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【2026年度】施設園芸・ハウス栽培で活用できる補助金ガイド

施設園芸やハウス栽培には、初期投資や設備更新、燃料費など多額のコストがかかる。国では今年度も補助制度が用意されており、これらを活用することで経営基盤を強化できる。本記事では主要な補助金制度をわかりやすく解説する。今年度の申請をすでに締め切っている補助金もあるが、2026年度の事前準備として把握しておこう。

メイン画像:イチゴの施設栽培(写真提供 Shutterstock.com)

<目次>
1.強い農業づくり総合支援交付金
2.産地生産基盤パワーアップ事業
3.施設園芸セーフティネット構築事業
4.ものづくり補助金も施設園芸で活用できる
5.補助金活用には早めの相談を

強い農業づくり
総合支援交付金

農林水産省の「強い農業づくり総合支援交付金」は、産地の収益力強化と持続的発展を目指す総合的な支援制度だ。農業者や農業者で組織する団体が活用できるのは2つのタイプがある。

強い農業づくり総合支援交付金の事業イメージ(出典 農林水産省)

 

2.食料システム構築支援タイプ

食料システムの構築に向けて、生産から流通までの課題解決に必要なソフト・ハード両面の取組みを支援する。交付金の申請にあたっては食料システム構築計画等の承認が必要となる。

食料システム構築計画のイメージ(出典 農林水産省)

交付率:1/2以内または定額
交付対象経費の例
・生育予測システム等の導入
・新たな栽培技術等の普及・導入
・低コスト対候性ハウスなどの生産技術高度化施設の整備
問い合わせ先:各地区の農政局
申請期間:2025年度は申請終了、2026年度も実施予定

 

2.産地基幹施設等支援タイプ

産地の中核を担う農業法人や農業者団体による集出荷貯蔵施設、冷凍野菜の加工・貯蔵施設などの産地基幹施設の整備を支援する。人材育成に必要な取り組みも支援対象だ。

産地基幹施設等支援タイプの取り組みメニューと対象施設(出典 農林水産省)

交付率:1/2以内等
交付対象経費の例
・スマート農業実践施設の整備
・集出荷などの産地管理施設
・戦略的な人材育成や収益化強化に必要な施設整備
問い合わせ先:事業実施計画を、市町村を経由して都道府県へ提出
申請期間:2025年度は申請終了、2026年度も実施予定

 

産地生産基盤
パワーアップ事業

農林水産省の「産地生産基盤パワーアップ事業」は収益力強化に計画的に取り組む産地を支援する制度。高性能な機械・施設の導入や栽培体系の転換を支援する。この事業では、生産コストの10%以上削減、販売額や契約栽培率の10%以上向上など、具体的な成果目標の設定が求められる。以下の3タイプがある。

産地生産基盤パワーアップ事業のイメージ(出典 農林水産省)

 

2.新市場獲得対策

海外市場や加工・業務用等の新たな市場のロット・品質に対応できる生産体制の強化を支援する。安定的な生産・供給に向けて、協働事業計画を作成する必要がある

補助率:定額、1/2以内
補助対象経費の例
・生育予測システム等の導入
・新たな栽培技術等の普及・導入
・低コスト対候性ハウスなどの採算技術高度化施設の整備
問い合わせ先:都道府県担当窓口
申請期間:2025年度補正予算に計上、2025年度中に公募開始

 

2.収益性向上対策

生産コストの低減、販売額の増加等の産地の収益力強化に向けた取組を支援する。特に施設園芸においては「施設園芸エネルギー転換枠」が設けられており、燃油依存から脱却し省エネルギー化を図るために必要なヒートポンプ等の導入が支援対象となっている。地域農業再生協議会が作成する「産地パワーアップ計画」に参加する農業者、農業者団体が対象

収益性向上対策で支援対象となる取り組み(出典 農林水産省)

補助率:1/2以内等
補助対象経費の例
・ヒートポンプ
・パイプハウス資材
・低コスト対候性ハウス
問い合わせ先:都道府県担当窓口
申請期間:2025年度補正予算に計上、2025年度中に公募開始

 

3.生産基盤強化対策

新規就農者や担い手に継承するためのハウス等の再整備・改修を支援する。地域農業再生協議会が作成する「産地パワーアップ計画」に参加する農業者、農業者団体が対象

補助率:定額、1/2以内等
補助対象経費の例
・農業用ハウスの再整備・改修
・農業機械の導入、リース導入
・生産技術の継承、普及に向けた取り組み
問い合わせ先:都道府県担当窓口
申請期間:2025年度補正予算に計上、2025年度中に公募開始

生産基盤強化対策の事業活用イメージ(出典 農林水産省)

 

施設園芸セーフティネット
構築事業

施設園芸セーフティネット構築事業」は燃料価格高騰の影響を受けにくい経営への転換を目指す産地を支援する。農業者と国で基金に積み立てを行い、燃油・ガスの価格が一定の基準を超えた場合に補塡金を交付する。対象燃料はA重油、灯油、LPガス、LNG。施設園芸農家3戸以上または農業従事者5名以上で構成する農業者団体等が対象で、3年間で燃料使用量を15%以上削減する計画の作成が必要となる。

問い合わせ先:日本施設園芸協会各都道府県協議会
申請期間:2025年度は申請終了、2026年度も実施予定

補填金=補填単価×当月燃料購入数量×70%

施設園芸セーフティネット構築事業加入に向けたヒント(出典 農林水産省)

ものづくり補助金も
施設園芸で活用できる

全国中小企業団体中央会の「ものづくり補助金」は、革新的な製品・サービスのための開発の設備投資を支援する制度だ。農業分野でも多数の採択実績がある。

補助対象経費の例
・生産データ管理のIT化による品質向上と販売拡大
・6次化商品の開発
・スマート農業と低温貯蔵技術による高品質トマト供給システムの開発
・耕作放棄地・休耕田を利用した季節型別農業の実施
・接木ロボットの導入によるリレー生産体制の構築
・夏越し通年栽培による地域密着型高収益トマトビジネスモデルの確立
・高度環境制御による高品質・省コスト・エコロジー型ユリ切り花生産

窓口:ものづくり補助金事務局サポートセンター
申請期間:次回申請期間は2025年12月26日~2026年1月30日

 

補助金活用には
早めの相談を

施設園芸・ハウス栽培の経営強化には、補助金制度の戦略的な活用が有効だ。補助金申請では事業計画書の作成や見積書の入手などが必要で、採択率を高めるには事業の必要性と効果を明確に示すことが重要となる。また、多くの補助金で成果目標の達成が求められるため、実現可能な計画を立てよう。
募集期間は限られており、人気のある補助金は予算が早期に埋まることもある。自分の経営課題に合った補助金を見つけ、市町村や県の農政担当課やJAに早めに相談しよう。

DATA

農林水産省 2025年度強い農業づくりの支援に係る関係通知について
農林水産省 産地生産基盤パワーアップ事業関係情報
農林水産省 施設園芸等燃料価格高騰対策関係
全国中小企業団体中央会 ものづくり補助金総合サイト


取材・文:佐藤美紀

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