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生産者の取り組み

世界で広まるりんごの「クラブ制」とは? 生産者や販売業者を守る工夫

りんごの季節が到来した。スーパーの売り場には、赤色や黄色のりんごが並んでいる。ポップには産地と品種が併記されている。こうした「産地+品種」という売り方が永遠に続くのだろうか? 農業ジャーナリストの青山浩子氏によるコラム(前編)。

ピンクレディー、ガンジーって?

2019年10月8日(火)、弘前大学(弘前市)で開催された講演会は、りんごの将来を考えるきっかけになった。

講演会のタイトルは「りんご講演会~世界のりんご生産とクラブ制品種ピンクレディーの世界戦略~」。会場は国内外のりんご関係者で埋まっていた。

クラブ制とは、りんごの新品種を生産・販売するライセンスを会員だけに与えるシステムで、既に1990年代から始まったという。

近年、クラブ制りんごの生産量は年々増え、ピンクレディーのほか、ガンジー、ジャズ、エンンヴィなど数十種類ある。これらのネーミングは品種名ではなく、商標登録されたブランド名だ。



許可された人だけが
生産・販売できるりんご

クラブ制では、苗木を入手し、栽培ができるのは会員となった生産者のみだ。また出荷されたりんごの販売は、会員の販売業者だけに許可される。

会員以外は許可なく、苗の入手や生産、販売ともにできない。苗木の出回り量及び、生産されたりんごの販売量がコントロールされるため、りんごの値崩れが起きにくく、りんごの単価も安定する。これにより、生産者及び販売業者の利益が確保されるという仕組みだ。

ブランドによって、一国だけで生産・販売されるものもあれば、複数の国をまたいで販売されるブランドもある。



日本の小売店でもジャズやエンヴィはすでに販売されている。

私はジャズを買ったことがあるが、小ぶりのりんご3個が縦長のプラスチックケースに入り、しかもトレースができるように製造番号のようなシールが貼ってあった。国産のりんごとは明らかに異なる売り方だ。

クラブ制は、ブランドごとに統一した品質管理やマーケティングをおこなっているというが、如実に商品に現れている。

クラブ制りんごの生産は拡大

クラブ制りんごの研究をしている弘前大学の黄孝春教授によると、ピンクレディーの生産量は世界のりんご生産量(2015年)の約2.6%。比率だけを見ればほんの一部だ。

しかし今回、ピンクレディーを生産している国の関係者の話を聞いたことで、ピンクレディーを含むクラブ制りんごのシェアは、今後間違いなく増えるだろうと感じている。

PROFILE

農業ジャーナリスト

青山浩子


愛知県生まれ。1986年京都外国語大学卒業。1999年より農業関係のジャーナリストとして活動中。2019年筑波大学生命環境科学研究科修了(農学博士)。農業関連の月刊誌、新聞などに連載。著書に「強い農業をつくる」「『農』が変える食ビジネス」(いずれも日本経済新聞出版社)「2025年日本の農業ビジネス」(講談社現代新書)など。現在、日本農業法人協会理事、農政ジャーナリストの会幹事などをつとめる。2018年より新潟食料農業大学非常勤講師。


<参考資料>
黄孝春「世界におけるリンゴ新品種のライセンス/ビジネス」弘前大学人文社会科学部『人文社会科学論叢』第7号(2019年8月30日発行)

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