スマホで豚の体重や枝肉測定をする時代へ! 畜産コンサルのコーンテックの挑戦に迫る
2022/11/24
畜産分野へのAI、IoTの導入が増えている。ここでは、そんな畜産ITの最先端事例として、熊本県の畜産コンサルであるコーンテックが提供しているサービスをご紹介しよう。
豚の体重測定をスマート化し
出荷時の重労働を軽減
日本農業に固有の問題として、農業従事者の高齢化と減少の同時進行が叫ばれて久しいその結果として水稲作や畑作で担い手に農地が集積しているように、畜産でも畜産農家は減少しているが同時に一戸当たりの飼育頭数は増加傾向にある。畜産の効率化は、まったなし、なのだ。
そこで求められるのがIoTやAIを活用した効率化である。例えば、豚の飼育において、体重測定は極めて重要だが、実に手間が掛かる。一般的には、体重計に乗せるか、ベテランの目視による目勘(推定)で体重が測定されている。
ところが、豚は素直に言うことを聞いてくれるわけではない。出荷を控えた豚の体重は100kgを越える。また目勘には熟練を要するうえ、測定誤差は避けられない。これを効率化しようと、コーンテックは立ち上がった。代表取締役の吉角裕一朗さんが教えてくれた。
「昨年、NTT東日本の神奈川事業部と有限会社臼井農産とともに、固定型のAIカメラを活用した豚の体重・体格・肉質測定と、豚舎管理=飼育環境の見える化を目的として畜舎内の温湿度とCO2濃度を測定する、実証実験を行いました。この実証実験で弊社は、深度センサー付きAIカメラを提供しました。最大50頭の豚を、同時に体重測定を実行でき、さらに体格による肉質を計測できることを確かめたのです」
固定型AIカメラによる体重・体格の実現のみならず、計測データと飼育・出荷判断データの相関性を導くことで、熟練作業員のノウハウを見える化した知見の継承と、適切な出荷に役立てることを目指した。
スマホの光を活用
誰でも簡単に体重測定
一方で、養豚の現場を考慮したとき、固定型AIカメラの設置やWi-fi環境の整備は容易ではない。吉角さんは続けて説明してくれた。
「そこで目を付けたのが、スマートフォンです。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、iPhone ProにはLiDARが搭載されています。このLiDARとAIとを組み合わせることで、スマホで体重測定ができる仕組みを構築できないか、と考えたのです」
LiDARというのは聞き慣れない単語だが、Light Detection and Rangingの略。日本語にすると、光検出と測距、である。光を活用して、離れた物体との距離を測る技術だ。LiDARは自動車分野では、先進安全技術や自動運転に活用されている。
現在のiPhoneでは主にナイトポートレートで活用されているが、測距できることから、将来普及するARへの適用が予想される。このLiDARが2020年に発売された『iPhone 12 Pro』と『iPhone 12Pro Max』に搭載されていた。吉角さんは、それを活用しようと考えたのだ。
「スマートフォンは誰もが所有するものです。それを活用できれば、誰でも簡単に体重測定できるようになる。これは昨年の実証実験とは違う、新しい挑戦でした」こうして誕生したのが養豚家向け体重測定AIカメラ『PIGI』。当初の狙い通り、スマートフォンで豚を撮影するだけで、体重測定・枝肉測定が、さらには出荷管理までできる。
使い方は至って簡単。以下の3ステップのみ。
1画面内に豚の全身が収まるよう真上からスマートフォンで撮影
2AIが重量を測定し、枝肉重量を算出
3測定データは日時管理され出荷量の推移を確認
「実は、今年4月に試験的にサービスの提供を開始しておりまして、海外を含めて300件の養豚家様にお使いいただいています。指定条件に従って測定していただければ、測定精度は98%程度。ズレは1~2kgに収まっています。AI開発には苦労しましたが、ご利用の養豚家様にはご満足いただけています。
今はまだLiDARを搭載しているスマートフォンはiPhoneの一部機種だけですが、将来的にはより多くのスマートフォンがLiDARを搭載する時代が来ると思います。そう考えると、『PIGI』には無限の可能性があります。体重測定の効率化を実現して、経営改善に寄与していきたいです」。
コーンテックは近日、『PIGI』のアップデートを行う予定であるという。ご興味を持たれた方は、一度試しに使ってみてはいかがだろうか。
DATA
文:川島礼二郎
Sponsored by 株式会社コーンテック