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資源循環で農業の持続可能性を支える!”バイオマス産業都市” 佐賀市の取組みとは?

佐賀県佐賀市では、地域の廃棄物をバイオマス資源として活用し、農業をはじめとした産業を発展させる取組みを進めている。資源循環による持続可能な産業づくりをテーマに、2021年3月19日にオンラインセミナーを開催した。

既存施設の活用と企業間連携で
サーキュラエコノミーを実現

2014年に「佐賀市バイオマス産業都市構想」を策定した佐賀市。地球に優しい新たなビジネスモデルの創出を目的に『CCCS(Co-Creation Circular eco Saga)』というプラットフォームを運用している

まずは、佐賀市バイオマス産業推進課 課長 江島英文氏が、佐賀市の取組みを紹介した。

「『佐賀市バイオマス産業都市構想』の軸は2つ。まずは、清掃工場と下水浄化センターを活用していくこと。既存施設でバイオマス収集を行えば、施設整備にかかる費用を軽減できます。また、市民に新たな負担をお願いすることもありません。

そして、市が仲介役を果たして企業間の連携を実現すること。単独の企業活動では、廃棄物・副産物を“処理”するところを、他企業との連携によって“資源化”していくことができます。双方の企業の経済的メリットを見出しながら、地域産業のさらなる発展を推進しているのです」。

佐賀市清掃工場では2016年、日本で初めてごみ焼却施設からCO2を分離回収設することに成功している。下水浄化センターでは、電力自給率100%を目標に据え、下水バイオマス資源から堆肥をつくる施設も稼働中。

こうしたサーキュラエコノミーの具体化と農業のサステナビリティを考える機会として、今回のセミナーが開催された背景があるようだ。



農業の24次産業化で
地方から全国、そして世界へ

続いて、Global Labo SAGA 代表であり、佐賀大学客員教授の板越ジョージ氏が登壇。「新たな価値を共創するアグリビジネス」と題した基調講演が行われた。

板越氏は日本のクラウドファンディングの第一人者としても知られ、全国でクラウドファンディングのコンサルティングを提供してきた経歴を持つ。特に農業においては、6次産業に加えて新たに「24次産業化」を提唱している。講演では、クラウドファンディングの基本から、農業発展への応用までを語った。

「クラウドファンディングには、支援者へ物品などの提供を行う『購入型』や、基本的に見返りのない『寄付型』などいくつかの種類があります。

日本のクラウドファンディングサイトのほとんどは『購入型』です。ただ、クラウドファンディングの成功とは、お金の調達だけでなく、消費者とつながり、長期的なビジネスを実現していくことにあると思います。そこで、想いに共感してもらう『共感購入型』という呼び方がふさわしいと再定義しました。

では、日本の農業を発展させるためには何ができるのか。現在、1次産業・2次産業・3次産業を掛け合わせた6次産業は定着してきています。その6次産業に、DX(デジタルトランスフォーメーション)やクラウドファンディングを4次産業として掛け合わせる24次産業により、地方からの全国展開や海外進出をめざせると考えています」。

スマート農業の実施で作業負担の軽減や効率化が進み、いま、日本の農業のイメージは変わりつつある。24次産業によって地域ブランドが向上すれば、ますます農業の未来に期待が寄せられそうだ。

次世代の農業を考える
パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、最前線で活躍する多彩なパネリストが登壇。A-noker、三井住友銀行、三井住友海上火災保険、誠和、テラスマイル、天地人、クラファン総研、計7社によってトークが繰り広げられた。

農業を切り口にトークテーマを設定。「環境への調和」「テクノロジーによる農業のサポート」「人やお金の経営資源を呼び込むためには」という3つの観点で、各社が課題解決のモデルケースを提示した。

CCCS公式サイトでは、セミナーのアーカイブ配信を無料公開。また、各社のプレゼン資料をダウンロードすることもできるので、ぜひチェックしていただきたい。

共に創る未来の産業 アーカイブ配信

 


垣根を超えて人々が集まる
「CCCSすごかガーデン」構想

セミナーのまとめとして、佐賀市バイオマス産業推進課 課長 江島さんは次のように語った。

「豊かな農業環境と資源循環に加え、多様な人がつながることで佐賀市の農業はさらに強くなれると考えます。未来産業を共創していくための構想のひとつが、『CCCSすごかガーデン』です。

研究スペースやワークスペース、市民農園併設のレストランや交流スペースを設けたガーデンをつくり、農業に関わるコミュニティの輪を広げていきたいと計画しています」。CCCSでは、すごかガーデン構想の実現を一緒にめざすメンバーや、将来的な利用を検討する人も募集しているとのこと。

CO2回収設備と活用企業を
バーチャル現地視察

最後に、佐賀市清掃工場の様子をバーチャルで視察。二酸化炭素分離回収設備の仕組みが解説され、設備が稼働する様子が見られた。

また、清掃工場から供給されるバイオマス資源を有効活用している例として、2企業を紹介。CO2で微細藻類を培養し、抽出したアスタキサンチンからサプリメント・化粧品を製造する「アルビータ」、排熱とCO2を利用してバジル栽培を行う「グリーンラボ」の取組みを動画で解説した。

SDGsの目標達成のために農林水産省もバイオマス活用を推進しており、バイオマス産業都市として佐賀市は全国の一歩先を行く事例だと言える。今後、全国の自治体へノウハウの横展開が有望視されそうだ。

DATA

CCCS(Co-Creation Circular eco Saga)すごかガーデン


文:齊藤美幸

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