ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは? メリットを専門家が解説

Q3 ずばり、ゲノム編集の
メリットって何?

人と環境への悪影響が少ないこと、短期間で品種の確立が可能であること、生産者・消費者が利益を享受できること。

ゲノム編集により得られる結果は自然界でも起こりうること、という点と密接に関係しているのですが、摂食した人の健康や環境に対して、悪影響を与える可能性が低いのが最大の長所です。ゲノム編集により生まれた作物は、従来的な手法で生まれた作物と区別がつかないという事実もあり、ゲノム編集された作物は相当程度に安全であると考えています。

またゲノム編集では、従来手法とは比較にならないくらいに短期間での育種が可能となります。種苗業界では「1品種10年」という言葉があるくらい、品種の確立には時間が掛かります。ところがゲノム編集は極めて確実性が高い技術なので、1年や2年といった短期間で品種を作出できると考えられています。短期間で優れた品種を続々と生み出せれば、当然のことながら生産者にとってもメリットが生まれますし、それによる恩恵は消費者の方にも届くはずです。



Q4 ゲノム編集の研究は
どこまで進んでいる?

研究室・実験レベルですが、既に高機能化した作物が作出されています。

最も有名なゲノム編集の成功例は筑波大学が開発したトマトです。ゲノム編集技術を用いて、血圧降下作用をもつ健康機能性成分として注目されているGABAを多く蓄積するトマトを作出したのです。ゲノム編集技術をトマトの分子育種へ利用した活用例であるとともに、育種技術としての有用性を示すものです。

また、理化学研究所・大阪大学・神戸大学らのグループでは、ジャガイモに含まれる有毒物質であるソラニンなどの生合成に関わる遺伝子を同定して発現を抑制し、ジャガイモの萌芽を制御できる可能性を発見しました。これは中毒の除去と、生産に関する課題解決の可能性を示しています。

このようにゲノム編集は、大学や研究機関といった研究室・実験レベルで進められており、技術的には、より効率的に切る・繋ぐ技術の確立を目指した研究が行われています。


Q5 ゲノム編集に関する
法整備の現状を知りたい

現在、ゲノム編集に関する法整備はされておらず、専門家が見解を述べている段階にあります。

日本においては、ゲノム編集を利用した育種に関する法整備は確立されておらず、環境省が専門家と意見交換を行っている段階です。そして、私たち種苗協会は、現段階ではその推移を見守る、という立場にあります。早急に導入して欲しい、とも考えていません。もちろんゲノム編集のメリットは理解していますし、少なからず期待していますが、消費者の方に受け入れられないのでは本末転倒だからです。種苗協会は、ゲノム編集に関するフォーラムの協賛をするなど、一般消費者の方に正しい知識を広めようと努めている方々の後方支援を行っています。



教えてくれた人

日本種苗協会会長
カネコ種苗株式会社代表取締役社長

金子昌彦氏


text: Reggy Kawashima

AGRI JOURNAL vol.09(2018年秋号)より転載



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