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【連載 4Hクラブ員の活動報告】一般社団法人結成で地域農業の課題解決へ! “循環化・省力化・魅力化”の挑戦

熊本県八代市でい草農家を営む溝口善大さんは、地域の人口減少や資材高などの課題解決に向け、若手農業者たちと「Fam Lab8(ファムラボエイト)」を結成! アイデア溢れるその取り組みとは?

<目次>
1.人口減少、資材高、販売安 地域課題への挑戦
2.アグリで世界を面白く!一般社団法人Fam Lab8

 

人口減少、資材高、販売安
地域課題への挑戦

熊本県八代市は、全国1位の“い草”の生産地だ。しかし畳の需要は年々減少し、1989年5000戸だったい草農家数は、2025年現在214戸に減少。親子三代で営むい草農家の長男として生まれた溝口さんは、地域の特産物であるい草を広め存続させるため、地域の若手農業者と様々な活動を行っている。


畳表作りの様子

溝口さんが住む八代市は、2022年からスマート農業実証事業を行っている。そこで、集められたのが八代地域の4Hクラブの会員やJA青年部だ。

「地域課題を話し合い、ドローンや環境制御装置といったスマート農業を取り入れることで課題解決を模索する、という趣旨でスタートしました。ですが、集まったメンバーは様々な作物・経営体だったので、一概にスマート農業ですべての問題が解決するわけではありません。すべての農家に共通する『人口減少』『資材高』『販売安』の3点を解決することが、八代地域の振興につながる、と考えが発展していきました」。


畳表作りの様子

アグリで世界を面白く!
一般社団法人Fam Lab8

これをきっかけに同志9人が集まり昨年11月に発足したのが、一般社団法人Fam Lab8だ。「アグリで世界を面白く!」を合言れ、自分にあった分野に所属し活動を行う。その中で溝口さんが所属するのは、“魅力化”の分野だ。

「活動の一つとして、アグリスポーツ大会を行っています。これまでに、『いちごのパック詰め競技』や移植機を使用した『ブロッコリー移植早植え』『い草の杭打ち競技』『米の品種当て競技』などを行いました。一般の方や市役所職員などを招待し、農業体験を楽しんでいただきながら、出荷作業や農作業の大切さをお伝えしています。また、SNS通じて、農業の魅力を一般の方に向けて発信しています」。


アグリスポーツ大会「い草の杭打ち競技」

さらに現在は、八代港に発着するクルーズ船ツアーの一つとして農業体験の実施をツアー会社と協議している。「八代地域の干拓の歴史と畳文化を知るツアー」と題して、い草を使ったしめ縄づくりやミニ畳作り、い草茶の試飲などを予定しているとのことだ。

また“ 環境化”の分野では、Fam Lab8 代表の林孝憲さんが、生ゴミを堆肥化して利用する地域循環型農業を率先して行っている。

「現在は、食品工場の生ゴミを堆肥化し、メンバーの圃場で使用実験を行なっています。すでに、土壌改良材としての効果が出ています。ゆくゆくは八代全体の生ゴミを堆肥化できる発酵プラントを作り、発酵熱も利用していきたい」と林さんは意気込む。

“省力化”の分野では、ChatGPTを活用した農業用デジタルツールの導入を進めている。バナナ農家の高木明日香さんは「今年2月に農業用プログラミングやエクセルでの請求書発行をChatGPTで行う研修を行いました。デジタルに強い人材を地域内で育成し、スマート農業で省力化を進めていきたい」と話す。さらに今後は、農業生産者の業務が楽になり、誰でも利用できるツールの作成も目指していくという。

これからの活動をさらに加速させるべく、Fam Lab8 は昨年12月、活動拠点づくりのためにクラウドファンディングを実施。今年3月には、支援金300万円を達成した。支援金の使い道は、拠点となる古民家の改装などに当てられる。「ふるさとを良くしたい!」という思いで集まったFam Lab8の活動から、これからも目が離せない。


一般社団法人Fam Lab 8メンバー
左から桑原健太さん、林孝憲代表、溝口善大さん、高木明日香さん

 

PROFILE

八代4Hクラブ

溝口 善大さん


2001年熊本県生まれ。2022年からい草農家4代目として新規就農。親子3代でミゾグチタタミファクトリーを営む。


写真・文:株式会社LaTo

AGRI JOURNAL vol.35(2025年春号)より転載

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