【事例紹介】農福連携~企業・福祉施設・行政の取り組み
2018/04/10
福祉施設による
農福連携の取り組み
【事例②】株式会社創心會・株式会社リンクスライヴ・農業生産法人ど根性ファーム(岡山県)
株式会社創心會の二神代表は、作業療法士として、高齢者や障がい者の方々へ訪問リハビリの取り組みを開始し、岡山・広島・香川の3県で医療・看護・介護・リハビリなどの在宅リハビリケアサービスを提供している。
二神代表は様々な利用者と出会うなかで、リハビリの意味合いだけでなく、「精神的にも経済的にも充実した活動が必要ではないか」と考えた。そして、障がいを持った方々のための就労支援事業を始める決断をし、平成23年度から「株式会社リンクスライヴ」と「農業生産法人ど根性ファーム」を立ち上げた。
今まで“リハビリテーション”を専門に行ってきただけに、「リハビリによって活動能力が高まっても、実際には社会参加が叶わない状況」に以前から課題を感じていた。そこで地域と密接な繋がりを持つ「農業」に注目した。
農業は様々な作業があるため、リハビリテーションの観点からも、それぞれの利用者に合わせた作業が見い出せる上、自然を身近に感じられることからの「癒しの効果」が期待できると考えたのだ。
創心會・作業の様子
そこで創心會のグループとして、株式会社リンクスライヴで障がい者の就労支援を行い、農業生産法人ど根性ファームで就労を支援するための生産基盤を形成した。
平成29年度には、これまで福祉的就労訓練(就労継続支援※1B型)であったリンクスライヴの障がい者の方々を、福祉的障がい者雇用(就労継続支援A型)にまで変革することができたという。これは、“リハビリテーション”から始まり、医療、福祉、農業と、自社グループ内で専門スタッフが連携して取り組む仕組みを作ってきたからこそ。ここに、二神代表の信念が感じられる。
※1 就労継続支援:企業等に就労することが困難な障害のある方に対して、雇用契約に基づく生産活動の機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練などを行う。雇用契約を結び給与が支給されるA型と、雇用契約を結ばずに生産活動によって得た利益を工賃として配分するB型がある。
【事例③】社会福祉法人茶の花福祉会 (埼玉県)
茶の花福祉会は1979年設立、埼玉県の西部地区(所沢市・入間市・狭山市)を拠点に、入所型施設、通所型施設、就労継続支援事業所、グループホームなど、30以上の施設を管理・運営している。
各施設の対象者と利用目的は様々だが、高橋理事長は、「障がい者の方々の自立」を目的および理念とし支援を行っている。
そのなかで就労継続支援B型にて農作業を行っており、ジャガイモ、白菜、大根、ネギ、トマトなど、季節に応じた野菜を栽培している。職員が機械で掘り起こしたジャガイモを、利用者(障がい者)が手で拾い集めたり、それらをサイズや納品先ごとに分けるなど、それぞれの利用者に合わせて、職員が作業のサポートを行っている。
茶の花福祉会・作業の様子
作業スピード等は人によって異なるが、班のメンバーで補完しあうような段取りを職員が取ることで、皆で協力する喜びや達成感を感じてもらえている。また、日中にしっかり体を動かすことで気持ちよく眠りにつくことができ、生活リズムや気持ちも安定するといった効果もあるようだ。
福祉施設が利用者のために農作業を取り入れることは、様々なメリットがある一方、できあがった野菜の販売先が確保できないケースも多い。一生懸命野菜を育てても売れなければ、彼らの給料や工賃にはならないので、とても重要な課題だ。
高橋理事長はその点を考慮し、できあがった野菜を同法人で運営している直売所で販売している。この直売所は、就労継続支援A型事業所であり、利用者の訓練場所でもある。また、この直売所に併設されているうどん屋や、そのほか同法人で経営している複数の飲食店にも、できあがった野菜を食材として供給している。
同法人で運営している直売所
自立とは、日常生活におけるサポートだけではなく、経済的な意味合いも含んでいる。マーケティングを考慮した運営を行っている点が、同法人の強みと言える。