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乾燥しても安定して発芽する!天然保水性ポリマー「EFポリマー」が有機ニンジン大規模生産に貢献

インド発、沖縄育ちのスタートアップ企業が開発した土壌改良材「EFポリマー」。特徴である吸水力の高さにより、ニンジンの発芽率向上と収量増に貢献している現場を訪ねた。

「ゆうふぁーむ」は北総台地で
特栽ニンジンを中心に多品目栽培する

取材に訪れたのは、千葉県北東部、成田空港のほど近くにある香取郡多古町。

多古町は、東西に約90kmも広がる北総台地に位置する。台地を覆っているのはミネラルが豊富な火山灰土壌である。弥生時代から稲作が盛んな地域であり、今でも「多古米」はブランド米として流通している。

一方で、粒子が細かく柔らかい火山灰土壌を生かして、根菜類も盛んに栽培されている。特にさつまいもの一大産地として知られているほか、大和芋、大根、にんじんなどの根菜類と、果菜類や葉菜類も盛んに生産される、多品目の野菜生産地でもある。

そんな多古町で、33haの圃場で特別栽培のニンジンをメインに、ゴボウ、ジャガイモ、トウモロコシ、オクラ、長ねぎなど10品目以上を露地で生産しているのが、有限会社ゆうふぁーむ

10年前、元々あった企業を血縁のない第三者3人で事業継承し、規模を拡大してきた。通年雇用の従業員は15名。専務取締役を務める川島健次さんが教えてくれた。

「農地や地域社会の維持・活性化に貢献しようと、離農される方の農地を引き受けることで拡大してきました。主力の特別栽培のニンジンは、春ニンジンが6ha、秋冬ニンジンは13ha栽培しています。特栽にしたのはお客様からの要望。JAには出荷しておらず、小売や生協に販売しています」

順調に規模拡大を進めてきたゆうふぁーむだが、近年の高温・乾燥に悩まされてきた。規模は拡大した一方で、乾燥により発芽が揃わず、その影響で反収が減ってしまったのだ。

「はっきり言ってしまうと、手を掛けて来なかったのです。しっかり生産できなければ、どれだけ面積を広げても、経営は成り立ちませんよね」と、川島さんは振り返った。

特に酷かったのが3年前。乾燥により欠株が増えて、収量と秀品率が激減してしまった。「畝はひび割れ、土は握ればさらさらと崩れるほど乾いていました。連日の酷暑で圃場はからからで、約25日もまとまった雨がありませんでした。」

近所の圃場で丁寧に水を撒いていた生産者が収量を上げていたことを、川島さんは見落とさなかった。「やっぱり水が大事なんだと、あらためて気付きました」(川島さん)。

半信半疑から確信へ
安定した発芽で収量・品質が向上

それでもゆうふぁーむのような大規模生産において、適したタイミングに給水するのは容易ではない。そこに人員を割いてしまうと、次の圃場の播種を進めることができない。

酷暑下での作業だから、従業員の負担は大きい。そこで川島さんが思い出したのは、TVのニュース番組で取り上げられていた土壌改良材「EFポリマー」だ。

EFポリマー」はインド発、沖縄育ちのスタートアップ企業、EFポリマー社の製品。オレンジの皮などの果物の不可食部分をアップサイクルして作られた、自然由来の超吸収性高分子ポリマー=土づくりに使える資材だ。

廃棄されていたはずの作物残渣が原料であり100%有機かつ完全生分解性を有するから、化学合成された石油由来の高分子ポリマーと比較して、異物を土壌に残さず、水と二酸化炭素に完全分解して、自然生態系に還っていく地球に優しい資材だ。そのうえ農業に最適といわれる自重の50倍という保水力と保肥力を有している。

この性質を活かすことで、環境に負荷を掛けることなく収量増が期待できる。十勝地域では、夏期の高温(水不足)対策として馬鈴薯の圃場に施用されており、初期成育の良化に貢献していたが、ニンジンを中心に栽培している千葉のゆうふぁーむでは、どのような効果がでているのだろうか?

「最初は半信半疑でした」と苦笑した川島さんだが、ネット通販で購入してペットボトルを使用して保水力を試験したり、小さな圃場で使ってみたり。良い結果が得られたものの川島さんは導入を決断せず、2024年春には製造元のある沖縄を訪ねた。そこで詳しい説明を聞き、ユーザーの圃場を巡り確信を得て、2024年夏から使い始めた。

「まず、しっかりと発芽してくれました。これが大きかったですね。それに加えて、こちらの圃場は人手によるこまめな水かけが難しく、どうしても降雨に頼らざるを得ないのですが、その条件でも苗がきちんと活着し、安心して生育を見守ることができました。最終的な収量と品質も向上しました。播種後の給水が完全に不要になるわけではありませんが、雨の合間でも土中の水分が保たれ、潅水の間隔に余裕を持てました。結果として、栽培期間を通じて数回分の給水作業を省くことができました」 と、川島さんは満面の笑みだ。

特に「EFポリマー」の効果を体感するのは、雨後なのだとか。以前はしっかり降った後でも2~3日もすると表土が乾燥していたが、今では5~6日は保つようになった、とのこと。

またゆうふぁーむでは「EFポリマー」5kg/10aを肥料と混和して散布している。「EFポリマー」施用のために作業する必要がない点も、効率的な生産が求められる大規模栽培にマッチしているのだろう。

2024年夏に「EFポリマー」を散布した圃場の結果が良かったことから、ゆうふぁーむは2025年からニンジン栽培面積の全てに「EFポリマー」を投入して行くという。さらに川島さんは、「もしかしたら秋冬ニンジンの発芽を揃えるのにも有効かも知れません」と期待を語った。

これからも高温・乾燥環境下での安定した発芽と収量アップの強い味方として、「EFポリマー」は農業生産現場の挑戦を支えて行くに違いない。

問い合わせ

EFPolymer株式会社

100%オーガニックの超吸水性ポリマー「EFポリマー」。10/1~3に幕張メッセで開催される農業WEEK(J-AGRI)にて出展する。ブース番号は20-25
≫農業WEEK出展の詳細はこちら


取材・文:川島礼二郎
写真:イワイコオイチ

Sponsored by EF Polymer株式会社

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