ホームセンター各社に聞いた、2024年注目の農業資材[コメリ・カインズ・農家の店しんしん・山新]
2024/02/09
農業機械をはじめとする資材は年々進化しており、市場には新しい商品が次々と投入されている。売れ筋にまつわる近年の動向と注目の商品について、ホームセンターと農業資材専門店にコメントしてもらった。
山新
茨城県水戸市に本社を構える、1869年創業の老舗ホームセンター。各種農業資材から家電・日用品など生活必需品まで、幅広い品をそろえる。それぞれの地域における需要に、きめ細かな対応をすることを心がけている。
山新の注目アイテム
インフィニティ株式会社
AS- ビニールハウスクリーナー
9,900円(税込)
本製品でビニールハウスを洗浄することで、ハウス内の日射量が増え、健やかな作物が育ちやすくなる。また、ハウスビニールを張り替える頻度の低減も可能に。主成分はトウモロコシ等を原料とした植物由来のアルコールや界面活性剤成分など。作物や環境、人体にも優しいのも特長だ。
株式会社誠和アグリカルチャ
ReduSol(レディソル)
オープン価格
太陽光を効果的に反射する遮光剤。水で希釈しハウスの外⾯に均⼀に吹き付けると、ハウスに差し込む日差しが和らぎ、ハウス内の温度を下げることができる。夏場の暑さ対策がしたい人にオススメだ。持続期間は1~3ヶ月。なお、除去剤を使って取り除くこともできる。
COMMENT
株式会社山新
丹下明彦さん
高齢化を背景に、身体面での負担を軽くする商品が、さらに求められるようになるとも予想します。肥効が長く続くため追肥を省ける『一発肥料』や、収穫後に土にすき込める『生分解性マルチ』、振動が少なく体に負担がかかりにくい電動農機に、より人気が集まるでしょう。
大内拓実さん
近年、一年生イネ科雑草「オヒシバ」が各地で繁茂していることから、オヒシバの除去効果が高い除草剤が売れています。従来の主力であったグリホサート系除草剤に対して、抵抗性をもつのがオヒシバ。オヒシバを狙い撃ちで除去しようと、非グリホサート系除草剤を導入する人が増えています。
中根一真さん
こはぜが付いている農作業用足袋は、高齢者にとって脱ぎ履きがしづらいもの。しかし、サイドファスナーが付いたタイプのものは楽に脱ぎ履きができるので、売り上げが伸びつつあります。
農家の店しんしん
顧客第一主義の徹底と、生産原価低減の追求を企業理念とする。18の直営店と20のFC店を配し、生産者ネットワーク拠点として地域密着型サービスを実践。10万点以上の商品のデータベースを有し、播種から収穫、出荷までトータルで需要に応える。
農家の店しんしんの注目アイテム
アイアグリ株式会社
AG 古代の力
店頭価格※
富山県の肥沃な土壌から掘り出された、ミネラル豊富な天然貝化石が主原料。酸度の調整効果、団粒化の促進、通気性・透水性・保肥力の向上が期待できる。苦土石灰よりもカルシウムを多く含み、さまざまな作物の栽培時に有用。また、ケイ酸を多く含むため、水稲栽培時の土づくりにも役立つ。
雪印種苗株式会社
藤えもん®(品種:マッサ)
店頭価格※
一年生のマメ科緑肥作物。ヘアリーベッチのなかでも低温伸長性と耐湿性に優れる品種。窒素集積量が高く、すき込むことで地力の増進が期待でき、化学肥料の使用量低減にも貢献する。藤色の花を咲かせるため、蜜源植物として利用できるうえ景観美化にも役立つ。
※詳細は販売店までお問い合わせください
COMMENT
アイアグリ株式会社
門脇拓郎さん
2021年に農林水産省は、生産力の強化や持続可能性の向上を目指して、「みどりの食料システム戦略」を発表した。「これ以降この戦略の方針に沿った経営を行う農家や企業が見受けられるようになりました」と、門脇さん。また、この潮流は、2022年「みどりの食料システム法」施行もあり今後さらに広がると予想されるという。「『みどりの食料システム戦略』では、化学肥料・農薬の使用量の削減、有機農業の作付面積の増加が目標とされています。この目標を受け、従来の慣行農業から有機農業や特別栽培に切り替える農家は、増加するはず。ついては、土づくりを目的として、天然由来原材料からできた肥料や緑肥が有用な資材として、注目を集めるでしょう」。
