「農業は夢ある職業…」元自衛隊の4Hクラブ岐阜県会長が語る、農業への”新風”とは?
2019/09/30
国内の各地に存在する「農業青年クラブ(以下、4Hクラブ)」。県によって農業の特色があり、「4Hクラブ」の活動内容や方針もさまざまだ。本企画では会長へのインタビューをつうじ、各地の「4Hクラブ」の活動内容を紹介するとともに、会長が考える農業の極意や魅力を伝える。第一回目では、「岐阜県4Hクラブ」の活動と、28歳にして会長に就任した若手農家・山田裕一朗さんをフィーチャーする。
メイン画像:「岐阜県4Hクラブ」の会長・山田裕一朗さん
農業は、やりがいを得られる仕事。
若手にも魅力を伝えたい
飛騨川と木曽川を眼下にのぞむ、岐阜県・山之上町。風とおしと日当たりがいいこの地域では、梨と柿の栽培が盛んに行われており、地域内におよそ100軒もの果樹農園がある。今年4月、「岐阜県4Hクラブ」の会長に就任した山田裕一朗さんも、山之上町で果樹農園を運営する一人だ。
山田さんは、家族が営む「マル幸農園」におよそ4年前に就農。その直前まで自衛隊に勤務していたという、少々異色な経歴の持ち主だ。しかし、自衛隊での経験が、農業にやりがいを見出すきっかけの一つになったと振り返る。
「自衛隊ではやるべき仕事内容が決まっていて、それらを全うすれば、毎月決まった額の給料がもらえます。しかし農業の場合、農作業をこなせば必ず結果が出るわけではないうえ、報酬すら得られない場合もあります。客観的にみて農業は厳しい職業ですが、言いかえれば、自分の能力や経験が大きく影響する職業だということ。自ら情報収集し、的をえた方法を実践すれば、理想の結果が得られると気がついてから、日々やりがいをもって仕事に取り組むようになりました」
「マル幸農園」では、個人客を対象とした売買をメインで行っている。そのため、新たな顧客の獲得と既存客へのフォローが経営の鍵を握るが、公式ホームページの設立やSNSの活用をつうじ、これらを達成しつつあるという。
最高の状態で顧客のもとへ届けるため、発送のタイミングにもこだわっている。
“農業に、新しい手法やツールを取り入れたい”と話す山田さん。今後「岐阜県4Hクラブ」にも、“新風”を吹き込む予定だ。
「まずは、研修の機会を増やしたいと考えています。今年の11月には、IT機器を活用した栽培方法や先進的な労働環境を取り入れている農家へ、研修にいく予定です。また、近年、ビジネスチャンスを求めて異業種から農業に参入する人が増えつつありますが、そうした方々と意見交換する場も設けたいですね」
また、今後縮小していくであろう、地域の果樹栽培に対しても思うところがあるようだ。
「すでに各地で問題視されていますが、農家の高齢化が進んでいます。あと10年もすれば、山之上町の果樹農園の数も、現在の半分くらいになってしまうでしょう。現在のところ、『梨といえば山之上』というブランドイメージが確立されていますが、果樹農園の数が減ると、そのイメージも崩れてしまいます。地域がもつブランドイメージを守り、農業を発展させるには、若手就農者の存在が必須だと思っています」
農業に若手を呼び込む微々たるきっかけになればと、「岐阜県4Hクラブ」の活動の一環として、農大生との交流会も行っているそう。もちろん、そうした場では、農業の魅力を存分にアピールするのを忘れない。
「今はひと昔前と違い、農作業の効率化や販売方法の多様化が進んでいます。その一方、ブランド力があるにも関わらず、後継者がいない地域が、全国にたくさんあります。つまり、農業に参入すれば、大きなチャンスをつかめる可能性があるということ。ぜひ、思い切って農業界に飛び込み、先駆者として新しい時代を作ってほしいと思います。すごくワクワクできるはずですよ!」
「岐阜県4Hクラブ」は、毎年10月末に開催される「岐阜県農業フェスティバル」にも参加。県内の生産物の魅力を広めている。
DATA
Text:Yoshiko Ogata