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井関農機が2026年度上期新商品を発表! 「ジャパン」シリーズ刷新とマップ連動防除オプションに注目

井関農機が「農業の生産性向上」を主なテーマにした新商品発表会を開催した。フラッグシップコンバインのモデルチェンジをはじめ、スマート農業技術、草刈り市場向け新製品、ドローンを活用した鳥獣害対策など、社会課題に対応する多角的な取り組みを発表した。会場には、農林水産省、JA全農、関連企業などからも参加者が集まった。

<目次>
1.創業の精神と長期ビジョン
2.農林水産省から審議官が来場 井関が示した方向性を高く評価
3.フラッグシップコンバイン「ジャパン」シリーズが刷新! 
4.マップ連動防除機能を搭載した防除機オプションを発表!
5.ドローンによる鳥獣対策
6.草刈り市場への本格参入

 

創業の精神と長期ビジョン


冒頭の挨拶で井関農機代表取締役社長の冨安司郎氏は「井関グループは『農家を過酷な労働から解放したい』という創業の思いを100年以上にわたり受け継いできた」と述べ、「お客様に喜ばれる製品・サービスを通じ、豊かな社会の実現に貢献することが基本理念である」と強調した。

そのうえで、同社の長期ビジョンについて「『ソリューションカンパニー』への進化を掲げ、社会課題の解決に新たな価値を提供する」と説明した。農業就業人口の減少と高齢化、世界的な食料需給の逼迫といった環境変化を背景に、「生産性向上こそが農業の持続性を左右する鍵である」との認識を示した。

続けて、労働時間の推移を示しながら、機械化が日本農業にもたらした変化を説明。「1960年代には10a当たり174時間を要していた水稲作業は、現在では約8分の1にまで短縮された」とし、「農業の省力化は、兼業化や地域経済の発展にも寄与してきた」と振り返った。

経営戦略面では、短期集中で構造改革を進める「プロジェクトZ」を推進中であることを説明した。「開発最適化、国内営業の進化を軸に、2027年に連結営業利益率5%以上、PBR1倍以上を目指す」とした。また、「2030年には海外売上高を1.5倍に拡大し、国内は成長分野へ経営資源を集中する」との方針も示された。

冨安氏は「経営資源を集中する」と説明したが、一方で同社は総合メーカーである。そのため発表会では、中山間地に最適なサイズの小型コンバインや一輪管理機も発表された。本稿では編集部が注目した3製品について紹介しよう。

農林水産省から審議官が来場
井関が示した方向性を高く評価


今回の発表会には、農水省から審議官のほか多数の職員が来場していた。メーカーの製品発表会にこれだけ多くの農水省職員が来場するのは極めて珍しい。スマート農業・みどり戦略に関わる製品発表が多かったためだろう。

農水省で「みどり戦略」を担当する大臣官房審議官の西経子さんが登壇し、「井関農機の創業の精神が、人口減少や気候変動という令和の課題のなかで、改めて意味を持ってきている。生産性向上と環境負荷低減の両立は、緑の食料システム戦略の中核だ。スマート農業や草刈りロボット、鳥獣害対策は、地域の稼ぐ力を高める重要な技術である。同行した若手職員にとって、このようなイノベーションの現場を体験するのは貴重な機会となる」と話した。

フラッグシップコンバイン
「ジャパン」シリーズが刷新!


