品質・食味ともに認められるお茶栽培に挑戦─宮崎県4Hクラブ会長が語る農業の魅力とは
2020/11/30
宮崎県都城市でお茶の生産と販売を行う、大石朝寛さん。お茶のさらなる品質向上のため奮闘するかたわら、「宮崎県SAP会議連合」の会長として地域農業の発展にも寄与している。俯瞰で地域農業を語ってもらうとともに、自身の取り組みもご紹介いただいた。
メイン画像:「宮崎県SAP会議連合」の会長・大石朝寛さん
意欲的な農家や組織も目立つ
「宮崎県SAP会議連合」
全国トップクラスの日照時間を誇るうえ、太平洋を流れる黒潮の影響を受ける宮崎県は、温暖な気候に恵まれた県の一つ。県内では各種野菜や熱帯果樹、茶、花きなど、さまざまな作物が生産されており、大石さんはその多様さについて「“県内で作れないものはないのでは”と思うくらい、バラエティ豊かな産物があります」と話す。
国内トップクラスの農業産出額をはじき出しており、“農業大国”の一つでもある宮崎県では、新規就農のために県外から移住してきた人がたびたび見受けられるほか、最新の農業技術を求めて研修に出向く人、積極的にスマート農業を取り入れる人の存在も目立つという。また、合計18の市町村の組織から成る「宮崎県SAP会議連合」を取り巻く雰囲気も、近年盛り上がってきているそう。
「組織のなかには、“メンバーの農業経営をより良いものにする”という目標のもと、研修や勉強会をこまめに開催しているところもあります。また、『全国青年農業者会議』で意欲的な発表をするメンバーも現れており、彼らに鼓舞されるかたちで、ほかのメンバーの気持ちも高まってきたように感じます」
「宮崎県SAP会議連合」のメンバーたち
大石さんは、県担当者に依頼されたのをきっかけに、2019年6月に「宮崎県SAP会議連合」の会長に就任した。名指しで依頼された理由について、「会議であえて空気を読まず、率直な意見を伝えていたからではないでしょうか。僕には大きな取り柄や熱意はありません」と謙遜して話すが、客観的な視点でみれば、大石さんも十分に“スゴくて熱い”農家。自身の栽培作物であるお茶に、人並み以上の情熱とこだわりを注いでいる。
品質、食味ともに認められる
お茶を製造・販売
大石さんは、宮崎県の主要都市にあたる都城市で、父や兄と一緒に「大石製茶園」を営んでいる。「大石製茶園」は、大石さんの父が始めた製茶園で、大石さん一家は、長らくお茶の栽培に加え、製造および販売も手がけてきたという。
同園の特徴の一つが、製造方法として昔ながらの「手もみ」を採用している点。収穫し、蒸したお茶を段階的に手で揉むことで、お茶の変質や茶葉の破損を最小限にとどめることができる。
また、じっくりと茶葉に触れながら、その年の茶葉の状態を把握できるため、最適な製造が行えるそう。「手もみでお茶を製造している農園は、都城市でうちだけだと思います」と、大石さん。
大石さんの曽祖父がはじめたお茶づくりが、代々家業として受け継がれてきたという
さらにはおよそ10年前より、有機栽培を開始。製造したお茶に「有機JASマーク」をつけて販売することを目標に、栽培、製茶、袋詰めなど、あらゆる作業をコツコツと記録していった。結果、2020年に「大石製茶園」は、有機JAS認証事業所に認められ、製品に「有機JASマーク」をつけて販売することが許されたという。
いっぽうで、「大石製茶園」は食味の面でも評価されており、2019年に開催された「日本茶AWARD」では、販売製品の一つである「あさのか」が「ファインプロダクト賞」に入賞した。
自らの意志のもと、さまざまなチャレンジを続けてきた大石さんは、農業の魅力をこう語る。
「農家になれば、実現したいことに向けて、自由に工夫や挑戦ができます。その分、責任や大変なこともありますが。意欲がある人にとって、農家は理想的な職業の一つだと思います」
PROFILE
大石朝寛さん
1987年宮崎県生まれ。農業大学校を卒業後、2011年に「大石製茶園」で就農。2019年6月に、地域の4Hクラブにあたる「宮崎県SAP会議連合」の会長に就任。
※記事中の情報は取材時のものです。
DATA
取材・文:緒方佳子