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畑ごとの施肥量計算もラクにできる!肥料の無駄削減につながるスマホアプリ「肥料のミカタ」

施肥量計算の“ミカタ(見方)”をサポートする「肥料のミカタ」は、肥料を無駄なく使ううえで役立つアプリ。今回は気鋭の若手農家に、本アプリへ寄せる期待などを語ってもらった。

メイン画像:「肥料のミカタ」を使ってリン酸の追肥の準備をする阿久津さん。登録番号を入力するだけで肥料が特定され、スムーズに施肥量の計算に移れる。

<目次>
1.畑ごとの肥料設計もサポートするアプリ
2.肥料のミカタとは?
3.「肥料のミカタ」の使い方


畑ごとの肥料設計も
サポートするアプリ

那須塩原より車で30分ほどの栃木県大田原市には、注目の若手農家がいる。約4年前に農業大学校を卒業し、親元で就農した阿久津清尚さんだ。

阿久津農園 阿久津清尚さん。約3.4haの畑で、大田原市のブランドネギ「与一ねぎ」や、阿久津農園のオリジナルブランド長ネギ「きよちゃんねぎ」などを生産。農業の魅力を伝え、担い手の育成を図る有志団体「農と共に」も主催。

それまで阿久津家の農園では米のみを作っていたが、阿久津さんは就農後、新たな挑戦としてネギの栽培を開始。現在は、約3.4haの畑をほぼ一人で管理し、複数のブランドネギを手がけている。

阿久津さんが作ったネギは、火を通すと甘みが増し、とろけるような食感になる。阿久津さんいわく、この味わいの実現には、有機質資材が役立つそう。

「土づくりの資材として鶏糞や、食品残さの堆肥などを使っています。これらは、ネギの甘みを引き出すうえで欠かせません」。

以前は田んぼだった場所を畑に転換し、ネギを栽培している。現在もネギ畑の隣などに田んぼがあり、阿久津さんの祖父が中心となって米を作っている。

阿久津さんは、有機質資材と併用するかたちで化学肥料も使用。事前に投入した有機質資材の量をふまえて元肥を施し、作柄に応じて追肥をしている。ただ、施肥は悩ましい作業だという。

「ネギはリン酸成分をとくに欲するので、これが不足するとうまく育ちません。反対にリン酸成分が多過ぎると、それが原因で腐食が起きたり、栽培の途中でネギ坊主ができたりすることも。ほどよく肥料を施すのがポイントなので、施肥量には気を遣いますね」。

追肥機を使って肥料を施す阿久津さん。畝間に肥料を撒いた後、土寄せを行う。なお、元肥は、溝に肥料を撒く「溝施肥」がこの地域で一般的な方法だ。

「肥料のミカタ」については、こう所感を話す。

「リン酸成分が豊富な鶏糞を使用するので、その肥効量が明確な数値で表示されるのは、ありがたいですね。元肥の施肥量を決めるうえで参考になります」。

また、肥効量を加味した施肥量の把握は、肥料の無駄削減にもつながる。本アプリがもたらすこうしたメリットも、阿久津さんの琴線に触れたようだ。

「今後は、圃場ごとに施肥量を計算するなど、施肥の仕方にさらにこだわりたいと考えています。このアプリを使えば、畑ごとの施肥管理も手軽にできそうなので、期待しています」。

肥料のミカタとは?

今年春に登場した施肥量計算アプリ。施肥をする圃場の面積、施肥基準、使用する肥料の銘柄を入力するだけで、圃場あたりの施肥量が計算される。地図データを使った圃場面積の算出機能や、肥料の登録情報を活用して、スムーズに必要な情報を入力できるのもポイントだ。

農業総合情報サービス「つなあぐ」に会員登録し「つなあぐID」でログインすると、会員特典として、計算結果の保存機能などが使える。

生産したネギは農協に出荷するほか、道の駅やレストランに卸している。また、阿久津農園のオンラインショップでも販売。

「肥料のミカタ」の使い方

STEP1 圃場の面積も分かる!

トップ画面にある「施肥量の計算」ボタンをタップすると、圃場の面積や施肥基準などの入力欄がでる。圃場の正確な面積を把握していない場合は、「地図から選択」機能の活用を。

地図データ上で、圃場の部分を囲むかたちでピンを立てると、圃場の面積が算出される。

施肥基準とは、都道府県の農業試験場やJA(農業共同組合)などが提示している、作物の収量・品質を確保するための単位面積あたりの肥料成分量のこと。この肥料成分量(kg/10a)と、圃場の面積(㎡)を入力する。

STEP2 堆肥の肥効量も加味できる!

事前に堆肥などの有機質資材を投入した場合、その肥効量を算出可能。その肥効量が施肥量の計算に反映される。

アプリ上の「有機質資材を選択」ボタンをタップし、投入した堆肥の種類や投入量などを入力。圃場の位置を選択することで、その圃場の土壌中温度、水分が設定される。これらのデータから肥効量が計算される。

STEP3 成分含有率もラクに設定できる!

使用する肥料のN(窒素)、P₂O₅(リン酸)、K₂O(加里)の含有率を簡単設定。

肥料の入力欄にある「肥料を選択」ボタンをタップすると、キーワードや登録番号で肥料を探せる検索欄が表示される。キーワードもしくは登録番号を入力すると、使用する肥料がヒットし、その成分含有率が計算に利用される。

STEP4 優先する成分を選んで自動で計算!

「肥料銘柄登録」の画面には、「設計優先成分」の選択欄も。例えばNを選択すると、STEP1で設定した施肥基準のNの値を目標値として、施肥量が自動で算出される。

P₂O₅やK₂Oの値も施肥基準にあわせたい場合は、再度「肥料を選択」ボタンをタップし、追加する肥料を選択。加えてP2O5やK2Oを「設計優先成分」に設定すると、施肥基準の P₂O₅やK₂Oを目標値とした施肥量が算出される。

会員用機能

マイリストの利用枠が増加
「肥料のミカタ」では、任意の肥料を「肥料マイリスト」に登録できる。「つなあぐ」の非会員は、肥料を3つまで登録可能。会員になると、最大5つの肥料を登録でき、さらに便利に「肥料のミカタ」を使えるようになる。

施肥管理の効率がアップ
施肥量の計算結果は、「施肥量計算」画面にある「登録」機能を活用することで、保存可能。後日、保存した結果を閲覧できるうえ、数値などを変えて施肥量を再計算することもできる便利機能だ。

問い合わせ

住友化学株式会社運営[つなあぐ]


写真:松尾夏樹
文:緒方よしこ

AGRI JOURNAL vol.37(2025年秋号)より転載

Sponsored by 住友化学株式会社

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