<若手農家の挑戦>移住者を呼び込む環境づくり
2018/03/09
一目ぼれした村で生活するためスタートした農業は、順調に売り上げを伸ばしている。そして、田畑さんが地域を守るためにはじめたもう一つの仕事は、集まる人々に笑顔と感動を与えていた。
移住者が働きやすい環境をつくる
集落で暮らすためには、お金を稼ぐ仕事と、地域を守る仕事の両立が大切だ。前者を田畑さんは、怒田集落の気候特性を生かして高付加価値をつけたトマト栽培で実現した。後者は、たとえば山を守るための間伐作業や、耕作放棄地の手入れなど時間と労力のかかる仕事が多岐にわたる。
当初は、その作業量の多さに気が乗らないこともあったそうだ。しかし、その一つひとつが地域を守ることに繋がると理解できたとき、喜びに変わったという。
しかし、集落を維持するには若い人の力が絶対的に不足している。「一緒に地域を守ってくれる仲間を作りたい」。そのためには、移住希望者が生活できる環境を整える必要がある。
怒田集落では、1家族につき約150万が稼げれば基本的には生活が成り立つ。田畑さんは、これまで自身の培ってきた仕事のノウハウを伝授することで、10年間で10家族ほどを受け入れたいと考えている。景観の保全に配慮しながら、トマト栽培で生計を立てることが可能な数値を目標としている。
ここにしかない魅力で人々を呼び込む
また、怒田集落の魅力を伝える取り組みにも力を入れて行く予定だ。
これまで、地域住民から幾度となく耳にしていた「昔の盆踊りは楽しかった」という言葉。それなら復活させようと提案したところ多くの賛同を得ることとなった。そして2016年の夏、半世紀ぶりに盆踊りが復活した。うわさを聞きつけた近隣住人や、田畑さんの大学時代の仲間など、200人以上が集まり大いに盛り上がった。
2017年には、怒田住民と大学の先生等と「NPO法人ぬた守る会」を設立。活動内容は、大きく分けて3つ。盆踊りの計画を立てる「盆会」。集落をより美しくする「花会」。人が自然と集まってくる場所を作る「雲会」とした。「雲会」では、クラウドファンディングを活用し100万の資金調達を達成。人々が集まる心地よい場所づくりの資金に当てられる。
5月・10月の早朝、息をのむほど美しい雲海が見えるのも怒田集落の大きな魅力だ。恵まれた自然環境を資源に、観光客の受け入れ体制を整えていくことが、これからの大きな課題となる。
「この集落にある価値を見つけだし、伝えることで、美しい怒田集落の景色と住人の笑顔を守っていきたいと思います」。
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photo: Kentaro Kumon text:Tomoko Kotaka