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農業WEEKで発見!青果物の鮮度保持や輸出に役立つ注目製品&新品種4選

先日おこなわれた農業・畜産の総合展「第15回 農業WEEK(通称 J-AGRI TOKYO)」の展示物のなかから、青果物の鮮度保持のため新たに開発された、注目の包装資材やコンテナ、輸出に適した新品種を紹介する。

メイン画像:トーホー工業「EPSスマートクーリングコンテナ」

<目次>
1.鮮度維持と食品ロス低減を両立 OPPフィルム「カルフレッシュ」
2.賢い鮮度保持を実現する「鮮度保持コート剤」が誕生!
3.組立が手軽く保冷力が高い EPSスマートクーリングコンテナ
4.棚もち性を持つ高糖度ないちごを海外輸出

 

鮮度維持と食品ロス低減を両立
OPPフィルム「カルフレッシュ」

多くの青果物は、選果された後、包装(パッキング)されて、出荷される。青果物の包装資材のなかに、鮮度を保持する機能を有するものがあり、大別すると3種類ある。

1. MA包装:包装資材のガス(主に酸素・二酸化炭素)透過度を調整することで呼吸を抑制
2. 抗菌フィルム:包装材に抗菌剤を塗布したり練り込むことで、微生物の増殖を抑制
3. 活性フィルム:電磁波を発生させるなどして青果物の水分子を活性化させ、鮮度を維持

王子エフテックスが展示していた「カルフレッシュ」は、抗菌フィルムの1種だ。抗菌機能を果たすのは、廃棄物として捨てられていたホタテ貝殻。これを材料として使用するから、廃棄物ロスと、青果物の鮮度維持により食品ロスの低減を両立する、というわけだ。

「ホタテの貝殻を高温で焼き、粉砕します。それを樹脂に練り込み、マスターバッチ樹脂を作ります。それを多構造のフィルムの食品と接する面にだけ使用しているのが『カルフレッシュ』です。

ホタテ貝殻を焼成すると水酸化カルシウムになります。これが水に触れるとアルカリ性となり、細菌を不活性化します。これにより抗菌効果を発揮するのです。

また、アルカリ性と聞くと人への影響を心配されるかも知れませんが、皮膚への剌激試験を行い安全性を確認していますから、安心してご利用ください」と教えてくれたのは商品開発本部商品開発部上級技師の松井章光さん。

「カルフレッシュ」は青果物の包装のほか、お弁当用の抗菌シート(お弁当の上に載っている透明フィルム)にも使われている、とのこと。

「発売開始から3年ほどが経ち、着実に普及しています。JA様からお声掛けいただくことも増えてきました。大手コンビニエンスストアにも採用されたんですよ。

包装材を変えるだけで、消費者の方が開封するまで鮮度を維持できる、という手軽さも、本製品の魅力の1つです」(松井さん)

松井さんは最後に「鮮度保持・抗菌の効果は同社による評価結果であり、必ずしも効果を保証するものではありません」と説明した。包装するものが青果物だから、当然のことと言える。収穫時の条件(病害の発生度合い等)によっては、資材に抗菌作用があっても菌の活性化を抑え切れない場合がある、という意味だろう。

「カルフレッシュ」は、廃棄物削減と食品ロスを同時に低減する、稀有な存在だ。マーケティングツールとして利用できる可能性もある。ご興味を持たれた方は是非、同社にコンタクトして欲しい。

問い合わせ

王子エフテックス

 

賢い鮮度保持を実現する
「鮮度保持コート剤」が誕生!

