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生産者の取り組み

畑でネットを使いたい! 通信手段や活用方法など、個人農家のためのスマート農業導入ステップ

ベンチャー企業出身農家によるコラム『マシュー農LABO』。今回は、個人農家のためのスマート農業の第一歩。「畑にもネットがあれば」――。 畑の“見える化”から作業効率化、データに基づいた栽培管理まで可能に、IoT活用のステップを解説。

<目次>
1.なぜ畑にインターネットが必要なの?
2.STEP1:まずは畑の電波状況をチェック!
3.STEP2:通信手段を選ぼう
4.STEP3:実際の設置で注意すべき2つのポイント
5.STEP4:IoTセンサーで畑を「見える化」しよう
6.まとめ:今日からできる第一歩

 

なぜ畑にインターネットが必要なの?

こんにちは!前回までNotebookLMというGoogleのAIサービスについて解説させていただきました。

※第3回コラムはこちら

今回からはインターネットについてです。

「畑にネット環境があればな…」と思ったことはありませんか?私は就農当初からネット環境の必要性を感じていました。なぜなら、畑でインターネットを活用することで、これまで難しかった3つの大きな変化が起こるからです!

1. 畑の「見える化」
離れた場所から畑の状況をリアルタイムで確認できるようになります。何度も足を運ぶ手間が省け、日々の労働負担が大幅に軽減されます。

2. 作業の「自動化」
水やり、施肥、温度管理などを自動で行うシステムと連携でき、作業効率が飛躍的に向上します。

3. データに基づく「科学的農業」
土壌状態、気象データ、生育状況などを分析することで、経験と勘に頼りがちだった農業を、データに基づいた最適な栽培管理へと進化させられます。就農して7年目となった今経験と勘の重要性も感じました。

特に個人農家にとって、限られた人員と時間で生産性を最大化し、収益を安定させるための強力な武器となります。

STEP1
まずは畑の電波状況をチェック!

畑でインターネット環境を整える第一歩は、スマートフォンで畑の電波状況を確認することです。携帯電話ネットワーク(4G/LTE、5G)の電波が届くかどうかを実際に現地で確認してみましょう。電波が弱い場合は、別の方法や電波改善策を検討する必要があります。

STEP2
通信手段を選ぼう

【おすすめ1】手軽で万能!モバイルデータ通信
工事不要で今すぐ始められるのがモバイルデータ通信の最大のメリットです。

【ポケットWi-Fiの活用法】
・「ポケットWi-Fi」や「LTEルーター」で検索して機種を選ぶ
・動画や画像送信にも対応できる万能タイプ
・ハウスなどの施設で、電源もあり雨も降ってこないような場所であれば電源を差すだけのWi-Fiルーターもおすすめ


【月々の費用を劇的に抑える格安SIM活用術】
多くの人が知らない重要なポイントがあります。IoTセンサー(温湿度、土壌水分など)が送信するデータは、数値やテキストといった非常に少ないデータ量だということです。

そのため:
・月額数百円〜1,000円程度の低容量プランで十分運用可能
・高額なデータプランは不要
・主要な格安SIM:IIJmio、NUROモバイル、LINEMO、楽天モバイルなど
実例:筆者はLINEMOで月額990円に抑えています。

【おすすめ2】センサー特化!超低コストLPWA
LPWA(Low Power Wide Area)は、IoTセンサーからの少量データ送信に特化した技術です。

メリット
・低消費電力で広範囲に通信可能
・多くの圃場を同時にモニタリングしたい場合に有効
デメリット
・使えるデバイスが限られている
・初期費用が数十万円と高額なサービスが多い

・代表的なサービスSONY ELTRES
・判断基準: 数カ所のモニタリングならポケットWi-Fi、多数の圃場を管理するならLPWAを検討

STEP3
実際の設置で注意すべき2つのポイント

1.給電問題の解決策
畑には電源がないため、ソーラー充電が最も現実的です。
【推奨構成】
・ソーラーパネル
・バッテリー
・充電コントローラー
・USB給電対応のモバイルルーター

2. 耐候性対策は必須!
畑は雨、風、直射日光、土埃など過酷な環境です。
【必須条件】
・屋外対応・耐候性を謳っている機器
・防水・防塵の保護等級(IP66やIP67など)を満たすもの
・防雨型のウォルボックスなどでの保護

失敗例:安価なセンサーを簡易防水ケースに入れただけで故障は良くある失敗例です。
筆者も何台も簡易防水の機器をだめにしてしまいました。。機器選びは慎重に!

STEP4
IoTセンサーで畑を「見える化」しよう

代表的なセンサーと活用法

土壌センサー 土壌の水分量・pH・肥料濃度を測定→適切な水やり・施肥の判断
温度・湿度センサー ハウス内環境をリアルタイム計測→換気扇・暖房の自動制御
CO₂センサー 二酸化炭素濃度を測定→光合成効率の向上
水位センサー 水田・貯水タンクの監視→水管理の省力化・防災対策
日射量・照度センサー 光量を調整→遮光カーテンや補光LEDの自動制御
サーモカメラ 家畜の体温計測→健康状態の把握

監視カメラで安心・安全対策

【3つの効果】
・盗難・獣害対策:不審な動きを検知してスマホに通知
・生育状況の確認:リアルタイムでの成長監視
・AI機能:イノシシなどの獣害対策として、自動識別して威嚇・追い払い

1つの機器で複数のメリットを享受できるため、投資対効果が高く個人農家にもおすすめです。

マシューおすすめのセンサー

様々なセンサーがありますが、コストと機能を両立し、非常に使いやすいのがSwitchbotのセンサーです。
筆者もこのセンサーを活用させていただいています。
特に防水温湿度センサーは、価格も手頃でスマホアプリも非常に見やすくなっており、おすすめです。CO₂センサー搭載の温湿度計などもあります。
利用にはハブと言われる、各デバイスをインターネットにつなぐ機器が必要ですがアプリの操作に従って簡単に接続できますので、そこも農家にとっておすすめのポイントです。

まとめ
今日からできる第一歩

畑でのインターネット利用は、もはや夢物語ではありません。あなたの畑の状況や予算に合わせて、無理なく始めることができます。

具体的な行動ステップ

1.スマホで畑の電波状況をチェック
2.どんな情報を「見える化」したいか具体的にリストアップ
3.予算に応じて通信手段とセンサーを選定
4.小さく始めて段階的に拡張

初期コストを抑えつつ、一歩ずつスマート農業を導入することで、あなたの農業はもっと楽に、もっと豊かになります。

労働負担の軽減 → 生産性の向上 → 儲かる農業への第一歩を、今日から踏み出してみませんか?

筆者がDIYで作成したWi-Fiシステム構成の詳細な設置方法については、筆者のnote記事もご参照ください。「畑でインターネットを使える👍️汎用型wifi通信セットができた!!!」

 

次回予告:自分だけの収穫量アプリを簡単に作れる時代!?GoogleのAppsheetを活用しよう!

 

プロフィール

藤井マシュー武雄

宮崎県新富町にて、7年前に就農。現在はさつまいもを6ha,大根や人参などの露地野菜を1ha栽培しながら、さつまいも観光農園 GOOD TIME FARMを運営。収穫する喜びを多くの人に体験してもらおうと、日々活動しています。GOOD PEOPLES代表。
HP:https://gdps.jp

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