製品回収の50%以上は表示ミスが原因! 「食品表示法」正しく理解していますか?
2019/09/22
「食品表示法」の改正に付随して、新しいアレルギー表示、またすべての加工食品と添加物の栄養成分を表示することが義務化される。消費者が安心して商品を選べるよう、義務表示の内容を正しく理解しよう。
製品回収の50%以上は
表示ミスが原因
製品回収の原因のうち、50%以上を占めるのが表示ミス。さらにそのうち、アレルゲン表示が占めるのは42%。つまり、アレルゲン表示が不適切であることによる製品回収が、全体の20%以上を占めているのだ。
●製品回収の理由別内訳(2017年)
●表示ミスによる製品回収の内訳(2017年)
出典:「食品事故情報告知ネット」一般社団法人食品産業センター公表資料より
株式会社津々浦々作成
Point1
アレルギー表示
卵や小麦、かにをはじめ、多種多様に存在するアレルゲン。これらのアレルゲンに関する表示が間違っていた場合、一部消費者の健康が大きく損なわれる可能性がある。実際、国内の食品リコール事例のおよそ25%が、アレルギー表示の間違いに起因するというデータもある。
消費者が安心して商品を選べることを主目的に、「食品表示法」の改正に付随して、新しいアレルギー表示が義務化される。おもな新ルールは、特定加工食品およびその拡大表記が廃止され、必ず、含まれるアレルゲンを表示すること。
例えば、オムレツには卵、ロールパンには小麦が含まれていると容易に理解できるため、従来は「オムレツ→卵を含む」「ロールパン→小麦を含む」表示を省略できたが、このような表記は廃止される。代わりに、アレルゲンを含む原材料については、「オムレツ(卵を含む)」、「ロールパン(小麦を含む)」といったように、逐一その旨を明記することが求められる。または、パッケージ内の「一括表示欄」の原材料名の末尾にアレルゲンとして「一部に卵(小麦)」を含むと記載する。
ちなみに、表示が義務づけられるアレルゲン、表示が奨励されるアレルゲンは、従来のものと変わらない。
省略表示も可能!
二種類以上の原材料又は添加物を使用し、同一の特定原材料等が含まれている場合は、そのうちいずれかに特定原材料等を含む旨または由来する旨を表示すれば、それ以外の原材料または添加物のアレルゲン表示は、省略することができる。
【省略した場合の表示例】
【個別表示の表示例】
【一括表示の表示例】
※太字は、特定原材料等を含む食品です。
※下線は、代替表記及び拡大表記である食品です。
※実際の表示においては太字にしたり、下線を表示する必要はありません。
出典:「早わかり食品表示ガイド( 平成30年10月版・事業者向け)」 消費者庁
Point2
栄養成分表示
「食品表示法」の改正により、すべての加工食品と添加物の栄養成分を表示することが義務づけられる。表示が義務づけられた栄養成分は、「熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(※食塩相当量と表示)」の5つ。また、表示するよう勧められている栄養成分として、飽和脂肪酸や食物繊維がある。
一般的な食品の栄養成分は、文部科学省が運営しているwebサイト「食品成分データベース」で検索可能だ。
例えば、イチゴと砂糖のみで作られた「イチゴジャム」であれば、自身での検索や計算によって、栄養成分を割り出すことができる。しかし、食品に含まれている水分の蒸発や、調理に用いた水や油の吸着、重量の変化などの調理加工による影響が大きい場合、自身での割り出しは困難を極める。また、誤表示につながる可能性も高いため、専門機関に分析を依頼するのが賢明だ。
保健所に依頼すると、場合によっては結果が出るまでに数週間を要するため、「株式会社津々浦々」のような一般企業に依頼するのもおすすめ。コストも1食品あたり2万円前後で収まるケースが多い。
栄養成分の表示方法
表示が義務となっている栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム(食塩相当量に換算したもの))の量及び熱量については、右の基準別記様式2に則って表示。それ以外の栄養成分もこれと併せて表示する場合には、基準別記様式3に則って表示。
また、ナトリウム塩を添加していない食品にナトリウムの量を表示する場合は、ナトリウム塩を添加していない場合の表示例のように、「ナトリウム(食塩相当量)」等に代えて表示する。
・義務表示となっている栄養成分以外で表示しないものについては、この様式中の当該成分を省略する。
・糖質または食物繊維の量のいずれかを表示する場合は、糖質及び食物繊維の量の両方を炭水化物の内訳として表示する。
【おさらい】すべての食品に表示義務がある!
農産物の表示概要
●表示事項…「名称」「原産地」等
玄米及び精米の表示概要
●表示事項…「名称」、「原料玄米」、「内容量」、「調製年月日、精米年月日又は輸入年月日」、「食品関連事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」
畜産物の表示概要
●表示事項…「名称」「原産地」等
水産物の表示概要
●表示事項…「名称」「原産地」等
加工食品の表示概要
●表示事項…「名称」、「保存の方法」、「消費期限又は賞味期限」、「原材料名」、「添加物」、「原料原産地名」、「内容量又は固形量及び内容総量」、「栄養成分の量及び熱量」、「食品関連事業者の氏名又は名称及び住所」、「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」等
教えてくれたのはこの人!
株式会社津々浦々
森崎秀峰さん、小林真由子さん
「地域と共に、食の未来をつくり、届ける」をコンセプトに、食品会社へのコンサルティング事業、地域産品の食品販売支援事業などを手がける。商品情報をバイヤーに発信するデジタルカタログ「あきnow」も運営。
text: Yoshiko Ogata
AGRI JOURNAL vol.12(2019年夏号)より転載