この20年で農業は”こう”変わった。現代の農業で求められるようになったモノとは?
2019/09/06
農産物にいかに付加価値をつけ、同時の販路で売る開拓は当たり前となった。実需者や異業種も農業が生み出す商品やサービスに可能性を感じ、農業に参入したり、連携するビジネスを本格化させたりという時期を経て、いかに農業が変わったのだろうか? 農業ジャーナリストの青山浩子氏によるコラム(前編)。
農業ジャーナリストが感じ取る変化とは?
先日、知り合いの養豚経営者からこう聞かれ、答えに窮した。私は前職のコンサルティング会社を辞め、20年前から農業ジャーナリストとして、農業や農村を取材して記事を書いている。しかし、20年というスパンで、移り変わりを考えたことがなかった。質問に答えられなかったことが悔やまれ、自分なりの答えを出したいと思い、ある本を手にとってパラパラとめくってみた。生産現場を歩いて、雑誌や新聞に寄稿した原稿をもとに、私自身が書き下ろした「農が変える食ビジネス」という書籍だ。
2004年に発刊された本なので、正確にはいまから15年前だ。それでも、くだんの養豚経営者の質問に対する答えが見つかるのではないかと思った。ちなみに、各章はこんなテーマで構成されている。「企業の農業参入」、「流通改革(直売所ビジネスなど)」「外食・中食業者による産地の契約栽培」「種から食卓までをつなぐフードチェーン構築」「異業種との連携」「農村における6次産業化」「海外市場を見据えた展開」となっている。
新たな農業の「カタチ」への注目から
「中身」へ注目されるように
テーマに共通しているものは、新しいものづくり、そして新たな販路開拓だ。当時はコメを始め、過剰基調にある農産物にいかに付加価値をつけ、同時の販路で売るかが大きな課題だった。実需者や消費者に近づき、彼らのニーズに即したものを生産し、直接販売していこうという動きが活発だった。
さらに、農業者側からのアプローチだけでなく、実需者や異業種も農業が生み出す商品やサービスに可能性を感じ、農業に参入したり、連携するビジネスを本格化させたりという時期でもあった。直売所ビジネス、6次産業化、企業の農業参入などすべて新たな農業のカタチであり、カタチそのものが注目される時代だった。
15年経った今、これら(直売所ビジネス、6次産業化、企業の農業参入など)は珍しいカタチではなくなった。そしてカタチではなく、中身が求められるようになった。農産物直売所はいまや各地に生まれ、直売所同士の競争時代をいかにくぐり抜けるかが求められている。
6次産業化はうまくいっている人もいるが、そうでないという人も多い。企業による農業参入も、黒字化に至った法人もあるが、そうでない法人のほうが多いといわれる。カタチは出そろったが、それをどう活用し、農業で生計を立て、黒字化していくかという中身が重視されるようになった。これが、15年前からの変化の1つ目だ。
PROFILE
農業ジャーナリスト
青山浩子
愛知県生まれ。1986年京都外国語大学卒業。1999年より農業関係のジャーナリストとして活動中。2019年筑波大学生命環境科学研究科修了(農学博士)。農業関連の月刊誌、新聞などに連載。著書に「強い農業をつくる」「『農』が変える食ビジネス」(いずれも日本経済新聞出版社)「2025年日本の農業ビジネス」(講談社現代新書)など。現在、日本農業法人協会理事、農政ジャーナリストの会幹事などをつとめる。2018年より新潟食料農業大学非常勤講師。