青果物においては、収穫後の鮮度保持は極めて重要だ。売り場の棚や消費者の冷蔵庫内で鮮度が落ちてしまうことで、中長期的に生産者や産地の評価が落ちてしまうことがある。逆に、棚でもしっかり鮮度を保持できる青果物は、バイヤーや消費者から支持される。

収穫後の青果物の鮮度保持に役立つ製品が、いよいよ発売されそうだ。三菱ケミカルが展示していた「鮮度保持コート剤」が、それだ。昨年の農業WEEKでも展示していたので、ご存知の方も少なくないはずだ。同社フード・ヘルスケアインキュベーション部の小池泰介さんに聞いた。

「開発中の『鮮度保持コート剤』は、弊社が市販している植物由来の食品添加物(ショ糖脂肪酸エステル)を原料に使用しています。青果物に吹き付けることで表面に被膜を形成して、青果物内部への酸素の侵入を防ぎます。それにより呼吸を抑制して、劣化を遅らせることができるのです」

その効果が凄い! 展示会場には、塗布有無のサンプルが展示されていたが、ご覧の通り。塗布することで、1週間後でも鮮度を保持していることが分かる。

「原料に用いる弊社の食品添加物とは、商品名『リョートー シュガーエステル』のこと。ショ糖と植物起源の脂肪酸とをエステル結合させたもので、1959年に食品添加物として認可されて以来、食品用途ではアイスクリーム、レトルト食品、マーガリンなどに使われており、品質向上に寄与しています。ですので、それを原料とする『鮮度保持コート剤』を食品に直接塗布しても、安全性は心配ありません。この『鮮度保持コート剤』は、食品添加物製剤として販売いたします」と小池さん。

一般的に行われる鮮度維持では、袋詰めと低温保存とが、セットとして使われる。低温にするのは、呼吸による老化の進行を防ぐためだ。ただし、袋詰めした空気が室温や高温環境下に移されることで、結露してカビ等の病気が発生するリスクがある。

この「鮮度保持コート剤」は塗布することで呼吸を止めるから、室温程度であっても品質低下を招きにくく、結露しないからカビや病気発生リスクも下がる。実に賢い鮮度保持手法なのだ。

展示ブースには、サンプルとして「鮮度保持コート剤」塗布有無の、ピーマン、ミニトマト、バナナなどが展示されていた。リーフレットでは、和梨(幸水)、すだち、ぶどう(巨峰)、メロン、さくらんぼ(佐藤錦)、柿(中谷早生)への適用事例が示されていた。葉物への適用は難しい。

また、コート剤の塗布には幾分かの手間とコストが掛かるから、まずは高価格帯の青果物から普及して行くと思われる。小池さんは続けて教えてくれた。

「昨年の農業WEEK以降は、福岡や熊本のイチゴ産地にご協力いただき、効果の確認を行っていました。基本的にはシッカリ効果を得られているのですが、どうしても青果物が対象ですので、効果がない場合もあるのです。その原因として考えられるのは、例えば、収穫時に高湿だったり、病気が出ていたり、収穫して保冷庫に運び込むまでに水に濡れてしまったり……様々な場合があることが分かってきました。」

市販化する限りは、どう使えば良いのかを、メーカーは正しく説明せねばならない。そこを詰めていたのだ。

「市販化は2026年の春を目標にしています」とのこと。ご興味を持たれた方は是非、今後も同社の動向をウォッチしてもらいたい。

問い合わせ

三菱ケミカル
 

組立が手軽く保冷力が高い
EPSスマートクーリングコンテナ

一部の青果物においては、収穫後の鮮度保持は極めて重要だ。そうした青果物では、集荷場から小売店まで、コールドチェーンが確立している。ところが多くの場合で、このコールドチェーンから抜けているのが、圃場から保冷庫までの輸送。農業生産者が収穫した後の青果物を保冷庫等まで運ぶ間は、常温となってしまうのだ。

そこに利用できそうな製品を展示していたのが、大阪に本社を置く、発泡スチロール成型品製造及び販売を主業とするトーホー工業。発泡スチロール製の大型コンテナ「EPSスマートクーリングコンテナ」を展示していた。

「現在のところ、その保冷力や組立の手軽さから、物流会社(トラック輸送)の混載用や航空輸出の保冷梱包用としての需要が堅調です。物流の効率化が求められるなか、本製品を使用することで、異なる温度帯の荷物の混載が可能となる。簡単に言えば、常温コンテナ内に保冷スペースを設けることができるのです。」

「EPSスマートクーリングコンテナ」の特徴は、素材が発泡スチロールであるため断熱性が高く軽量、そのうえ組み立て式であること。組み立てに掛かる時間はわずか3分!