ここからは特に注目すべき新製品について。3点紹介して行こう。まずは発表会のテーマである「農業の生産性向上」に向けた具体策として発表された、フラッグシップコンバイン「ジャパン」シリーズのモデルチェンジ

担当者は「操作性と居住性を大幅に高め、長時間作業でも疲れにくい設計とした」と、軽労化を重視したことを説明した。キャビンフレームとパネル類を一体構造とし、キャビンをゴムマウントすることで、低振動・低騒音化とキャビンの快適性向上を実現した。また直進アシスト機能を7条刈にも設定するほか、農業機械技術クラスター事業で開発した収量センサー付き型式を追加する。

「経営規模の拡大により、1台当たりの作業時間が増えている。誰でも安定して快適に作業ができることが重要だ」とし、軽労化のみならず、熟練度に左右されない効率化を実現した点も強調した。

その効率化についてだが、リリースには明記されていないが、排気量アップにより出力向上を果たした新エンジンが主に担う。走行性能・作業性能を大きく向上させる。フラッグシップコンバインに賭ける同社の思いが伝わる、入魂のモデルチェンジである。

マップ連動防除機能を搭載した
防除機オプションを発表!


次に説明するのは、JA全農との共同研究により開発した技術であるマップ連動防除機能を搭載した、乗用管理機「JKZ23CY」用防除機オプションだ。マップ連動防除に加えて、オートスライドブームの機能を追加できる。

マップ連動のマップとは、栽培管理支援システム「ザルビオ・フィールドマネージャー」のこと。ザルビオのマップと連動して散布できるようになると生育に応じた適正な薬剤散布が実現するから、農薬使用量を低減できる。マップ連動防除は「みどり投資促進税制」の適用対象機に申請予定であるという。

また、同社が開発したオートスライドブームにも使用できる。オートスライドブームでは、既に散布した領域を判定して散布漏れや散布の重複が起きないよう、スライドブームを自動伸縮制御させる。農薬散布マップを読み込むことで圃場区画に対しても自動伸縮制御を行うことができる。このオプションは現地での実演も行われた。同社の力の入れ具合が分かる。

本機もまた、発表会のテーマである「農業の生産性向上」を実現するうえ、さらに農業と地域の持続可能性を高める機械である。

ドローンによる鳥獣害対策


井関農機は2024年より、株式会社NTT e-Drone Technologyが開発・製造した農業用国産ドローンの取り扱いを行っている。今回の発表会では同社のドローンを活用した新たな鳥獣害対策を紹介した。

同社の滝澤正宏代表取締役社長が登壇し、鳥獣が嫌がるレーザーを発光する「クルナレーザー」を搭載した鳥獣害対策ドローン「BB102」による忌避効果について、「カラスなどに対して顕著な成果が出ている」と説明した。
現在、自治体等からの引き合いが増えているという。

NTT e-ドローンテクノロジー製品と言えば、散布用ドローン「AC102」が普及している。「AC102」の機体に「クルナレーザー」を搭載できないのか質問したところ、「『AC102』と『BB102』とでは、ソフトウェアが違う。これを切り替えできるようにすれば、散布ドローンと鳥獣害対策ドローンとして利用できるようになる。要望が多ければ開発する可能性がある」とのこと。今後の展開に期待したい。

草刈り市場への本格参入

最後に、草刈り市場への取り組みについて、触れておこう。ヨーロッパで実績のある乗用モア「SXG216」を国内投入することが発表し、「地方自治体や請負業者向けに評価の高い機種であり、狭小地や公共空間の管理に適している」と説明した。これを端緒に同社は非農業分野での事業拡大も進めるという。

発表された製品一覧

コンバイン(6条刈・7条刈) HJ6135、7135 2型式
コンバイン 直進アシスト仕様(4条刈・5条刈)FM468Z FM475Z FM575Z 3型式
コンバイン(2条刈・3条刈)FK214 FK217、220、320 FK223、323 6型式
一輪管理機 KSX303、453、653 3型式
全自動野菜移植機(スイートコーン、キャベツ兼用機) PVZ100 1型式
乗用全自動野菜移植機 PVDR200 1型式
乗用モーア SXG216 1型式
欧州向け乗用モーア SXG216-7
欧州向け乗用モーア SXGE2-7 
(参考)乗用管理機JKZ23CY用防除機オプション
・マップ連動可変防除
・オートスライドブーム

参考:井関農機2026年度上期新商品


取材・文:川島礼二郎

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