフト需要やサブスクリプションサービスなど、新しい花の消費スタイルに応える生産者としても業界で注目を集めている。

 

【特別賞】
ルドベキア(キク科)「ヘンリーアイラーズ」

JAあがつま草花部会 さん(群馬県)

ルドベキア(キク科)”ヘンリーアイラーズ”

JAあがつまは、業界では全国屈指の草花トップブランド。ルドベキア”ヘンリーアイラーズ”で満を持しての受賞となった。細い筒状の花弁が特徴的で、常に新しい商材を提案するJAあがつまがガーデン素材の中から発掘・導入し、部会の中で生産を拡大したことで大きなヒットに結びついた。

インテリアとガーデン素材のトレンドが均質化する時流を巧みにとらえ、ナチュラリスティックガーデンの要素を切花分野に応用。“窓の外にあった花を、窓の内側で楽しむ花へ”とリポジショニング(再定義)した成功例といえるだろう。

 

【新商品奨励賞】
キンギョソウ「サクラホイップ」

JAいるま野川越市切り花出荷組合「芳華(ほうか)」 さん(埼玉県)

キンギョソウ”サクラホイップ”

キンギョソウの八重(多弁)品種は珍しく、その繊細なペールピンクのグラデーションと新鮮な存在感が高く評価された。これまで全体トレンドをリードしてきた淡く軽やかな色調とタテラインの形を踏まえつつ、本品種は”キンギョソウ”というカテゴリーに新たな価値をもたらした点が特筆される。生産の減少が著しい品目でありながら、この品種の洗練された質感は、装花やディスプレイの現場にも新風を吹き込み、渋滞のキンギョソウのイメージを刷新した。

キンギョソウの受賞は本賞初。カテゴリーの枠を超えた快挙として、今後の切花市場にも大きな影響を与えることが期待されている。

 

【フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA表彰式 開催概要】

◆主催:株式会社 大田花き 
◆運営:株式会社大田花き花の生活研究所
◆開催日時:2025年12月5日(金)朝6時50分から7時00分
◆場所:株式会社 大田花き セリ室にて(東京都中央卸売市場大田市場花き棟内)
◆予想動員:250人から300人(当日のせり参加買参人数の見込み)
◆HPはこちら(本年の結果は12月5日以降に掲載されます)

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