いちごの4つの作型を知ろう! 地域やビジネスモデルに適した栽培を考える
2020/10/28
いちごの栽培方法にはいくつかの種類がある。どの作型が自分のビジネスモデルに合っているのかを見極めることが成功の秘訣だ。専門家に聞く、いちご栽培の解説連載第2回後編。
連載第2回前篇『農業ビジネスは立地がすべて! いちご栽培に向いている地域とは?』はコチラ!
いちごの4つの作型
まずは、いちごの4つの作型を簡単にご紹介します。
1. 促成栽培
2. 夏秋栽培
3. 周年栽培
4. 春栽培(半促成栽培)
1.促成栽培
最も一般的な作型は促成栽培です。苗を9月頃に植え付け、収穫を11月頃から翌年の6月頃まで行います。
クリスマスケーキに使われるいちごや、スーパーマーケットで売られているいちご、いちご狩りのいちごはほとんどがこの促成栽培です。一般的にいちご栽培はこの促成栽培を指します。
2.夏秋栽培
次に多いのが夏秋栽培です。苗を4月頃に植え付け、収穫を6月頃から11月頃まで行います。
夏から秋にかけてケーキに使われているいちごは、この夏秋栽培のいちごが多いです。ただし、夏から秋にかけてはアメリカから輸入された輸入いちごも出回っています。
用途としては業務用に限られているので、スーパーマーケットなどで販売されることはほとんどありません。
3.周年栽培
周年栽培は促成栽培と夏秋栽培を合わせた作型、もしくは一つの株を長期間栽培する方法です。
苗を4月か9月に植え付け、収穫を一年中行います。収穫を一年中行うために、四季成り性品種を使うか、もしくは温度などの環境制御を徹底して行います。植物工場や環境制御型の施設園芸で行われている作型です。
4.春栽培(半促成栽培)
北海道や東北地方の一部では春栽培(半促成栽培)が行われています。
苗を9月頃に植え付け、収穫を翌年の4月から7月頃まで行います。
冬の寒さが厳しい北海道や東北ならではの作型です。促成栽培よりも収穫量は少ないですが、冬の暖房コストを抑えることができます。
おすすめの作型とは?
地域ごとに紹介
次に、地域ごとのおすすめの作型をご紹介します。
全国のどこでも促成栽培
まず、日本では北海道から沖縄まで、全国のどこでも促成栽培が行われています。特に西日本や九州のような温暖な気候の方が、冬期の暖房コストが削減できて有利です。
ただし、温暖な気候の地域では夏の終わりから秋の気温が高いことから、夜冷短日処理のような花芽分化処理の必要性が高まります。促成栽培では冬の日射量が多い方が有利なので、日本海側よりも太平洋側の方が向いています。
北海道や東北、長野県なら春栽培や夏秋栽培
北海道や東北、長野県でしたら、春栽培や夏秋栽培が人気です。特に夏期の冷涼な気候を生かして、夏秋栽培が多い地域です。
促成栽培をする場合には暖房コストを下げる工夫が必要ですし、雪が多い地域では耐雪性が高いビニールハウスが必要です。
環境制御ができれば周年栽培も
環境制御さえできれば、周年栽培も可能です。
ただし、いちごにとって最適な環境を一年中整えないといけないので、環境制御システムが必要です。温暖な地域でしたら冷房設備、冷涼な地域でしたら暖房設備が特に重要になります。
最近では太陽光利用型の植物工場でも、周年栽培が行われるようになりました。
いちご栽培は
ビジネスモデル次第
いちご栽培に向いていない地域だとしても、いちご農園の経営ができない訳ではありません。いちご栽培に向いていないおかげで、競合が少ない場合があります。
逆にいちご栽培に適している地域にはいちご農園がたくさんあるので、競合も多いということになります。結局、立地条件はビジネスモデルと合わせて考えないといけないのです。
PROFILE
株式会社イチゴテック
代表取締役
宮崎大輔
いちご農園の新規立ち上げや栽培改善、経営改善をサポートしている。