ウクライナ危機が勃発したのを機に、化学肥料の価格が高騰していることも、この流れを後押ししている。「化学肥料の値上がりや供給減が起きてから、国内の資源を活用した肥料の売り上げが伸びています」。
カインズ
29都道府県下に239店舗(2023年12月末時点)を展開。「くらし DIY」をブランドコンセプトに、くらしを豊かにする価値ある商品・サービスを開発し、お値打ち価格で 毎日提供する。
カインズの注目アイテム
株式会社カインズ
取っ手が持ちやすいコンテナ ダークグリーン
798円(税込)
持ち手部分が手にフィットする丸みのある形状になっているため、農作物の運搬時に手が痛くなりにくい。また、別売りのコンテナ用OSB天板を載せてテーブルとしても使用可能だ。そのほかの採集コンテナとも相互に重ねるなどして、一緒に使用できるのもうれしいポイント。
アキレス株式会社
ビオフレックスマルチプラス
オープン価格
農業用マルチフィルムの基本的な機能を備えるいっぽう、使用後に土中にしっかりとすき込むと、分解されるという性質をもつ。マルチを剥ぎ取って回収する作業が不要になるうえ、廃棄物の運搬・焼却に伴い排出される温室効果ガスも削減される。従来品よりも保湿効果がアップ。
COMMENT
株式会社カインズ
小山拓之さん
2023年は充電式草刈機、ハンディチェーンソー、遮光ネットがとくに売れました。草刈機は、エンジン式から充電式へと切り替えが進んでいます。また、例年より充電式草刈機の価格が下がりつつあるので、導入する方が増えたと思われます。ハンディチェーンソーは、2022年より認知され始めた新進の商品ですが、低価格で導入しやすいのが魅力。遮光ネットについては、2023年の猛暑が影響し、売り上げが伸びたと考えています。
2024年に人気が伸びるであろう商品についても、教えてもらった。「昨年の夏に記録的な猛暑を経験し、暑さ対策の大切さを実感した方は多くいらっしゃるでしょう。今年の夏も昨年に引き続いて、猛暑・高温への対策商品が売れると思います。また、生分解マルチも、今年さらに売れるであろうと考えている商品です。農業における近年のキーワードは、『環境への配慮』『作業時の負担の軽減』。いずれにも当てはまるのが、生分解マルチです」。
コメリ
それぞれの地域に適した、暮らしを支える商品やサービスを提供。出店地域は46都道府県で、総店舗数は1,200以上にのぼる。各店舗にて、農業、園芸、メンテナンスなど、さまざまな分野の商材を展開している。
コメリの注目アイテム
株式会社コメリ
自走式草刈機 速刈り君
158,000円(税込)
斜面での安全な除草を叶えるため、4WDとオリジナルスパイクタイヤを搭載。広い平地ではもちろん、斜面でもスピーディかつ楽に草刈ができる。レバーを引いて歩くだけで、草刈ができるというシンプルさも利点。また、ハンドルは、作業しやすい高さや位置に調整可能だ。
COMMENT
株式会社コメリ
井上浩一さん
高齢化、人手不足、資材費の高騰が、日本の農業における課題。「このような課題がある今、省力化につながり、なおかつ低コストの商品が、多くの農家さんのニーズに則した商品といえます。実際、こうした商品が市場でも支持されています」と、井上さん。2023年、コメリでとくに売り上げが伸びた商品の一つが、混合堆肥複合肥料だそう。混合堆肥複合肥料は、化成肥料の効果を有するほか、土壌に有機物を供給する働きなどがある。一度の施与で化学肥料と堆肥の双方の効果が得られるため、省力化とコストの低減が期待できる商品だという。
また、圃場における草刈は、農家にとって宿命的で避けられない課題。草刈の作業にかける時間と労力を削減しようと、より良い商品を探し求める農家は数多くいる。「そのようななか、楽に、早く、簡単に草を刈れる機械に人気が集まりました」と、井上さん。2024年も、「省力」「低コスト」を特徴として備える商品が支持されそうだという。
文:緒方佳子
AGRI JOURNAL vol.30(2024年冬号)より転載