きゅうりの自動収穫からドローンの載せ降ろし装置まで! 農作業を効率化できる最新機械
2024/01/04
生産性を上げて労働時間の短縮を図るため、業務の効率化ができる機械は積極的に取り入れたいもの。昨年11月に開催された第13回農業Weekの展示物のなかから、編集部の注目アイテムを紹介しよう。
1. 1本100gを越えたきゅうりだけを収穫!アグリストの『きゅうり自動収穫ロボット』
2. ドローンの載せ降ろしを1人でできる!ダイハツの『ドローン搭載ワンオペ化装置』
3. 土壌成分を網羅的かつすみやかに”見える化”トヨタの『土壌センシングサービス』(実証中)
きゅうり自動収穫ロボットは
人手不足をカバーする
農業における機械化・自動化は進展しているが、遅れているのは果菜類の収穫作業だ。収穫作業には判断がともなううえ、繊細さが求められるからだ。この、遅れている収穫の機械化(自動化)に取り組んでいるのが、宮崎県新富町に本社を置くベンチャー企業のアグリスト。「100年先も続く持続可能な農業の実現」をビジョンに掲げている。
「自動収穫ロボットが欲しい!」という農業生産者の声に応えるべく2017年に設立された。既に『ピーマン自動収穫ロボット L』の販売を開始(現在ロボット単体での販売はなく、ハウス等とのパッケージ販売のみ)しているが、そのノウハウを投入して、今度は『きゅうり自動収穫ロボット』の社会実装に成功した。代表取締役CEOの齋藤潤一さんが教えてくれた。
「弊社は農業分野ではハウスで有名なタカミヤと協力関係にあるのですが、そのタカミヤの子会社であるタカミヤの愛菜が運営している埼玉県羽生市のハウスに、この『きゅうり自動収穫ロボット』をレンタルで導入していただきました。
ロボットが搭載するカメラから得られた画像をAIが認識・判断して、1本100gを越えたきゅうりだけを収穫します。収穫ハンドには吸引タイプの収穫ハンドを採用し、栽培環境や作物を傷つけずに収獲する機能を搭載しています」
『ピーマン自動収穫ロボット L』ではハウス路面によらず使用できる吊り下げ式が採用されていたが、『きゅうり自動収穫ロボット』ではレール上を走行する。日中の人が作業しない時間帯に稼働させることで、人手不足をカバーできることが、この『きゅうり自動収穫ロボット』導入のメリットである。レンタルの価格は20万円/月。収穫できる高さは今のところ40~125cmだが、より高く収穫できないか検討している、とのこと。
ご存知の通り、きゅうりは成長が早く、トマト等と比較して収穫作業に掛ける時間が長い。募集をかけてもパートさんが集まらない……という大規模きゅうり生産者にとって、ありがたい存在に成長するのではないだろうか?
問/アグリスト
ドローンの載せ降ろしを
1人でできる時代へ!
農業分野の課題を解決する活動に共同で取り組んでいるスズキとダイハツは、今回も共同出展。スズキは『軽トラ用ラダー格納パレット』を、ダイハツは『ドローン搭載ワンオペ化装置』を中心に展示していた。ここでは後者を紹介したい。
「この『ドローン搭載ワンオペ化装置』は、弊社の内部から上がった企画です。これまで弊社は農業の現場を知りたいという狙いもあり、農業生産者さんへの支援を継続して行ってきました。その一環としてドローンによる薬剤散布を行っていたのですが、担当社員が『軽トラックからのドローンの載せ降ろしを一人でできたら便利なのに……』と感じたと。それを実現すべく開発したのが、この『ドローン搭載ワンオペ化装置』です」
構造はシンプルだ。荷台からドローンを降ろすときの作業は以下の通り。ドローンはジグを介してラダー上に固定される。このラダーは後方に伸ばすことができるが、ここでダイハツの自動車で培った技術=エアーサスペンション(写真の黒い部品)が活躍する。作業者が体重を掛けることで、ラダー後方がゆっくりと下降して一人でもドローンを降ろすことができる。荷台に搭載する場合は、エアーサスペンションの圧を抜くだけで、ラダーはゆっくり上昇する。あとは前方に押してあげれば搭載できる。
ダイハツ担当者は「商品化が実現するかどうかは、この展示会などでの皆さまからの反響次第です。農家さんやドローン散布請負の業者さんからの反応は悪くなく、手応えを感じています」と語ってくれた。今後の展開に期待したい。
問/ダイハツ
生土をわずか30秒で分析
土壌センシングが身近に?!
トヨタ生産方式を応用した現場改善サービスで、特に大規模化農業生産者の生産性向上や人材育成に貢献してきたトヨタだが、編集部が注目したのは、開発・実証中の『土壌センシングサービス』。土壌成分を網羅的かつすみやかに”見える化”して、成分の過不足を踏まえた適正な施肥設計を支援してくれる。地中に差し込んだセンサーをトラクターでけん引して移動しながら約30項目の土壌成分を測定。これとGPS位置情報と合わせて解析し、土壌成分マップを作成・数値化することで、タイムリーな診断と改良提案が可能となる。
「作業機の後ろにセンサーを搭載する形に変更しました。これは『春の忙しい時期に土壌分析のためだけに圃場を走りたくない』という農業生産者さんの声を反映させたもの。小型化することで、作業機の後ろへの搭載が可能になりました。これでロータリーなどを掛けるタイミングで、追加の作業なしに土壌センシングを行っていただけます。
また取得したデータをクラウドに飛ばせるようになったのも大きなアップデートです。これでPCやスマートフォンから、即座に結果を確認することができるようになりました(上写真)」
その横に展示されていたのは『卓上土壌センシング機』。郵便ポストのような四角い形状の分析機に生土を入れてスイッチを押すだけで、わずか30秒で分析結果が得られるという優れものだ。トヨタの土壌センシング技術の社会実装が、いよいよ近付いて来た。
問/トヨタ
取材・文/川島礼二郎