【専門家に聞く】水稲の「再生二期作」の現状と成功のコツ
2026.02.18
近年、最も注目されている水稲栽培技術が「再生二期作」だ。たびたびマスメディアでも取り上げられているから、気になる方も少なくないはず。そこで今回は、農研機構で再生二期作を開発している、農研機構中日本農業研究センター研究推進部技術適用研究チーム主席研究員の中野洋さんに解説していただいた。
1.水稲の再生二期作とは
2.なぜ今、再生二期作が注目されているのか?
3.農業生産現場での普及の現状は?
4.再生二期作の課題は?
5.再生二期作の技術ポイント
水稲の再生二期作とは

水稲の再生二期作とは農研機構が開発・改良している栽培技術であり、収穫後の切株から発生する”ひこばえ”を栽培・収穫する二期作のこと。
通常の二期作で必要とされる二期作目の育苗や移植が不要なため、安定した収量が得られるとともに、生産コストを削減することができる。農研機構では、一昨年(2024年)、関連特許の登録を終え、現在、民間企業、生産法人や農家などへの許諾を進めているとのことだ。
なぜ今、再生二期作が
注目されているのか?

気象庁HPより転載
2025年の日本の平均気温の基準値(1991~2020年の30年平均値)からの偏差は+1.23℃。これは1898年の統計開始以降、3番目の高温でした。
私たちの研究チームでは、約20年前に、地球温暖化による米の品質低下が顕在化してきたことを受け、温暖化を逆手に取った栽培技術を確立できないかと思い、再生二期作の研究・開発に取り組み始めました。温暖化が進むことで、春や秋の気温が高くなり、水稲の生育可能な期間が長くなります。早く移植して遅く収穫できるようになるのです。それを見越して、二回収穫できないか、と考えたものでした。
一方で、近年、温暖化が深刻化したこと、さらに消費者の方の米への関心が高まったことが重なり、再生二期作が注目されているのです。
農業生産現場での
普及の現状は?
当初は西日本が中心でしたが、今では関東地方でも取り組まれる方が増えており、2025年作付けは75ha以上と前年の2倍超えで広がりました。農業生産者さんが個人で挑戦する事例だけでなく、産地JAによる実証実験が全国各地で始まっています。
また、米の卸売業者さんがハブとなり私たちと農業生産者さんとを繋ぎ、三者が協力しながら取り組んでいる事例もあります。将来的にも温暖化は進む見通しですから、今後も益々、再生二期作は広がっていくと期待しています。
再生二期作の課題は?
再生二期作には課題もあります。1つは、好ましい高さである40cm程度に高刈りするのは、汎用コンバインが必要である、という点。大規模生産者ですと両方お持ちの方も少なくないと思いますが、自脱型で取り組みたい、という声が多く届いています。
もう1つの課題が品種です。農研機構では主に「にじのきらめき」を使用して良好な結果を得ていますが、他の品種で取り組みたい、という声をいただいています。そこで現在、汎用コンバインと自脱型コンバインの使い分けや、「にじのきらめき」以外の品種での再生二期作に関する情報を整理しており、遠からぬうちに発表いたします。

「にじのきらめき」の一期作目の収穫風景。
また、二期作目の収穫までの水の確保も課題となります。団地化して用水を確保できれば理想的ですが、そう簡単に解決できない場合もあるでしょう。浜松市で再生二期作に取り組んでいる農業生産者さんは、用水路からポンプで吸い上げて給水していました。
再生二期作の
技術ポイント
再生二期作で収量を上げる鍵となるのは「でんぷん」と「葉」です。一回目の収穫時に株に十分な炭水化物を残して葉を多く保持させることで、二期作目の芽出しと生育を安定させることができます。
実際に行うのは、一期作目の早期移植(早植え)と高刈り(40cm)です。早植えとは、(地域や品種によりますが)、一期作目を通常より早く4月に植えること。これにより株が大きく育ち、体内にでんぷんを多く蓄えるため、二期作目の生育に有利になります。高刈とは、一期作目を40cm程度に高く刈ること。これにより株に「でんぷん」と「葉」が多く残り、再生する力が高まります。

4月植え+高刈が最も生育が良く、5月植え+低刈が最も生育が悪い。
また、品種選びも重要です。農研機構が再生二期作で主に使用している多収品種『にじのきらめき』は、二期作目でも安定した収量が確保しやすく、また私達の取り組みを参考にしやすいので、オススメします。
この人に聞きました
農研機構中日本農業研究センター
研究推進部技術適用研究チーム
主席研究員
中野 洋さん

取材協力・画像提供:農研機構中日本農業研究センター
取材・文:川島礼二郎
AGRI JOURNAL vol.38(2026年冬号)より転載
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