【農研機構】NARO生育・収量予測ツールにトマト糖度制御機能を追加

農研機構は、「NARO生育・収量予測ツール①果菜類」に搭載されているトマトの収量予測機能にトマトの糖度を制御する新たな機能を追加した。制御施設栽培トマトの糖度予測や制御を行い、生産量と品質の両方を向上させられ、収益の向上が期待できる。

<目次>
1.品目ごとの収量予測APIを提供
2.施設栽培トマトの糖度予測や制御が可能に
3.トマト糖度制御機能開発の背景

 

品目ごとの
収量予測APIを提供

農研機構は、作物の安定生産と生産性の向上を目指して「NARO生育・収量予測ツール」を開発した。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として農業データ連携基盤「WAGRI」を通じて利用できる。

これまでに、①果菜類(トマト、キュウリ、パプリカ)、②イチゴ、③露地野菜(キャベツ、レタス、ブロッコリー、葉ネギ、ホウレンソウ、タマネギ)の計10品目について、品目ごとの収量予測APIを提供している。環境データと葉面積などの生育データをもとに収量を予測することができる。

施設栽培トマトの
糖度予測や制御が可能に

トマト品質制御機能の利用イメージ(出典 農研機構野菜花き研究部門)

このほど、「NARO生育・収量予測ツール①果菜類」に搭載されているトマトの収量予測機能にトマトの美味しさを左右する糖度を制御するための新たな機能を追加した。収量のシミュレーション機能に、糖度の予測と制御機能を追加することにより、これまで、収量減少リスクの回避のために高い技術と経験が必要であった高糖度トマトの生産であっても、目標に合わせた糖度と収量の制御が同時に可能となった。

具体的には、植物工場などの施設栽培トマトにおいて、糖度の予測情報、目標品質(糖度と障害果発生率)を達成するために必要となる最適な環境制御の情報をAPIとして提供する。この機能の提供は、2025年3月31日に開始した。

「WAGRI」の利用会員登録(1年間無料、その後有料)と、「NARO生育・収量予測ツール①果菜類」のAPI利用を契約している人(利用開始1年は試験利用・開発期間として無料)が利用可能で、トマト品質制御機能の利用に伴う追加料金は不要。

ICTベンダーは、このAPIを活用することで、自社の栽培管理システムにトマト品質予測や制御機能を組み込むことができる。また、農業者や法人は、ICTベンダーが提供するシステムやサービスを利用することで、施設栽培トマトの糖度予測や制御を行い、生産量と品質の両方を向上させられ、収益の向上が期待できる。

トマト糖度制御機能
開発の背景

高糖度トマトは、高単価なブランドトマトとして取引される魅力的な作物だが、その栽培には多くの課題がある。一般的な大玉トマトの糖度は5度前後だが、ブランドトマトのように糖度8度以上に高めるには、適切な栽培環境を整えつつ、トマトに適度なストレスを与える必要がある。

しかし、糖度を高めるためのストレス管理は非常に難しく、適切なバランスを欠くと、糖度は高まるものの、果実が割れたり黒く変色したりする障害果が発生し、可販果が減るリスクがある。さらに、糖度と収量はトレードオフの関係にあり、糖度を追求しすぎると生産量が安定しなくなるため、高糖度トマトの栽培は農業経営としてはリスクが高い栽培とされている。

高糖度トマトを安定して栽培するためには、日々の栽培環境を適切にコントロールし、トマトに過度なストレスを与えないよう、栽培環境の変化が果実品質(糖度や障害果発生率)に与える影響を予測しながら、長期的な視点で栽培計画を立てることが重要である。

トマト収量と糖度のトレードオフの関係(出典 農研機構野菜花き研究部門)

上図はトマトの週間収量とその時の糖度の関係を示している。同一の色が同じ品種のデータ。一般的に同じ品種で高糖度向け栽培を行うと収量が下がる。多くの場合、赤色の品種と同じグラフの傾きで糖度と収量の関係が変化するが、品種により、糖度が上がりにくく収量が下がりやすいもの(黄土色)や、糖度が上がりやすく収量の落ち込みが少ないもの(緑色)が存在する。

糖度制御機能を利用して栽培した高糖度トマト収穫の安定性(出典 農研機構野菜花き研究部門)

定植日前に大玉トマト(CF桃太郎ヨーク)で糖度制御機能の計算を行い、定植日以降の栽培環境を事前に計画した(栽培環境事前設定)。その後、計画通りに栽培環境を厳密にコントロールして実際に収穫された果実の糖度を週ごとに緑のプロットで示した。この養液ロックウール栽培では目標糖度を8度と設定したところ、高糖度栽培が特に難しい夏季の栽培だったが、週ごとの平均糖度の誤差はすべて5%以内に入り、障害果の発生率は10%以下となった。

DATA

農研機構 施設栽培トマトの糖度を予測・制御可能に


取材・文/アグリジャーナル編集部

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