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生産者の取り組み

稼げる農家が育つ有機農業の町「綾町」の活気が凄い

有機農業の町として、全国的にも知られる宮崎県綾町。いま、綾町産の野菜が、生産量が追いつかないほど売れている。仕掛け人のNPO法人まちづくりGIFTの齋藤潤一代表に話を聞いた。

モノとコトを伝えることで
喜んでくれる顧客が増えた

綾町は宮崎県の中西部に位置し、総面積の約80%が森林に囲まれる緑豊かな土地だ。昭和63年に全国初の「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定し有名になった一方、実体経済を動かすには至っていなかった。

その流れが大きく変わったのは2015年、行政・民間・NPOが職業の枠を超えて「aya100」を立ち上げたことに始まる。綾の魅力を100年後に伝えるために有志のボランティアで運営される団体だ。

経済を動かし「稼ぐ力」をつけるには、顧客のニーズに合ったものを生産することが大切だと考えたaya100チームは、都内レストランのシェフを現場に呼んだ。作り手の思いやストーリーを伝え、畑で食べてもらった野菜は一流シェフたちをも唸らせた。「こんなうまい野菜食べたことがない!」という言葉は農家の自信につながった。また、取引が決まったレストランでは、綾の野菜を使ったイベントを行い、農家を呼んだ。

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「買い手の気持ちになって作ることが、何より大切です。だから、自分たちが作ったものが食べられる現場を見てもらう。それ以上、僕らが農家さんに教えられることは何もないです」(齋藤さん)。

さらに、地元宮崎県でも「綾の旬の野菜バル」を行い大盛況を収めた。農業で成功するには、地元に愛され応援される仕組みがあることも重要な要素だろう。農家には、良いものを作っているという自信がつき、さらに良いものを作るモチベーションが生まれた。そして、地域からは応援される流れが生まれ、地元のラジオ局と「稼ぐ農家ラジオ」がスタートした。

齋藤さんが特に意識をしていることは、流れを作りその流れを断ち切らないことだという。

「僕が出来ることは、みんなの歯車がとまっているなと思うときに、新しい人や、新しい見方をするきっかけというオイルを注いであげて、うまく回転する手助けをするだけなんです」(斎藤さん)。

成功の鍵

「自分たちのお客さまを知ること」「自分の強みを知ること」「そして、続けること」。一人ではなく多様性ある知見が集まるチームを作ることで、どんな困難にも立ち向かう力をつける。

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「綾町の魅力を100年後に伝える」という使命のもと、編集長の高橋邦男さん、カメラマンの竹内貴誉詞さん、コーディネーターの森茂美紀さんらで構成された「aya100クリエイティブチーム」が、2015年12月から2016年11月まで1年間、毎月農家さんや農産物を撮影し続けた。写真からは、人の温かさと野菜作りに対する静かな情熱が伝わってくる。今後、都内で展示会なども企画しているそうだ。


文:Tomoko Kotaka
写真:Kunio Takahashi/Jin Takano/Takayoshi Takeuchi

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