施設園芸総合セミナー・機器資材展でみつけた! 注目のイチゴ関連機器資材
2024/05/08
日本施設園芸協会が主催する第45回施設園芸総合セミナー・機器資材展示が、2024年2月に開催された。ここでは同イベントの機器資材展示コーナーから、注目のイチゴ関連機器・資材を紹介していこう。
1.育苗の省力化を実現する「ベリーポップ」シリーズはF1種子イチゴ
2.土詰め不要で底面から安定して吸水するみのる産業の「イチゴエクセルキューブ」
3.数々の実証で効果を確認!世界に広がるカクイチの「ウルトラファインバブル」
4.光の効果を引き出し、生産性を上げるシーシーエスの植物工場栽培技術ソリューション
育苗の省力化を実現する
「ベリーポップ」シリーズはF1種子イチゴ
最初にご紹介するのは、三好アグリテックの出展物。F1種子イチゴ「ベリーポップ」シリーズ。F1種子イチゴとは、種から栽培できる新しいイチゴのこと。イチゴは一般的には、親株を3月に準備してランナー増殖・育苗することで苗を用意して9月頃に定植する。この3月から9月までの収穫期以外のランナー増殖・育苗作業が、イチゴ生産者の負担となっている。
ところがF1種子イチゴであれば、3月から9月までの育苗作業がかなり削減できる。7月頃に406穴プラグ苗が届いてから育苗を開始し、定植を9月に行うというのが多いパターンだという。これにより、
①親株の保管・ランナー増殖が不要
②薬剤散布と潅水の削減が実現
③農薬代・育苗作業人件費・肥料代の削減
というメリットを享受できる。
三好アグリテック営業部の中山真一郎さんは「F1種子イチゴは育苗に関わる作業・人手・コストを大幅に削減できる、つまり省力的で環境負荷が低い、という特徴があります。本格販売を開始したのは2022年ですが、多くの農業生産者様に採用していただいています」と話す。
シリーズを構成するのは、同社オリジナル品種の『ベリーホップ はるひ』と、三重県との共同育成品種である『ベリーホップ すず』の2品種。
「ともに食味も優れているため、直売所や観光農園といった、珍しい品種を増やしたい、という方からも人気です」(中山さん)。
規格は406穴・72穴・ポットの3タイプが用意されている。
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土詰め不要で底面から安定して吸水する
みのる産業の「イチゴエクセルキューブ」
みのる産業が展示していたのは、昨春に発売した「イチゴエクセルキューブ」。同社と材料メーカーのクラレとで共同開発したポリエステル繊維で培土を固化した「エクセルソイル」を培地にした育苗資材だ。「イチゴエクセルキューブ」最大のメリットは、イチゴ栽培における土詰め作業を省力化できること。だが魅力はそれだけではない。「エクセルソイル」は優れた吸水性を有しており、底面からの吸水が可能(写真参照)である。
また、近年の温暖化対策にも有効だ、と話してくれたのは、みのる産業営業開発部固化培土推進グループの林さんだ。「鉢を使用しない裸培地だから、「イチゴセクセルキューブ」の培地温度は一般的な化石燃料由来のポットと比較して、地温が5~10℃低くなります。そのため夏場の高温ストレスが軽減され、花芽分化を促進する効果もあるのです」
「イチゴエクセルキューブ」は挿苗用とセル用とがあり、セル苗用は三好アグリテックのF1種子イチゴ406穴にピタリとフィットする。育苗の省力化に興味のある方は、是非ご検討いただきたい。
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数々の実証で効果を確認!
世界に広がるカクイチの「ウルトラファインバブル」
続いてご紹介するのは、カクイチの「ウルトラファインバブル発生装置(以下、UFB発生装置)」。カクイチは農業用倉庫のメーカーであり、1886年の創業以来、全国に建てた農業用倉庫はなんと11万棟。このネットワークを活用して、「UFB発生装置」の実証と製品ブラッシュアップを繰り返してきた。「UFB発生装置」の発売開始は2016年だが、今では日本国内に1,200名以上のユーザーを抱えるまでに成長を遂げている。
そもそもUFBとは1μm未満の非常に小さな気泡のこと。もちろん目で見ることはできないが、UFBは長時間水中に残存する性質と、自身はマイナスに帯電してプラスイオンを吸着する性質を持つ。
UFBは灌水に対して使用する。近年は温暖化傾向にあるが、気温が上昇すると水中の溶存酸素濃度は低下する。ところが、栽培される作物による酸素吸収量は増加する。だから気温が上がると作物は酸欠状態に陥りやすい。そこで役立つのが酸素を用いた「UFB発生装置」だ。カクイチアクアソリューション事業部の三浦一茂さんが教えてくれた。
「栃木県で行った養液土耕栽培における検証では、細根量の増加と糖度の上昇がみられました(上図参照)。また、東京大学・福島大学と共同で行ったイチゴの高設栽培(紅ほっぺ)での検証では、収量の増加がみられ、その要因も明らかになっています」。
なお、カクイチの「UFB発生装置」は展着・浸透効果も高めることから、減農薬にも資することが明らかになりつつあり、現在、みどり投資促進税制対象機械の申請を行っているという。
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光の効果を引き出し、生産性を上げる
シーシーエスの植物工場栽培技術ソリューション
最後にご紹介するのは、シーシーエスが展示していた、イチゴの生育にも適した「フィリップスグリーンパワーLEDトップライティング」。シーシーエス新規事業部施設園芸課の宮坂裕司さんが教えてくれた。
「フィリップスの『グリーンパワーLEDトップライティング』は、世界中の温室で利用されています。その理由は、植物栽培に適した波長(スペクトル)で、発光効率と出力が優れているからです。導入を検討されている温室の天井の高さなどの条件に合わせて、数量や設置間隔を検討して、ご提案をしていますので、光が必要なエリアにしっかりと光を届けることができます。近年、安価なLEDライトが多数市販されていますが、水や薬剤に対する耐久性、増収効果や電気代までを含めてトータルでの効果を考慮すれば、フィリップス製品の優位性をご理解いただけると思います」。
またシーシーエスでは、イチゴの人工光型植物工場で受粉昆虫を使用しない栽培技術を開発しており、同社が蓄えたノウハウと技術を提供してくれるという。ご興味を持たれた方は是非、問い合わせてみてほしい。
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取材・文/川島礼二郎