小規模・若手生産者を応援! セミオーダー感覚で選べる果物用ギフトパッケージ
2021/10/14
山形の老舗段ボール箱会社が、デザイン性を追求した果物用ギフトパッケージを開発。産地の記載や、小ロット注文も可能なWEBショップが今夏からスタートした。
果物ギフトの価値を高める
デザイン性を追求
まるで北欧テキスタイルを思わせるカラフルでかわいいデザイン。ここに生産地の県名を加えることで、さらにオリジナル感を高めることができる。そんな果物用ギフトパッケージを販売するWEBショップ「クリエイトシリーズ(CREATE SERIES)」が今年8月にオープン。1箱200円代から、小ロット注文も可能という手頃感も加わり、若手生産者を中心に人気が高まっている。
同ショップを運営するのは、今年創業100周年を迎える山形県の老舗段ボール箱製造会社「エスパック」(本社:山形県上山市)。同社ではこのシリーズを2013年から山形県内で展開。従来のパッケージとは一線を画す、今の時代に合ったデザインが口コミで評判を呼び、SNSなどで県外からも問い合わせが増えてきたことから、WEBショップの開設に至った。
「福島もも」「新潟西洋なし」など産地が入ることでオリジナル感を演出。シンプルながらもパッと目を引くデザインが好評。
「魅力的なデザインの箱であれば、贈る側も受け取る側も嬉しい気持ちになりますよね。それを形にしたのがこのクリエイトシリーズです。『果物のイメージアップにつながる箱を作りたい』という私たち制作側の思いだけでなく、若い生産者と交流する中で『自分たちが欲しいと思う箱がない』という声が多かったことも後押しになりました」と話すのは、常務取締役の佐藤健太郎氏。
同シリーズは、何の果樹か一目でわかるようシンプルかつ女性に好まれるかわいいデザインを意識。さらに産地もアピールできるよう、47都道府県の名称を入れられる。佐藤氏を中心に、20〜30代の社員が若い感性を活かしてデザインを担当し、製造までを一貫して同社で手がけることで、デザイン性はもちろん、価格や機能性を追求した。
スマホで手軽に注文できる
セミオーダーシステム
今回、WEBサイトを立ち上げるにあたり、重視したのは利便性だ。購入方法は実に簡単明瞭で、サイトから果物の種類や産地(47都道府県)を選択し、箱のサイズを選べば注文完了になる。「今までは、箱一つを選ぶのも選択事項が多すぎて時間や手間がかかった。それをできるだけ簡潔にし、全国どこからでもスマホ一つで手軽にオーダーできるよう工夫しました」と佐藤氏。箱は1セット200円代が中心価格帯になり、購入単位は200セットから。送料は無料のため、例えば200円代の箱を200セット買えば、5万円かからずに希望のデザイン・形状のケースが手に入るセミオーダーシステムになっている。
サクランボの箱は500g、700g、1kgの3サイズ。箱を開けた時に映えるよう、仕切りデザインも工夫されている。
ブドウは通常のデザインに加え、箔押しの高級感あるものを用意するなど、果物のグレードに応じて選ぶこともできる。
「オリジナルの箱を作るとなると、デザイン料をはじめ、少なくても1000セット以上で発注しなくてはならず、多大な費用や労力がかかります。その声を受け、200セットからの小ロット注文を可能にしました。また、箱はどの果物も3サイズに限定してコストを削減することで、手頃な値段も実現。小規模生産者や若い生産者を応援する意味でも利用しやすさにはこだわりました」と話すのは、営業部の髙橋大志氏。
現在、箱のデザインは2シリーズあり、素朴で温かみのある「栞-shiori-」と、シンプルで上品なデザインの「クラシック」を展開。制作可能な箱は8品種23パターンになる。利用者からの評判も上々で、「贈った先から箱がかわいいと喜ばれた」「他商品と差別化ができ売り上げが伸びた」という声が届いているそう。「特産品がこのパッケージを使うことで、さらに付加価値が高まれば」と佐藤氏は期待を寄せる。
段ボール箱会社ならではの
視点が生きた設計
同シリーズはデザイン性に目が行きがちだが、段ボール箱製造会社ならでは工夫も満載。技術力を活かし、箱の形状にもさまざまな工夫が施されている。「簡単にいえば、見た目がよく強度を保ちつつも、組み立てやすさや省スペース化を図ったデザインを採用しています」と髙橋氏。
デザイン性だけにこだわると、使い勝手や耐久性などが軽視されがちだが、同シリーズは製造側から発案された商品。そのため、箱のサイズも宅配便の定型内に収めるなど、細かい点にも配慮されている。そのこだわりは老舗会社の矜持ともいえるだろう。
ムダな材料は使わず、強度性を高めた設計に。折り畳むと平らになるため、スペースもとらない。
「『大切に育てた果物をお客様に喜んでもらいたい』という生産者の思いに応えたい。その価値を高める一つの術として、このクリエイトシリーズを役立ててもらえれば」と佐藤氏。
生産者と企業との思いが通じ合った箱がどんどん広がっていくことを期待したい。
DATA
PROFILE
株式会社エスパック 代表取締役社長
佐藤健太郎さん
1980年生まれ。山形県山形市出身。高校卒業後、約1年間、東南アジア諸国・ヨーロッパ諸国・アメリカでの生活を経験する。2015年「株式会社Create Works」を設立し、果樹ギフト専門のパッケージブランド「クリエイトシリーズ(CREATE SERIES)」を立ち上げる。2021年、株式会社エスパックのWEBショップよりクリエイトシリーズの全国販売を開始。
文:野上知子