また1段、2段、3段、4段と用途によって使い分けが可能である。組み立て式だから、使用しないときはコンパクトになり、保管時の省スペース化も可能である。

コンテナ内に農作物が入った状態では、降ろすのが大変ではないか、と意地悪な質問をしてみたが、なんとフォークリフト作業も可能な構造と強度を有しているという。

天面には保冷剤をセットできる収納が備わっているから、それを使っても良いし、コンテナ内部に収穫物と共に氷やドライアイスを入れても良い。

気になる保冷効果は、ご覧の通り! なんと環境(気温)が30度であっても、コンテナ内の温度は24時間、7度以下に収まっている。十分過ぎる保冷性能を有していることが分かる。

価格についてうかがうと、「問い合わせて欲しい」とのこと。参考までに実勢価格をうかがうと驚くほどリーズナブルで、個人でも十分に手が届く価格だった。

圃場から保冷庫・集荷場までをコールドチェーンで結ぶことで、より棚持ちが良くなる可能性は高い。高品質な青果物で差別化を図る生産者・産地は、こうした資材の導入を検討したらどうだろうか?

問い合わせ

トーホー工業
 

棚もち性を持つ
高糖度ないちごを海外輸出


CULTA-T3L」を開発したカルタは、代表取締役の野秋収平さんが東京大学大学院時代に設立した農業スタートアップ企業だ。在学中にタイの農業スタートアップ、東京都中央卸売市場、イチゴ農家で業務を経験しながら、グローバル農業ビジネス、農業生産、流通を学んだ。

それを生かして、品種改良をキーテクノロジーとして「気候変動時代の新プレミアムブランド」の農作物をASEANに届けようと、現在はオリジナル品種を開発しているほか、サツマイモ育種に関する共同研究、ホップの育種・栽培技術に関する共同研究を進めている。


野秋さんが「CULTA-T3L」の特徴を教えてくれた。

「分かりやすくお伝えすると、硬いけれど甘い品種です。育種には、弊社の強みである高速育種技術を活用し、通常は10年かかるイチゴの品種開発を2年で実施。輸出に耐え得る棚もち性と高糖度を両立させることに成功しました」

「CULTA-T3L」の表面硬度は春先でも完熟出荷が可能なほどであり、糖度は平均糖度13度前後を誇る。この糖度は、日本で流通する一般的なイチゴ全国平均糖度が10度前後だから、その約1.3倍にあたる。

「シンガポール、マレーシアに向けて既に『CULTA-T3L』を輸出販売しているのですが、大変好評です。これを受けて、売先をさらに広げて行く予定です。近年は来日経験のある方が現地に多くいらっしゃいますが、そうした方からは『日本でイチゴ狩り食べたイチゴの味を思い出した!』と、完熟であることを高く評価されています。日本でも26年末クリスマスシーズンから販売を開始する予定です」と、力強く将来展望を語ってくれた。

近年、日本産イチゴの海外輸出は増えているが、品種名ではなく棚持ち性の高さを含めた品質で勝負する、という売り方が「CULTA-T3L」ならば成立するのだろう。

なお、同社のプレスリリースによると「CULTA-T3L」は高温環境下でも安定した収量・品質を実現できる、と記載されている。今後も温暖化の影響が続くと考えると、この高温環境への強さもまた「CULTA-T3L」の魅力となるだろう。

野秋さんは「生産してくれる仲間を募集中です!」というから、ご興味を持たれた方は是非、同社にコンタクトして欲しい。

問い合わせ

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