憧れの自動運転!トラクター自動化製品まとめ 【スマートトラクター編】
2022/06/10
クボタが有人監視下での無人自動運転作業(耕うん、代かき)が可能な「アグリロボトラクタ」を業界に先駆けてモニター販売したのが2017年のこと。あれから5年、業界をあげて、自動運転機能を搭載した商品が各社から市販されている。
農業機械の自動化レベル
2022年現在、農水省が設置した「スマート農業の実現に向けた研究会」が設定した農業機械の安全性確保の自動化レベル(概要)で見ると、トラクタの自動化はレベル2=使用者の監視下での無人状態での自律走行まで実現。搭載形態も多様化し、機体としての販売だけでなく、手持ちの農機に後から組み込むことができる後付けシステムも販売されている。
LEVEL1
使用者が搭乗した状態での自動化(市販済)
・使用者は農機に搭乗
・直進走行部分などハンドル操作の一部等を自動化
・自動化されていない部分の操作は、 全て使用者が実施
EVEL2
使用者の監視下での無人状態での自律走行(市販済)
・ロボット農機は、無人で自律走行
(ハンドル操作、停止・発進、作業機制御を自動化)
・使用者はロボット農機を常時監視し、危険の判断、非常時の操作を実施
・基本的に、居住地域から離れた農地など、第三者の侵入可能性が著しく低い環境等で使用
LEVEL3
無人状態での完全自律走行(研究段階)
・ロボット農機は、無人状態で、常時全ての操作を実施
・基本的にロボット農機が周囲を監視して、非常時の停止操作を実施(使用者はモニター等で遠隔監視)
クボタ
飛躍的な作業効率の向上へ
日本でロボットトラクターの先陣を切ったのはクボタ。同社の自動運転機能付きトラクターが『MR1000A(有人仕様/無人仕様)』だ。有人仕様は自動化レベル1、無人仕様は自動化レベル2に該当する。圃場外周を一周して圃場マップを作成すると、圃場の形状に合わせて最も効率的な作業ルートを自動で作成。作業開始位置まで自動誘導して、作成したルートに従って自動運転でき(枕地3工程は手動運転が必要)、耕うん・代かき・肥料散布・粗耕起・一発耕起、播種と多様な作業を自動運転にて行うことができる。
また『MR1000A』と保有機の2台を使えば一人で2台同時に作業できるので、飛躍的な作業効率の向上が見込める。基地局は、ニーズや環境、に合わせて、1.クボタ製基地局(別売):GPS補正情報を移動局(トラクター)に送信する可搬式の基地局、2.固定基地局:自治体等が設置した基地局の補正データをデジタル簡易無線機やインターネット回線を利用して移動局(トラクター)に送信するシステム、3.VRS方式:国土地理院が管理する電子基準点から得たデータを元にサービスプロバイダがインターネット回線を通じてデータ配信するサービス、の3つから選択できる。
DATA
MR1000A-OP(有人使用)
エンジンパワー:100馬力
価格(税込):1,237万1,700円(税込)~1,294万4,800円(税込)
MR1000A-A(無人使用)
エンジンパワー:100馬力
価格(税込):1,468万1,700円(税込)~1,525万4,800円(税込)
ヤンマー
誤差数センチの精度での作業を実現
ヤンマーでは有人搭乗型を『オートトラクター』(自動レベル1)、無人自立走行型を『ロボットトラクター』(自動レベル2)と呼んでいる。ベースとされているのは『YT』系トラクターだ。『オートトラクター』と『ロボットトラクター』を含めたヤンマーの「SMARTPILOT」(自動運転農機の総称)が、衛星による位置情報を取得し、誤差数センチの精度での作業を実現している自動運動農機シリーズだ。
『ロボットトラクター』では近距離監視下で専用タブレット端末を使用して作業をコントロールすることで、あぜ際を除く圃場の約90%※を自動で作業するなど、大幅な省力化を実現する。また、登録した圃場外形を基準に、あぜ際のまわり耕を自動で作業する枕地直進モード(有人)を併用すればさらなる効率化・省力化に貢献する。ベースモデルの『YT』→『ロボットトラクター』、『オートトラクター』→『ロボットトラクター』といったアップグレードも工場オプションとして後付けで対応可能。『YT』系を所有していれば、買い足すことなくスマート化できる。
DATA
YT488A、YT498A、YT4104A、YT5113A
エンジンパワー:88~113馬力
価格:1,216万500円(税込)~1,759 万4,500 円(税込)
※圃場の条件により異なる
井関農機
高精度かつ安心・安全な作業を!
自動化レベル2 に該当する有人監視型が『TJV755-R3』『TJV985-R3』、自動化レベル1に該当する有人搭乗型が『TJV755-M1』『TJV985-M1』である。前者は使用者訓練を受けた監視者がトラクタを直接目視できる環境下において無人自動作業を行うことができ、後者はトラクタに搭乗し自動作業が可能なロボットトラクタである。2つの仕様とも、効率重視の「1点旋回」と圃場の荒れを抑える「切り返し旋回」の2種類から旋回パターンを選択できる。
また、GNSSとRTK補正情報で高度な位置補正を取得し、高精度な自動運転を実現している。その他、農水省が定める「ロボット農機の自動走行に関する安全性確保ガイドライン」に準拠した安全装置を搭載し安心・安全な作業ができる。自動作業により、オペレーターの疲労軽減や不慣れなオペレーターの習熟にかける時間コスト等の課題解決が期待できるロボットトラクタである。
DATA
TJV755R3・TJV985R3・TJV755M1・TJV985M1
エンジンパワー:75~98馬力
価格:1,045万円(税込)~1,590万9,300円(税込)
取材・文/川島 礼二郎
AGRI JOURNAL vol.23(2022年春号)より転載